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17 (番外編)魔王の家系

「我が孫シオン。よいか、我が一族は代々異世界召喚される家系でり、さかのぼれば10代前の先祖である……」


 皆さんこんにちは、シオンです。

 僕はかつて"異世界留学"して日本の小学校に通っていましたが、その時厄介になっていたのは、僕の父さんの父さん。つまりお爺ちゃん家です。


 うちの家系は、先祖代々異世界召喚されるのがデフォルト。

 父さんは地球から異世界召喚され、結果魔王になって世界征服までしてしまいました。

 魔王をしているけど、実は種族は人間だ。

 もっとも魔王にまで上り詰めた人なので、そんな人を人間と同列においていいかは謎だけど。


 そして、お爺ちゃんに関しては、

「ワシも今までに7つの世界に召喚されてきたが、いずれの世界でも勇者として戦い、世界を救ってきた。良いか、無力であることは罪である。無力であれば、それは死につながる。ゆえに、お前も将来異世界に召喚された時、無事に生き抜くため、常日頃から鍛錬を怠ることなく……」

 お年寄りの話は長いです。

 退屈です、眠くなってしまいます。


「喝っ!シオンよ、ワシはまだ話の途中じゃぞ!」

「うんうん、ちゃんと聞いてるよ、爺ちゃん。今までに7つの世界を救って、それでお爺ちゃんが"七聖剣の勇者"って称号まで持ってるんでしょう。凄いよねぇー、7つも聖剣持ってるなんてー」

「ふふっ、まあ我が一族に代々伝わりし"一刀掃滅流(いっとうそうめつりゅう)"をもってすれば、造作のないことであるがな」

「ワー、凄いなー」


 ふうっ、おじいちゃんは単純な脳筋勇者なので、適当に煽てておけば、上機嫌になってくれる。

 そして"ワシの若い頃自慢"が大好きなので、僕はお爺ちゃんの昔話に関して、もうかれこれ何百回も聞かされていた。


 お爺ちゃんは日本では道場主として剣術を教えているのだけど、扱き方が実戦的すぎるので、過去に警察から注意を受け、街の教育委員会に呼び出され、市役所から何度か苦情が来たことがあるほどの、脳筋バカ。


 当人は異世界で実戦を経験してるからいいんだろうけど、平和な日本でそんなことしてるから、道場にまともな弟子がいない。


 いつも閑古鳥が鳴いてる道場。

 異世界で手に入れた財宝がなければ、こんな道場とっくに潰れて、今頃おじいちゃんは道端で乞食になってるよ。


 そしてお爺ちゃんだけど、

「どれほど強力な敵を前にしても、不退転の決意で突き進むのじゃ。気合こそが戦いの勝敗を分かつ、唯一にして絶対の物。戦いにおいて、決して引くことは許されぬ!」

「そうかなー?数が少なければ逃げた方がいいと思うけど。相手より数を多くして、包囲して攻め潰した方が……」

「バッカモーン!ワシはどれほどの劣勢であっても、怯むことなく戦い、勝ち、そして生き残ってきたのじゃ!」

「……」



 味方の数が少なく、劣勢でもわざわざ戦い、それで味方の犠牲を増やしまくる。だけど、おじいちゃんがチートなので、最終的に勝つことが出来る。

 お爺ちゃんにとっては問題ないだろうけど、おじいちゃんの戦い方は、無駄に弱い味方を殺してしまう戦い方だった。

 戦争とは所詮数。

 1対1で戦うより、2対1で戦う方が、味方の負担と犠牲が減る。それが3対1になれば、さらに状況がよくなるだろう。

 相手よりも数を多くそろえれば、それだけ犠牲を少なくして勝つことが出来る。


 天才的な敵将がいれば例外だけど、そんな敵は滅多にいない。

 父さんの場合だと、「最強の戦術は相手を囲んで棒で叩く」だそうだ。


 でも、おじいちゃんは脳筋勇者様だからね。

 戦略や戦術なんて無視で、ただ突進するだけのイノシシ武者だ。



「お爺ちゃんは、それでよかったかもしれないけど、ひいおじいちゃんの時は、ダメだったんでしょう」

「ムッ……」

 僕がひいおじいちゃんの事を口に出したら、それまで勢い良くしていたお爺ちゃんが口ごもった。


「ひいおじいちゃんの事は父さんから聞いたよ。陰陽師に異世界召喚されて、この"日本"にきたけれど、ちょうど第二次大戦の真っ最中。赤紙もらって、いきなり戦場に送り込まれたって。

 "一刀掃滅(いっとうそうめつ)流"は確かに強力で、銃弾でも砲弾でも切ることが出来るけど、さすがに迫撃砲を切れば爆発するし、飛行機相手に剣で戦えるわけもないし……。

 ひいおじいちゃんは頑張ったそうだけど、結局最後はアメリカ軍の物量に負けて、右腕を失うことになったんだよね」


 一刀掃滅流。

 それは異世界召喚されるのがデフォである僕の家系が、異世界でもモンスター相手に勝てるよう、先祖代々継承してきた一撃必殺の剣術だ。

 ただの剣で鉄を切り裂き、魔物を滅ぼし、戦車さえ両断する。

 モンスターどころか、現代兵器とも渡り合える剣術だ。


 強いんだけど、さすがに第二次大戦では活躍する余地が少なかった。

 ひいおじいちゃんは、銃弾どころか、アメリカ軍の機関砲の集中砲火を浴びても、剣でそれらを切り捨てるほどだった。

 でも、剣ではやっはり限界がある。

 相手は遠くから攻撃してくるけど、こっちは接近しないと攻撃できないからね。


 そしてひいおじいちゃんは、剣術が強力無比でも、銃を始めとした遠距離武器は、命中率ゼロの酷さだったそうだ。


「お爺ちゃん、剣にばかりに頼るのは止めようよ」

「喝っ!ワシだって、親父……シオンから見ればひい爺さんだな。あんな風にならないよう、回復魔法は使えるようになったぞい!」

「でも、僕の回復魔法より全然弱いじゃん」

「ウグッ」


 まあ、おじいちゃんの回復魔法が弱いんじゃなくて、大天使である母さんの血を引いてる僕の回復魔法が、強力すぎるだけなんだけどね。

 いくら勇者でも、死者を蘇らせる蘇生魔法を、広範囲に展開して掛けるなんてことはさすがにできない。


「ええい、口答えはそこまでじゃ、今日も修行じゃ!せっかくじゃから、来月からは真冬の極寒カナダ奥地で、サバイバル生活じゃ!グリズリー相手に戦えるぞい!」

「別にいいけど。魔界にいる友達に比べたら、グリズリーなんてただの可愛い子犬だし。でも絶滅危惧種だから、グリズリー相手に戦うのってダメだよ」

「ええい、ああ言えばこう言う!シオンよ、お前は"あいつ"にとことん似てしもうたな!」


 はあっ、おじいちゃんの相手って面倒くさい。

 そしておじいちゃんが言う"あいつ"とは、僕の父さんのことだ。


 7つの世界を救った勇者のお爺ちゃんに対して、その息子はあろうことか異世界召喚された結果、魔王になって世界征服をしてしまったからね。

 世界を救った勇者と、世界を征服した魔王。

 こんなのが親子だから、2人の仲は険悪だった。




 そんな2人が僕の目の前で、顔を突き合わせたことがあるんだけど、

「世界を救ったなんて言っても、親父の救ったは、魔王を倒しただけだろうが。魔王がいなくなれは、ハッピーエンド?そんな馬鹿なわけがねえだろう。どうせ魔族がいなくなれば、次は人間と獣人やエルフ、ドワーフで争うだけ。それとも人間同士での、骨肉の争いかねぇ?地球を見ればわかるだろう。同じ人間同士で、何千年も戦争を繰り替えしてるんだ。異世界で魔王を倒したからって、それで救われるものがあるわけねえよ!」

「馬鹿者が!それで魔王になって世界を征服するなど、お前の方が言語道断じゃ!」

「俺は魔王を倒した後、中途半端な世界を放置して地球に帰ってくる無責任親父とは違うんだよ。確かに俺は世界征服をしたが、それは世界全体を安定させるためだ。少なくとも世界が統一されちまえば、他国と争う戦争をなくせるからな」

「グヌヌヌッ、減らず口を言いおって……」

「ああ、そうさ。世界征服したからって、それですべてが解決したわけじゃねえ。俺の国では、種族間でのしこりが残っているし、内乱だって未だに起きている。だがな、俺は自分が召喚された世界の事を、中途半端に放置して見捨てる親父とは違うんだよ!」


 とまあ、2人はこんな感じだった。


 脳筋のお爺ちゃんに対して、父さんの言っていることの方が正しい。

 でも父さんが言っているのは理想であり、その理想を実現させようと努力しているけど、うまくいっていないことの方が多かった。




 でも、ある時、父さんはこんな話もしてくれた。


「俺は異世界召喚された後、魔族の女の子に出会った。あの子が無事平穏に生きていけるなら、俺は魔王になって、世界を一つくらい平和にしてみせると誓ったんだ。あの胸だけは、絶対に守って見せるって」


 父さんが魔王になって、世界征服をし、世界平和を目指す。

 その理想の根本は、ただの下心が原因だった。

 理想は高いんだけど、原因は物凄くどうでもいい。


「でも、その魔族の女の子ってどうなったの?僕が見たことないってことは、もしかして死んじゃったんじゃ……」

「いや、俺が出会った時には、既に将来を誓った婚約者がいて、結局結婚しちまったんだ。あの時婚約者野郎をぶっ飛ばして、力づくでも俺の妻になれって言えばよかった」


 単に自分好みの胸を持った女の子のために、魔王になって世界征服をしただけ。

 どうしてそんな理由で、世界征服という発想に飛躍できるんだろう?


 僕も胸フェチなのは認めるけど、父さんほどぶっ飛んだ思考はさすがにできない。

 胸のために世界が征服されたとか、いろんな意味でひどい話だよ。

 父さんでなく、世界全体にとって、ひどすぎる話だ。


 それに、

「息子の僕の前で、それを言うかなー」

「別にいいだろう。それにお前の母さんは、俺の妻にふさわしく、世界最高の形をした胸をしてる」

「結局、父さんって胸のことしか考えてないよね」

「当たり前だ!」


 世界征服までして、熱い理想を語っても、僕の父さんの根っこは、ただの胸フェチのスケベだった。




 なお、こんな父さんとお爺ちゃんだけど、険悪でも共通点はちゃんとあった。

「シオン、お前も女だったらよかったのにな。はあっ、母さんに似て美人だから、女だったら、絶対に超絶クラスの胸をしてただろうに」

 とは、父さん。


「シオンよ、お前さんが女であればどれほどよかったことか。はあっ、これ程の美人なのに、なんで男なんじゃ。女の孫が欲しかった……」

 これはお爺ちゃん。




 なんだかんだ言って、あの2人はただのスケベ親子だ。


「シオン様もですわ」

「シオンもだよねぇー」

 ――コクコクッ


 あれ?

 なぜかいつもの3人幼女たちに、僕までスケベ扱いされてしまった。

 僕、そこまでスケベじゃないって。


 カリンお姉さんの胸は、完璧(パーフェクト)だと思うけど。


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