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禍福はあざなえる縄とよく似ている15 迷子

 その(フネ)の名は『スイートメイシャン』と言った。


 竜族の公主、アオ・メイシャンの半身でもある巨大戦艦、その全長は一六〇〇メートルにも及び小さなコロニーにも匹敵する。

 その形状はまるで剣の様に鋭く胴の中程にはガレー船の櫂にも似た翼が六対、艦後部は四つの大きな張り出しが続いている。

 兵装は竜族の特徴である主砲ドラゴンブレス(メイシャンは『乙女ブレス』と称しているが)、体内の機関部(エンジン)の熱を無分別に放出する広範囲殲滅兵器。

 艦側面に並んだレンズから吐き出されるブラスターレーザー(メイシャン命名『ラブリーフラッシュ』)。

 そして最近になり取り付けられた120口径の金属を毎秒200発打ち出す機関砲(これもメイシャンは『キューティーバルカン』と名付けた)、弾種はタングステンの徹甲弾から形成炸薬弾、焼夷弾と種類も多い。

 たった三種類とも言えるがその三種が他国の艦隊をも退ける圧倒的火力を有している。


 だと言うのにこの戦艦に喜んだ鉄人は一通り艦の装備一式を確認するとおもむろにメイシャンを振り返り見下ろしその言葉を口にした。


 「娘、力が欲しいか!?」


 たまたまその場面に遭遇したティラーニャは不意に昔読んだ英雄鐔、そこ出てきた魔王の存在を思い出した。

 そう、魔王は常に甘い言葉を囁く。


 「貴様に()を与えよう。全てを灰塵と化し圧倒し蹂躙する全能の力を!」


 魔王を前にした無力……かどうかは定かではないが竜族の少女は雷に撃たれたかの様にびくりとその身体を震わせた。


 「ち、力!? それは……キューティバルカ……い、いえ、機関銃の様な破壊力を持った!?」


 恐る恐る訊ねる小柄な彼女を前に魔王は鼻で嘲笑(わら)う。


 「機関銃? ふん、娘、貴様はよもやあの豆鉄砲ごときで満足しているのか!? だとしたらとんだ見込み違いだったようだな。

 精々豆鉄砲で蚊トンボを撃ち落として悦に浸っているがいい。俺の提案を受け入れればこの戦艦も『超弩級火山列島ミラクル要塞戦艦』と呼ばれる可能性もあったものを……」


 「ちょ、『超弩級火山列島ミラクルエクセレント要塞戦艦』!?」


 「そう、『轟弩級スーパーミラクル火山列島24時まんでえちゃきなエクセレント要塞戦艦』だ!!」


 「そ、それはいったいどの様な!? この無知蒙昧なヒメに教えてくださいまし」


 「ふむ、そうさな、この戦艦には今現在足りないのは火力、火力なのだよ。俺手に掛かれば貴様は無敵とも言える火力をその手に掴み万物不当の名を欲しいままに出来るだろう」

 

四六サンチ三連装砲、ショックカノン、曲射レーザー、タコ酎ミサイル、機動爆雷、ドローンビットオールレンジ兵器、メーザー兵器、ドリル、チェーンソウ、巨大ハリセンetc.怪しげな言葉がふたりの会話から洩れ聴こえてくる。

 いや、むしろ怪しげでない言葉などひと言とて聞こえてこなかった。


 ティラーニャは盛り上がるふたりに眉をしかめ「あんまり無茶苦茶しないでくださいよっ、鉄人さんはこと機械関係になると突飛なものばかり考え出すんですから、デボラお姉様からもよくよく言われていますし、ミューツお姉様が戻ってきたら叱ってもらいますからねっ!」と釘を刺すも。


 「これだから浪漫を解さない奴は…… いいか、浪漫だっ! 浪漫の前には全てが許されるっ!!」


 「左様でございますわっ、浪漫ですわっ! かのキューティーバルカンのカートリッジには浪漫が詰まっていましたっ! ヒメはテツヒトお兄様の兵器を前に目から鱗が落ちる思いでしたっ、浪漫! 兵器には浪漫こそが必要なのですっ! さぁ、テツヒトお兄様っ浪漫をっ、もっと浪漫をヒメにくださいましなっ!!」


 「いいぞっ! 素晴らしいっ!! 竜娘、君には才能があるっ、浪漫を知る者のみが辿り着ける高みを目指し努力する才能だっ! 幸いここには材料となるがらくたが山のようにあるっ、さぁ、我々の情熱でこのガラクタたちを浪漫兵器へと生き返らせてやろうっ!!」


 「はいですわっ! このアオ・メイシャン、テツヒトお兄様に何処までも着いて行きますわ、ぜひお供させてくだいましっ!!」


 「ハハハッ、浪漫の道は険しいぞっ! しかしその情熱を以てすれば決して辿り着けぬ場所ではない、さぁ、目指そうっ! 至高の浪漫兵器をその手に掴むのだっ!!」


 「がってんですわっ! お師匠様ッ!!」


 「……………………………………………………………………がんばってくださいね」


 興奮で普段の言動も忘れた機械工学の鬼才、それにつられ目を輝かせる竜族の少女。彼らは浪漫と言うあやふやな言葉を頼りに何処を目指しているのだろうか? ティラーニャはそれを理解が出来なかったし理解しようとも思わなかった。

 ひと言、激励らしき言葉を告げ彼女は格納庫を足早に立ち去った。

 かの地は最早ティラーニャの思考の及ぶ場所ではない。彼女にできるのは自らに火の粉が降り掛からぬよう逃げ出す事だけであった。




 「はぁ、テツヒトさんとメイシャン、相性がよすぎるのもいいことばかりじゃ無いわね」


 無論鉄人の思惑には無事ミューツを救い出す為にウィルミン本国へと向かうこの艦を強化し単艦でも敵艦隊相手に立ち向かえる様にするのが目的であるのは理解している。

 理解しているがどうにも趣味に走りすぎている感があり心配なのだ。


 狂気の満ちた格納庫からほうほうの呈で逃げ出したティラーニャは回廊を艦橋へと向かう。かつてこの艦の艦橋は廃物の住処でありメイシャンの寝食の場であった。

 多々良たちの奮闘の甲斐ありゴミの姿は消え清潔かつ機能的な本来の姿を取り戻したが、未だ他の部屋を開けるとガラクタが山積みであったりする。回廊の片隅にも時折ゴミが転がっていたりするのだ。

 ティラーニャはそのひとつを見咎め、眉間にシワをよせると屈み込み小さな菓子の空き袋を拾いポケットに突っ込んだ。


 膝を起こしさぁ改めて歩き出そうとしたところ、回廊の天井に据え付けられた照明がちかちかと瞬いた。


 「もう、立派な戦艦なのに本当に台無しね。営繕もまともに機能してないなんて……」


 思わず愚痴が口を突いて出てしまうが、そもそもあの(・・)メイシャンがたったひとりで今までこの艦を運用していたのだ。例え彼女が潔癖であったとしてもこの広い戦艦全てに目が届きようはなかったはずだ。

 そしてメイシャンはどうやら潔癖ではなくその真逆、ズボラな性格をしている。

 そんな彼女に艦の完璧な運営を任せてもしょうがない、ティラーニャはため息を吐き出しもと来た道を戻り出した。

 向かうは彼女も先程まで居た格納庫、あの場に再び顔を出すのは苦痛だが替えの照明と脚立の在処をメイシャンから聞き出さねばならない。

 

 「……っと、あれ?」


 回廊の十字路まで出たティラーニャだが、立ち止まって首を傾げた。

 来た道が判らないのだ。


 回廊は目印になるものはおろか案内図もない、同じような扉が幾つも連なる壁にティラーニャは方角を失ったのだ。


 試しに十字路を右に折れ先に進むが見たような見たことの無いような壁ばかりが続きいまいち自信が持てない。


 「参ったわね、まさか迷子だなんて…… この年齢(トシ)で冗談でしょう!?」


 ため息をひとつ、道に迷ったとて所詮は密閉された艦内の事、歩き続ければすぐに知っている場所に出られようとティラーニャの心に焦りは無かった。

 

 やはり当初の予定に従い艦橋へと戻り多々良たちに合流し照明の件は後程メイシャンに伝えようと再び(きびす)を返すもそれはさらにティラーニャを混乱に陥れる事態となった。


 「ちょ、えっ!? 嘘でしょう!? 私何処から来たんだっけ!?」


 ティラーニャが目印としていた明滅する照明が無いのだ。

 明滅は一時的なものであったのか、あるいはティラーニャ自身が出鱈目に歩いたからなのかは判らないが結果彼女は広い艦内を宛てどもなくさ迷う事となった。


 幾つかのドアを無作為に開け順路を示すヒントを探すもその様なものは一切見当たらない。ガラクタの山ばかりが見つかりその中から飛び出してきたネズミにも似た獣に悲鳴をあげるだけの徒労に終始した。


 探索を始めかれこれ数時間、ティラーニャはここに来て漸く焦りを覚えた。


 迷子とて戦艦の中とたかを括っていたが小型、中型の艦に慣れた彼女の予想を上回りこの艦は広い、広すぎるのだ。

 おまけに案内図も無く目印になるものもゴミやガラクタばかりで宛になりはしない。


 「もうっ、なんで戦艦でこんな目に合わなきゃいけないのよぅ~~ーー」


 最早そこには士官学校首席の威厳などはなかった。何処かも判らないガラクタの山が積まれた部屋の端に、途方に暮れ心細さに膝を抱え蹲るか弱い少女が居るだけだ。

 既に十字路に戻る道すらも覚えていない。目印のない回廊に振り回され、ガラクタの山を掻き分けた疲労が腰を降ろすと一気に押し寄せる。さらには空腹までもが彼女を苛み気丈なティラーニャをして弱音を吐かせるまでに至った。


 もうここでこのまま誰にも発見されず朽ち果てるのかな? 


 そんなネガティブな考えまで脳裏をよぎる。


 「きゃっ!? なになにっ!? 今度は何なのよっ!??」


 間の悪いことに室内の照明が明滅、そのままふつりと消えた。

 幸い非常灯の灯りがぼんやりと灯っているが薄暗い部屋はいやがおうにも不安を高める。部屋の端に山積みにされたガラクタの陰影がひとの生首にも見えそれは先日目にしたヴァンプの男の最期を起想させ彼女に恐怖を植え付ける。

 さらに追い討ちを掛けるように絶妙なバランスで重ねられていたガラクタの山ががらがらと崩れそこに潜んでいたであろう小さなネズミに似た小動物がキィキィと耳障りな鳴き声でティラーニャのすぐ側を駆け抜けた。


 「ッッきゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~ーーーーーーーーーーーーーーーーッッ!!?」


 オオカミを祖とするライカンスロープであってもその精神はおよそ獣のそれではなくひとに近しい、ティラーニャは悲鳴をあげ僅かに開いていた扉を無理矢理に開け放つと飛び出した。

 目的地などはない、室内同様照明の落ちた薄暗い回廊を非常灯の薄明かりだけを頼りに何処までもひた走る。


 「あッ!?」


 夜目の効くライカンスロープとてまともに正面を見ていなければ障害物は避けられない。

 折り悪く床に転がっていた飲料水の空きボトルを踏み転倒してしまった。

 勢いのついた身体はそのまま投げ出され床を二転三転と転がる。


 「痛ったぁ……」


 どうやら足首を捻ってしまったようだ、彼女は痛む足首を抱え床に転がった。


 「もうやだぁ、おうち帰りたいぃ~~ーー、誰かたすけてよぅ…………タタラァ、助けにきてよぅ……」


 疲労困憊の身体に空腹、さらには足首の痛みでついにティラーニャはその場でさめざめと泣き出した。

 

 既にティラーニャの精神は限界であった。

 日頃ガルガンティスを駆りスナークを相手に一歩も退かぬ強靭さを見せる彼女とて普段はごく普通の十八の少女、極限状態に置かれればその本性が顔を出す。

 元来ティラーニャは臆病な少女であった。普段の毅然とした立ち振舞いも臆病さを隠す仮面でしかない。

 自らの心の弱さを隠すが為に他人にも自らにも厳しい生真面目さで欺瞞し鎧っているのだ。

 普段多々良に素直になれずつっけどんな物言いをしてしまうのもその鎧が想い人に対して発動しているからであろう。

 

 ズル


 泣きじゃくるティラーニャは床を擦る重たげな音を聴き嗚咽を止めた。


 ズル


 静まった薄暗い回廊にその音はやけに響く。

 いや、ティラーニャが耳を澄ませ音に傾聴しているからかも知れない。


 ズル ズル


 音は確実に大きくなってくる。こちらに近付いている証拠だ。


 ズル ズル ズル


 「次は何よぅ、もう私のSAN値はもう有頂天よ!? この恐怖は暫く留まる事を知らないのに……勘弁してようぅぅぅ~~ーーーッッ」

 

 恐怖故かティラーニャは少々おかしい事をいい始める。それだけ彼女は追い詰められていると言うことだろう。


 ズル ズル ズル ズル


 逃げようにも腰が抜け脚を立てる事すらも叶わないティラーニャは青ざめた顔で震えその音の主を迎える事しか出来ない。


 ズル ズル ズル ズル ズル ズル


 音はいよいよ近くティラーニャの座る位置から数メートル先の十字路の影まで迫っている。

 どくどくと五月蝿く脈打つ心臓を押さえ息を殺し気配を悟られぬよう努める確実に音の主はティラーニャの居場所を察し迫る。


 ペタッ


 十字路の壁の角に張り付いたそれは手であった。。


 それは枯れ木の様に細く黒々と闇色の小さな掌。


 「ヒィッ! イヤああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 「ぴゃっ!?」


 ティラーニャの叫び声が回廊いっぱいに響き渡った。

 恐慌状態に陥った彼女は喉も裂けよとばかりに悲鳴を挙げ続ける。

 

 「きゃああぁぁぁ~~ーーーーーーーーーーーーーーーッッ!! ひゃぁぁっ! いやぁぁぁ~~ーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!」


 かれこれ十分も叫び声喉も嗄れ果てた頃、ようやく相手が何もしてこないのを不審に思い瞑っていた目を開くとそこには耳を塞ぎ立ち尽くす少女の姿。


 「あっ!? 貴女……」


 非常灯の弱い灯りに照らされるその相手はティラーニャもよく知る人物。


 「サ、サクラッ!?」


 「だいじょうぶ? のど、すごくがらがら」


 ティラーニャにかがみ込むその表情には心から相手を労る様子が見てとれた。


 「んん……ゴホッ、ご、ごめんなさいっ、貴女だとは気付かなくて…… 大丈夫!? うるさかったわね……本当にごめんなさいね?」


 サクラは首を横に振る、気にするなといった意思表示なのだろう。

 彼女と暫く生活を共にし知ったのはサクラが環状銀河標準語が苦手らしいということだ。

 決して頭の回転は悪くはない、いや、むしろ聡明な彼女だが長く他者と会話をしていなかったせいか未だ言葉に不自由しているのだ。


 「それで貴女はどうしてこんな場所に? ここは普段行き来する区画から大分離れた所だと思うのだけど?」


 尤も私もここが何処だか詳しく知らないんだけどね。と苦笑するティラーニャをサクラはじっと見上げる。


 「ティラーニャ、ごはんの時間、なっても、戻ってこなかった。だから、タタラ、心配して、みんなで探そうって」


 「そうなの、心配させてしまっていたのね」


 「ティラーニャ、どうして、こんなところに、居た? ここ、ティラーニャ、言った通り、居住区から、遠い場所、こんなところ、用事、あった?」


 「うっ、それは……」


 疑問を投げ掛けるサクラの瞳は純粋過ぎる。暫し自らの醜態を晒す恥ずかしさに答えを戸惑うもわざわざ自分を探しに来てくれた相手に誤魔化すのも不誠実とティラーニャは重たい口を開く。


 「じ、実は道に迷ってしまって……それで帰る道を探していたんだけれど、疲れて空いていた部屋で休んでいたら照明は消えるしガラクタの間から小さな動物が飛び出すしで逃げ回っていたの、もう怖くって怖くって震えてたら回廊の向こうからズルズルって音がして……」


 「その音が、サクラの、足音だった?」


 「そうだったみたいね、まさか貴女だとは思わなくって。昔から暗いのは苦手で、寝るときなんかは大丈夫なんだけれど、こう……なんて言えばいいのかしら? 子どもの頃にお母様に早く寝ないと夜は怖いオバケが出てくるなんて脅されてね、それからかな、暗いのっていまいち慣れないのよね。暗い陰からオバケが今にも出てくる様な気がして」 

 

 「フフッ」


 何事にも動じなさそうな毅然とした第一印象であった彼女の弱々しい素顔にサクラは自然と笑みを洩らした。それは決して嘲笑う様なものではなく親近感を覚える柔らかな笑みであり笑われたティラーニャも自然に顔が綻ぶ。


 「もっと、怖いひとと、思ってた。自己紹介、したとき、ティラーニャ、サクラたち、睨んでいたから」


 「うっ…… それは……」


 「サクラ、タタラに、くっついていたから? それで、ティラーニャ、サクラ、怖いカオで、みてた?」


 「そ、そうよ、貴女ずっとタタラにしがみついていたから、つい睨んでしまっていたわ」


 「ティラーニャ、タタラ、すき? サクラに、タタラ、盗られると思った?」


 サクラという少女は本当に自分の心に正直な少女だ。自らの気持ちを偽らず好意を全面に押し出し相手に伝えようとする。


 「……そうね、あんまりアイツにべったりだから嫉妬していたわ。私には貴女みたいに素直になれないから。羨ましかったんでしょうね」


 どうにもこの少女の前では自分の想いを隠すことがバカらしくなってくる。ティラーニャはため息をつき自らの秘した想いを語った。


 黙ってそれを聴いていたサクラは不意にティラーニャの膝から頭を起こすと彼女の手を握り。


 「話してくれて、ありがとう、サクラは、ティラーニャの、思っていたこと、聞けて、仲良くなれた気がする」


 「サクラ……」


 サクラの素直さはティラーニャにとって羨ましいものであった。これ程に自らの気持ちに正直になれればタタラとももっと仲良くなれるのかも知れない。

 だが身に付いた性格というものはなかなかに修正が効かないものだ。

 

 それからしばらくしてタタラとエレノア、山羊がティラーニャとサクラを見つけ五人は艦橋へと戻っていった。


 タタラの両隣を歩くティラーニャが辿々しくもタタラの手を握ると戸惑うタタラにティラーニャは告げる


 「ま、また道に迷ってみんなに迷惑かけてもなんだから、我慢してちょうだい」


 「タタラ、ティラーニャは、さっきまで迷子だった。さみしいおもい、してたから、ね?」


 少しだけ素直になったティラーニャ、タタラの向こう側からサクラが顔を出し可笑しそうに笑い余った片方の手を握った。


 「もう、サクラからかわないでちょうだい! ……でもまぁ今はそーゆーことにしといてもいいわっ」


 「な~~んかティラーニャとサクラ、急に仲良くなってるみたいにゃ、まぁいいことなんだけどにゃ」


 「ベェーー」


 並んで歩く三人の後ろを山羊の背に乗りあくびをしながらエレノアの呟きに山羊がひと鳴きして応えた。




 ティラーニャが無事艦橋へと辿り着き数時間後、女性陣が仲良く談笑している様を見たメイシャンは自分だけ兵器開発に夢中になり仲を深める期を逸した事に悔し涙を流すのであった。

 

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