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オマケ余話 ー異星界人でもわかるヴァンプの生態ー 発刊記念講演会 講演記録

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 「はい、ありがとうございます。この度はわたしの著書『異星界人でもわかるヴァンプの生態』発売に伴いこちらの星系の後援会の方々からのご依頼で講演会を開く事となりました。


 まぁヴァンプの生態研究などとマイナーな研究をしている訳ですから講演をお聴きに来るお客様もそうはいらっしゃらない。精々席の十分の一でも埋まれば御の字と思っていたのですが……

 

 正直驚き戸惑っている次第です。まさかまさか満席立ち見の方々まで出るなどとは。


 さて、先ずはヴァンプの生態に関してですが、これはまぁ著書をお読み頂ければよいでしょうし先に著名な環状銀河知性種研究の第一人者、ムツォーゴロ氏の著もまたあります。


 そこでここではまぁ堅苦しい話は無しにしてムツォーゴロ氏とヴァンプの間に起こった逸話などをひとくさりご紹介いたしましょうかと。


 さて、このムツォーゴロ氏、著書『あなたの知らない楽しい環状銀河知性種生命体』の中に於いてこの様に書き記しております。


 おほん。


 『ヴァンプ


 環状銀河北方に位置する星系トランティシを原産とする知性種生命体。

 

 その性格は極めて残忍にして酷薄、非道を是とし他を貶めるを快楽とする。

 道徳心が欠如しておりむしろ非道徳(インモラル)を率先し行う者こそが他のヴァンプより尊敬を集める。


 身体的特徴としては髪は白から黒、稀に褐色、金色など標準的な発色、瞳は血の赤をし、体色は蒼白く長い犬歯を持つ。


 また、マナに頼らない特異な業を駆使し闇に溶け宙を舞い人を惑わす。他者の体液を愛飲し禁じられた忌術に精通し自らの遺伝子すらも弄ぶ。結果、ダンピールを始めとした眷属を次々と造り出し自らに奉仕をさせた。


 生息圏は同星に住む知性種ライカンスロープと隣接している事からしばしば大規模な領地争いが行われた。


 膂力尋常ならざるライカンスロープに対しヴァンプはその狡猾さで対向し搦め手を以てライカンスロープを従わせるに至った。


 やがて宇宙開発の時代がやって来ると他の星系との文化交流に於いてヴァンプの選民主義思想は他の知性種団体より猛烈な抗議を受ける。

 それに対しヴァンプは表向きライカンスロープを始めとする被支配知性種を解放し惑星トランティシの平等主義を謳うウィルミン思想体を樹立、国家としての環状銀河連合体への参入を果たした。

 

 しかし如何に表を取り繕うともヴァンプの本性は悪である。

 不運にもヴァンプと共に過ごす機会を与えられてしまった他の知性種生命体諸氏に於いては努々その事をお忘れ無き様筆者は警告するるものである』

 

 いやはや、全く以て公正とは言い難い悪意ある評価ですね。


 一説ではムツォーゴロ氏はヴァンプと言う種族を嫌悪し氏の著書がトゥランティシで出回るのさえ出版社を通じ阻止しようとさえしたそうです。

 結局は環状銀河全域で発行された訳ですが、この著書『あなたの知らない楽しい環状銀河知性種生命体』は驚く事にトランティシでの購入部数が圧倒的に他の星系を上回ったと言われています。


 ヴァンプは著書の中の自らの種を記した箇所に目を通し怒り狂うどころか絶賛したそうなのです。


 「彼はヴァンプの本質を事の外理解している。まさに氏はヴァンプの伝道師である」


 とね。


 彼らは氏への感謝の印としてムツォーゴロ氏をトランティシに招いたそうです。無論氏は丁重に断りを入れたそうですが、そこは一切の常識が通用しないヴァンプの事、公学校での講義を終え帰宅の車内から彼を拉致し無理矢理首都トランティシ中枢の中央区シルヴァニヤへと連れ去りました。


 この狼藉に当然氏は怒りを露に抗議した訳ですが彼らはそんな氏を意に介しもせず彼の前に次々と豪華な食事を並べ始めたのです。


 「ムツォーゴロ博士、我らヴァンプは貴殿の著書『あなたの知らない楽しい環状銀河知性種生命体』を読み感動した。まさかこんなにも我々の種を理解してくれている他種族が居ようとは夢にも思わなかったのだ。その非礼を詫びると共に貴殿に感謝の証しとして歓待をしたく思ったのだ。

 さぁ、貴殿がよく知るように我らヴァンプにして最高の快とは即ち人道からの転落、仁への反逆、義への冒涜、礼への蹂躙、智への滅却、信への唾棄、これら全てを集約した素晴らしき饗応を以て貴殿の功績を讃えよう! 

 貴殿が我々の持て成しに感涙で咽ぶ事、私は確信をしている」


 そうヴァンプの首魁は告げ目の前の一際大きな皿に盛られた料理、その上に被せられていた銀の蓋を取り去ったのです。


 氏は絶叫しました。狂ったかの様に涙を、涎を、遂には全てを垂れ流し皿に盛られた料理に飛び掛かりました。


 彼が抱えるそれ(・・)、じっくりとローストされ甘い飴の掛けられた彼の妻子の生首であったのです。


 氏はひたすらに泣き狂いました。


 ヴァンプはそれを見、手を叩き歓びの声をあげたです。


 「見よ、天下第一の博識者がこうも喜んでくれているぞ! 博士、肉親を食するはいかなヴァンプと言え踏み込めずにいた禁忌、貴殿はヴァンプすら辿り着けぬ外道の境地へと堕ちたのだ! 貴殿にヴァンプの祝福を!!」


 その後ムツォーゴロ氏は行方知れずとなりました。一説ではヴァンプの奈落へと身を堕とし最下級の屍食鬼として彼らにその生を捧げているとも言われています。


 どちらにしろ皆様もヴァンプと席を共にする際はくれぐれも御用心の程を」


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 「いやいや、ありがとうございます。拙い話でその様に喜んで頂いて何よりです。おや、花束ですか? これはまた何とも……と、君、勝手に壇上に上がっては………け、警備員さんっ彼をっ、何をぼんやりと、彼を取り押さえてください早くっ! きっ、君っ、その長い犬歯はまさか…… いや、あり得ない、ここはウィルミンから遠く離れたトールキン、客は全てハーフビット……まて、そんなっ!? ハーフビットがこんなにも長身な訳がないっ。牙に蒼白い肌、それに赤い瞳!? なんてこった、客全てがヴァンプ!? そんな………ああ…………

いや、しかし私は独身の身、妻も子供も居はしない。

 は!?

 花束?

 いや、だから…………何!? 花束の中に何か………………………ッあ!? ああ!? そんなっ!? まさかっ!?? ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!」


 





 この講演会を最後に彼の消息は途絶えた。それと時を同じくして遠く環状銀河東域に居を構え暮らしていた彼の老いた母親も姿を消したのであった。

 


 

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