憂鬱
三章:《十三の紫》と旧ミスカ大学地下図書館
曇天の空。視界に広がる瓦礫。いまだに、何もかもが途方もなくて、考えれば考えるほど頭は軋むように痛みを訴えた。地団駄を踏んで叫びたかった。あああああ! って。狂ったように叫びたかった。
私には――ソラには、白の十三番なんて呼び名があった。同じ肉体がいくつも円筒のなかで複製されていて、だから間違いなく、角がなくともリーミニやミオフィルと同じ缶人の類なんだろう。
十六歳だと思っていたことも、パパに関する記憶も作り物。命をかけて守ろうとしてくれたけど、本当の理由はもはや分からない。
愛してくれていたのか。それとも――。
《十三の紫》の、得体の知れない力の所為で、私が死んだら途方もないことが起こるからか。……パパはどこまで知っていたんだろう。考えてもわかるはずのないことばかりぐるぐると滞る。
縋るようにレイルのことを見上げてしまった。のっぺりとした黒い顔。表情もないはずなのに、私はこの人に共感していたかもしれない。
――許せない。殺してやるって、想いは本物だと思っていたのに。気づけば助けて、助けられて。
……ムカつく。胸のなかのモヤモヤが熱っぽく渦巻くんだ。レイルはどうせ分かってくれない。……リーダーも多分ダメ。スラムに戻ったら、リーミニと話がしたい。
だって、考えれば考えるほど、何かを想えば想うほど。感情が先走るんだ。紫紺の力が全身を巡って、バチバチして……訳が分かんないから。
一人だと、まだどうしたらいいか分からなくて、宥めるみたいに自分の胸を撫でるしかできない。
――ソラって、名前。呼んでくれた。
この記憶は本物なんだ。私だけの……。
耳が熱くなりそうだった。
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