表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/44

禍福はあざなえる縄とよく似ている9 晩餐

会話のみでどこまで出来るかに挑戦

 「まぁ、このニシンの包み焼き、ホックホクでなんて美味しいのでしょう! タタラ様、これはいったい……」


 「ん? ニシンパイだね。熱いから火傷しないように注意して食べてね」


 「かしこまりましたわ。ですがヒメも竜種のはしくれ、高温のブレスも口の中で精製出来るのです。どうぞご心配は無用にお願いしますわ」


 「あはは…… そうだったね、未だに信じられないよ」


 「メーシャン、これも、食べて? トマトのスープ。サクラ、これ、タタラのお料理で、いちばん、すき」


 「あら、サクラお姉様のお薦めですの? タタラ様のお作りになるお料理はどれも美味しゅうございますがその中でもサクラお姉様の一等とは、これは期待が嫌が応にも高まります。

 ズズッ…… ん、はぁ、これはほっとするお味です。少しの酸味とお野菜の甘味がスープに溶け出してなんともまぁ………」


 「ベエェ、ベエェ」


 「こちらはヤギ様のお薦め? まぁ、これは、ヤギ様はまた随分とがっつり派なのですのね、些か油脂を摂り過ぎな気もいたしますが……タタラ様、こちらは!?」


 「ああ、それはイワシのフライだね、確かに揚げ物だから油分は多いかも、けどイワシ料理では代表的な調理法だからぜひ一度食べて貰いたいな」


 「ええ、もちろんいただきますわ。この様な素晴らしいお食事を頂ける機会などそうはございません。このアオ・メイシャン、天帝様とタタラ様に感謝を捧げひと皿残さずたいらげてみせますとも。

 それでは失礼を……はむ、んむ、んむ、んむ…………んああ、サックリしてて中は熱くって噛むと魚の脂がじわっと、これはお箸が進みます。……と、あら!? 衣の中にはお魚だけではないのですね、この酸っぱさは……ああ! これは梅ですわねっ! 梅肉を魚に塗り大葉で包んでっ!! しつこいのにさっぱりとしていて、香りまでよいだなんてっ、なんと素晴らしいお料理なのでしょうっ!」


 「サクラの、なか、チーズ、だった。これもすごくおいしい、メーシャン、半分、あげる。はい、あーん、して?」


 「まぁ、サクラお姉様自らその様な、恐縮ですが嬉しいです。喜んで頂きますわ、あーん、はんむ、あっつ! んむ、んむ、んむ、んく。

 はぁぁぁっ、これもとても美味しゅうございますのね、熱で溶けたチーズの濃厚な旨味が口いっぱいに広がって、同じお料理なのに挟む食材でこれ程に違いが出るとは本当に驚きでございますわっ。

 あら、ヒメばかり食べてしまっていては申し訳無いですわね、サクラお姉様もヒメの食べさしでよろしければお返しに半分どうぞ、はい、あーんですわ」


 「あーんむ! んむっ、んむぐ、むぐむぐ、んまっ! おいひいっ! こっちも、おいしい! サクッ、すっぱっ、ジュワッ、フワァァン、って、なるっ、おいしいっ!!」


 「ええ、そうでしょうそうでしょう、フフ、サクラお姉様はタタラ様のお食事をお召し上がりになる度に蕩けそうな程にお幸せそうなお顔をなさるのですね。

 タタラ様もその様に喜んでくださいますとさぞや作り甲斐がございましょう」


 「そうだね、サクラは素直だから心から美味しく思ってくれてる、喜んでくれてるって判るんだ。やっぱり作る側としてもそんなに夢中になってくれると嬉しいよ。

 もちろんメイシャンさんも喜んでくれて嬉しいよ」


 「あら、さん(・・)付けなどとその様な他人行儀な、ヒメの事は是非『メイシャン』とお呼びくださいな、お姉様が呼び捨てなのにヒメだけさん付けでは少しだけ疎外感を感じて寂しくもあります故」


 「ベエエ」


 「いいえ、ヤギさんはやはりヤギさん(・・)ですわ、ご自分のお姿をご覧くださいまし、その様な立派なお髭を蓄えた紳士を呼び捨てなどと。

 ヤギさんのさん(・・)は尊称ですわ、聞き分けてくださいませね?」


 「ベエェ、ベエエエエエェッ!」


 「フフフ、その様に鳴かなくともヤギさんのお気持ち、このメイシャンには伝わっていますわ、なんといってもヒメたちはお友だちなんですもの、ね、ヤギさん?」


 「ベエ、ベエエ、ベエエエェェ~~ーーーー」


 「メーシャン、ちがう、ヤギさん、そうじゃないって、言ってる」


 「えっ!? ヤギさんはとっくにお友だちだと思っていましたのに……よもやこの友情はヒメの思い込みっ!? ヤギさんにヒメは嫌われていましたのっ!? だとしたら………よよよ、落ち込んでしまいますわ、ぐす」


 「……じゃなくて、ヤギさん、紳士、ちがう、ヤギさんは、おんなのこ、だから、このこは、しゅ………しゅ、しゅ、しゅくべん?」


 「サクラ、それは…… 多分淑女じゃないかな!?」


 「そう、しゅくじょ、ヤギさんは、立派なじょせいの、しゅくじょ、なの」


 「ベエエ!」


 「な、なんと! そうとは知らず大変なご無礼を、あ、ああ、そう、改めて見ればそうですわね、艶やかなお髭もなんとも匂い立つような色気に溢れそのうねる角も女性らしさに満ち満ちております。

 ああ、ヒメの目のなんと曇っていたことでしょう、ですからヤギさん、ご機嫌を治してこちらを向いてはくださいませんか?

 ヒメは大切なお友だちにその様に冷たくされると悲しい気持ちになってしまいますわ」


 「ベェ」


 「ヤギさん、メーシャン、ゆるしたげて? 誰だって、間違う、こと、あるって、僧正様、いってた。心からはんせい、してるのなら、つぎは、それをかてにせいちょうするできるのだから、じゅうようなのは、失敗を、わすれず、いかすことだって。

 ね? おともだち、いつまでもケンカ、してたらつまらないよ?」


 「ええ、ええ、サクラお姉様のおっしゃる通りヒメは反省をいたしましたわ、今後この様な失態は犯さないとヤギさんとの友情に誓いますわっ! ですから……ぐすっ、ひ、ひべを、ゆるっ、許しでぐだざいばぜぇぇ~~ーーえぐっ、ぐすっ」


 「ベ、ベエエ……」


 「ほらほら、ヤギさんも何時までもそんな意地張ってるからメイシャンが泣いちゃったじゃないか、仲直りするいい子には僕が特別なご褒美をあげようと思っていたんだけどな」


 「ベェ!?」


 「ズズッ…… らん、れすの? とぐべずなごほおびっべ!?」


 「ほら、メイシャンも鼻かんで」


 「おぞれいりばず、ずびっ、ちーんっ、……んは、それでタタラ様、特別なご褒美とはいったい!?」


 「その前に仲直り! ヤギさんもメイシャンはちょっと勘違いしていただけなんだから、許してあげてね?」


 「ベェ」


 「ヤギさん」


 「ベエエ、ベェ」


 「まぁそんな、悪いのはヒメですのに」


 「ベエエェ」


 「そんな事ないですわ、それでしたらヤギさんの方こそ」


 「ベェ、ベェ、ベエエベエエエェェ、ベェベェ、ベエエエエエエエエッッ、ベエエ、べ、ベエエエェ、ベェベエエ、ベエエエェエエェ、ベエエエベ、ベエ、ベエベエ、ベエベエエエエエエエエッ、ベエエェェエエ、ベエエベエ、ベエッ、ベエエエエ」


 「まぁ、そうでしたの!? その様な驚愕的事実をヒメに話してくださるだなんて……」


 「ヤギさん、そんなこと、あったなんて…… 大丈夫、サクラ、ヤギさん、そんなことで、きらい、なったりしない、正直に、うちあけてくれた、やぎさん、もっと、大好き、なった」


 「……ベエエ」


 「……ヤギさん」


 「よかったね、タタラ、ヤギさんと、メイシャン、また、なかよし、なった。でも、タタラも、ヤギさん、話してくれたこと、内緒、しとかなきゃ、ダメね!?」


 「…………え? ああ、うん、そうだね、黙っておくよ。ところでヤギさんはさっき何の話を………」


 「それでタタラ様、仲直りもいたしましたし特別なご褒美をいただきたいのですがっ!」


 「そう、サクラも、気になる。とくべつな、ごほーび、なに?」


 「ベエエエ!」


 「ああ、はい、そうだね、それじゃあ仲良しな三人にはこれをあげようかな」


 「あら、可愛らしい、真っ白くってふるふると、変わったお料理ですのね。タタラ様、これはいったいなんなのでしょう!?」


 「杏仁豆腐だよ、食料庫に材料が揃っていたから作ってみたんだ。さ、みんな食べてみて感想を聴かせてね」


 「あんにん、どーふ?」


 「なにやら甘い香りがいたしますわ、天辺にある赤い実がなんとも白に映えますわね。それでは早速いただきますわ」


 「サクラも、いただきます~ーー」


 「ベエエェ」



 「うまっ!」


 「うまっ!」


 「ベエッ!」


 「すごい、あまい、おいしい!」


 「なんですのっ!? ふるるんっとしててつるるんって入ってきてふにゅるんって溶けますわっ! しかもこの不思議な甘さはっ!? 甘いのにすっきりしてて鼻に抜ける爽やかな香り! ヒメが初めて体験する味ですわっ!!」


 「ははは、気に入ってくれたみたいでよかったよ。そんなに難しくないから今度機会が有ったらみんなで作ってみるのもいいかもね」


 「うん! サクラ、食べるだけじゃなくって、タタラと、いっしょ、つくってみたい!」


 「そうですわね、食べるだけではなく作るところから始めてみればより美味しく食べる事が出来そうな気がいたしますわ。

 その際にはよろしくご指導お願い致しますわ、ご主人様(・・・・)


 「ん?」


 「はい? いかがいたしましてご主人様(・・・・)!?」


 「いや、メイシャン、ご主人様って、なに?」


 「はい?」


 「何で僕に向かってご主人様って呼んでるの?」


 「ヒメが自分の主人をご主人様と呼ぶのに何か不都合がございまして?」


 「主人って、いつなったの!? さっきまで『タタラ様』って呼んでたじゃない」


 「杏仁豆腐を口にしてからですわ、ヒメ、思いましたの、この機会を逃せばもうこの様に美味しいお食事を作ってくださる殿方とお逢いする事など無かろうと。

 わが家の家訓にもございます、一期一会一発必中一騎当千一日一善と」


 「………それ、本当に家訓?」


 「う、正直何やら難しい言葉であれこれ書いてありましたからあんまり覚えてはおりませんが出会いの好機は逃すな、チャンスの女神様に後ろ髪はないとかなんとか……

それにしてもチャンスの女神もよっぽどサイケデリックな髪型をしておられるんですねぇ、前髪があるのに後ろの髪は丸坊主なんでしょうか?」


 「つまりは?」


 「メイシャン! 気合い! 入れて! ご主人様のお役にたってみせますわ! ですから定期的にこの杏仁豆腐を報酬としてくださいませな。

 それにサクラお姉様もヤギさんも居られるんですもの、せっかく仲良くなったのですから離れるのは寂しいではありませんかっ!?」


 「うん、サクラも、メーシャン、ずっといっしょがいい、タタラ、メーシャンも、ミドガンド、連れてったげて? サクラも、気合い! 入れて! タタラにごほーし、するよ? だからおねがい」


 「ベエエェ、ベエ! ベエエ! ベエエェ!!」


 「はぁ、判ったよ、けど僕の一存じゃ決められないから帰ったらミドガンドの指令さんに聞いていいって許可出てからね? それでよかったら同行しよう」


 「感謝いたしますわっ! あ、ところでこの杏仁豆腐、お代わりはございませんの? ヒメの胃袋はまだ少し空きがございますが」


 「…………………………………………………………………………冷蔵室から持ってくるから待ってて」



 「メイシャンいい子でお待ちしておりますわご主人様」


 「サクラも~ーー」


 「ベエエェ」


 



 


 

ストック分尽きました、明日投稿出来るかは今日の進み具合次第です。

また書き貯めます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ