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私の彼は御曹司  作者: アルケミスト


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 支度を済ませた私たちは部屋を出て、駐車場に向かう。


 駐車場はマンションの地下にあり、ついていった私は、また固まってしまった。


「こ、これが、リーダーの車ですか?」


「そうだけど?

 いいよ、乗って」


キーレス操作で鍵を開けると、リーダーは私に言った。


「お……お邪魔します……」


 これは、かなりの高級車よね?


 ボンネットには、メーカーのマークが輝いていたし、黒塗りのこのセダンタイプは、たびたびテレビでも取り上げられている。


 たまに街中で走っているのを見たことはあったけど、乗ったことはない。


 恐る恐る助手席に乗り込むと、乗り心地が普通の車と明らかに違う。


 広くて座席はフカフカだし、何よりエンジンの音が気にならなかった。


「どこか行きたいところは?」


「えっと、そうですね……」


 光太とのデートは、あてもなくドライブしたり、ファミレスでお茶したり。


 そんなんだったからなぁ。


 リーダーは、ちょっと違うんじゃないかと思うんだけど。


「もし、何もないなら、ちょっとつき合ってくれないか?」


「あっ、はい!」


 そのほうが助かる。


 私には、リーダーがどういう場所が好きなのか、考えつかないから。


 ハンドルを切りながら、彼が話を続ける。


「ちょっとな、服を見てほしいんだ」


「服、ですか?

 はい!

 私でよければ」


 意外な言葉に一瞬驚いたけど、私は元気よく返事をした。


 服を見てほしいなんて、普通の男の人だわ。


 迷惑をかけちゃったし、私でも彼の役に立てることがあるなら、してあげたい。


「私に任せてください!」


 はりきって言った私に、リーダーは優しく微笑んだ。


 その顔に、私の胸はまた、キュンとしてしまった。




「いらっしゃいませ」


 こちらがドアを開ける前に、スタイルのいい男の人が素早く開けてくれた。


 私は完全に、伸ばしかけた手を引っ込めるタイミングを失っていた。


 そんな私を見て、リーダーはまた、声を殺して笑っている。


 仕方ないじゃない!


 ドアマンのいるお店になんて初めて入るんだから!


 連れてきてもらったお店は、高級ブランド店が並ぶ一帯の路面店のひとつで、ここも有名なメンズの海外ブランドだ。


 ちょうど数日前に、世界的に人気のあるサッカー選手がモデルを務めたことで、話題になっていた。


「悪いな。

 見立ててくれるか?」


「は、はい。

 お力になれればいいんですが……」


 ハイセンスな服の数々に圧倒される。


 上質で仕立てがよさそうなスーツが並んだ店内は、ちょっと見渡しても、普通のお店とは違う感じがして、私はすっかり萎縮してしまっていた。


「今度ちょっとしたパーティーがあって、新しいスーツが欲しいんだ」


「パーティー……」


「そう。

 会社の行事でな」


「ああ、そうなんですか」


『会社の行事』と聞いて、私はちょっとホッとする。


 でも、きっと役職のある人だけが行くんだろうな。


 パーティーの話なんて、聞いたことがない。


 それにしても、どれもケタ違いな値段の服ばっかりだ。


 店内をきょろきょろ見回していると、品のある綺麗な店員さんが、何着かのスーツを持ってやってきた。


「こういうのはいかがですか?

 修弥さん好みではないかと思うんですが」


「ああ、そうだな。

 これはいいかもしれない」


 楽しそうなリーダーの様子に、私は呆気にとられた。


 こんなに穏やかに笑うなんて、店員さんと打ち解けている証拠だ。


 好みも把握されているみたいだし彼はここの常連ってこと?


「うーん。

 これもいいけど、こっちもなあ。

 なあ、香川、どっちがいいと思う?」


「えっ!?」


 ぼうっとしていた私に、リーダーはおかしそうに笑いながら言う。


「お前、今、別のことを考えてただろ?」


「す、すみません……」


 うっかり、店員さんとのやりとりに気持ちがいっていた。


 だって、美しい女性の店員さんが、『修弥さん』なんて呼ぶから。


 つい、深い関係なのかなあとか思っちゃうじゃない。


 気を取り直して、私は彼が手にしているスーツを見比べた。


「あのリーダーには、濃い色のほうが似合うと思います」


「本当か?」


 あっ、疑っているな。


 その目は、完全に私を信用していない。


「本当ですよ。

 そのほうが、身体が締まって見えますから」


「そうか。

 そう言われればそうだな。

 じゃあ、これにしよう」


 苦し紛れに行った私の言葉にリーダーは納得して、濃い色のスーツを手にした。


「じゃあ、試着してくる」


「どうぞ、ごゆっくり」


 それじゃ、私は他の服を見させてもらおうかな……。


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