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私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


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「ちーちゃん、今日はいつにもまして、早く処理が終わりそうね」


 一心不乱に作業をしていたちーちゃんが、最後に強く一回、エンターキーを叩いた。


「だって、腹が立つんだもん!

 光太くん、最悪じゃん」


「ちーちゃん、怒ってくれるの?

 ありがとう……」


「当たり前でしょ!?

 本当に最低」


 高城リーダーとの夢みたいな一日を過ごした週末が終わると、現実が待っていた。


 仕事は正直、まだ気乗りがしないけれど、彼に会えるのは、ちょっと嬉しい。


 そして、ちーちゃんにも、光太とのことをようやく報告できた。


「ねえ、梓。

 元気そうに見えるけど、本当は落ち込んでるんでしょ?」


「えっ?

 うん、まあ……ことがことだからね」


 曖昧に笑いながら答えてみたけれど、実はもう、それほど落ち込んでいない。


 まだ、ふとした瞬間に胸が痛むことはあるけど、それよりもリーダーのことを考えてしまう。


 ちらっとデスクを見ると、彼は普段と変わらず仕事に没頭している。


 むしろ、いつも以上に気合いが入っているようにも見えた。


「梓、無理しちゃダメよ?

 つらかったら、つらいって言ってね」


「うん……ありがとね、ちーちゃん」


 ちーちゃんの気持ちは嬉しいけど、私は、リーダーの何事もなかったかのような態度が気になってしまっていた。


 なんだか、ちょっぴり寂しい。


 今日は、朝に『おはようございます』と挨拶をしただけだし。


 リーダーにとっては、週末のことは、なんてことない出来事だったってことなんだろうな……。


 それにしても、なんでこんなに彼のことが気になっているんだろう。


 なんて考えながら仕事をしていたら、やっぱり今日もちーちゃんみたいに早くは、作業を終えられなかった。


 でも、その理由は考え事をしていたことだけじゃない。


 もうあんなミスはしないようにと、慎重にやっているから。


 って、ただの言い訳かな。


「よし!

 終わり!

 あれ?

 梓、まだ帰らないの?」


「うん。

 もうちょっと」


 定時をとっくに過ぎた二十一時頃。


 席を立つちーちゃんに声をかけられて、私は口ごもりながら答える。


「珍しいね。

 じゃあ、私は先に帰るから。

 無理しないでよ?」


「大丈夫だって、ちーちゃん。

 お疲れさま」


 心配かけてごめんね。


 私、ただリーダーと、ふたりきりになりたかったんだ。


 そんなことを考えていたら、リーダーが声をかけてきた。


「あんまり無理するなよ?

 きりのいいところで帰れよ」


「はぁい」


 ちーちゃんと同じことを言っている。


 思わず心の中で笑っちゃった。


「……あの、リーダーも、まだお仕事されるんですか?」


「ああ、もうちょっとな」


 そう言いながら、彼は書類とパソコンを見比べている。


 私に手伝えることがあればいいのに。


 毎日、こんな時間まで仕事しているなんて。


 お腹、空かないのかな?


 あんまり遅くなると、身体に悪いんじゃ……。


 そこまで考えて、私はあることを思いついた。


「じゃあ、リーダー。

 お先に失礼します」


「ああ、気をつけて帰れよ。

 お疲れさま」


「お疲れさまでーす」


 退社するふりをして、私はまっしぐらにコンビニへ向かった。


 リーダーの仕事は手伝えないけれど、差し入れくらいならできる。


 驚くかもしれないけど、一昨日のお礼だと言えば、受け取ってくれるだろう。


 必死に走る自分に驚きながらも、心がどうしてもリーダーに向かっていた。


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