表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
19/30

第十九話 欧州列強の影


# 第二部 第九話:欧州列強の影(無敵艦隊との対峙)


元和四年(一六一八年)夏。


日ノ本が誇る「開かれた大航海」の繁栄を根底から覆す、未曾有の大嵐が南方から迫っていた。


フィリピン・マニラでの敗北、そして日明同盟による東シナ海の制海権喪失に激怒したスペイン国王フェリペ三世は、極東の新興勢力を地上から抹殺すべく、恐るべき決断を下した。ヨーロッパ本国および新大陸(新スペイン)から選りすぐった超大型ガレオン戦艦を主力とする「真の無敵艦隊アルマダ」百五十隻、総兵力三万をアジアへ向けて差し向けたのである。


「異教徒の不遜なる黒い船団を、無敵艦隊の圧倒的な砲火で海の藻屑とせよ」


マニラ湾で再編成された大艦隊は、三層甲板を誇る巨大な戦艦を先頭に北上を開始した。目指すは日ノ本の本土、そして大坂合議会の息の根を止めることであった。


この未曾有の国難に対し、最高海軍提督・黒田長政は、全西国大名、さらには恭順を誓った江戸の徳川水軍をも動員し、総力戦の構えを整えた。


戦場に選ばれたのは、琉球のさらに南——宮古島・八重山諸島沖に広がる大海原であった。


「父上が遺してくれた、この海の命脈。南蛮の独裁者どもに渡してたまるか!」


長政が座乗する漆黒の旗艦「如水丸」を核に、毛利秀就の瀬戸内水軍、島津忠恒の薩摩水軍、そして鉄甲船の系譜を引く九鬼水軍が集結した。その総数、およそ百隻。数では劣るものの、いずれも長崎・博多の最新技術によって造られた漆黒の武装ガレオン「大朱印船」の精鋭揃いであった。


---


元和四年、七月。


青く澄み渡る南洋の水平線が、スペイン艦隊の白帆で埋め尽くされた。艦列の中央に屹立するのは、百門の大砲を備えた超大型旗艦「サン・フェリペ号」である。


「敵艦隊、全容を現しました!……凄まじい大きさです!」


物見役の叫びに、日本の将兵の間に緊張が走った。


「うろたえるな!」


長政の声が、全艦に設置された南蛮式の伝声管を通じて響き渡る。


「奴らの船は巨大で頑強。まともに撃ち合えば分が悪い。なれど、あの巨体は小回りが利かぬ。我が艦隊の強みは、浅瀬を恐れぬ快速と長い射程、そして水の如き連携にあり!」


ドォン――!!


先陣を切ったのは、スペイン艦隊の圧倒的な一斉射撃だった。無数の砲弾が海面を割り、白い水柱が天を突く。日本の大朱印船が数隻、またたく間に大破して炎上した。ヨーロッパの絶対王政が結晶させた軍事力は、これまで相手にしてきた海賊や東国の水軍とは、まるで次元が違っていた。


「耐えろ! まだ引き付けよ!」


長政は旗艦の舵を自ら握り、あえて敵の猛射を浴びながら風下へと回った。退却と見たスペイン艦隊は、一気に包囲しようと密集陣形を保ちながら突進してくる。


これこそが、長政が仕掛けた「死の罠」であった。


「島津殿、毛利殿、今だ! 敵を袋小路へ追い込んだぞ!」


大朱印船が一斉に反転し、風上を押さえた——その瞬間、長政の合図とともに「ある新兵器」が放たれた。


明国から大量に仕入れた高品質の硝石・硫黄に南蛮の最新技術を融合させた、海を走る爆薬船——**「水上地雷(焦熱魚雷)」**である。小早川の快速船が一斉に火薬を満載した無人船を送り出し、密集するスペイン艦隊の中央へと突っ込ませた。


「何だ、あの小型船は!? 撃て、撃ち落とせ!」


スペイン兵が慌てて銃撃を浴びせるが、すでに遅かった。


ドガガガァァァン——!!!!


宮古の海を真紅に染める、天地を裂くような大爆発が次々と連鎖した。


密集していたスペインの大型ガレオン船が、次々と火だるまとなり、互いに衝突して大混乱に陥る。かつて官兵衛が播磨の地で家康を討ち破った「地雷火」の計略が、今、息子の長政の手によって大海原の上に甦ったのである。


「全艦、突撃! 敵の旗艦を討ち取れ!」


混乱の渦中へ、毛利・島津の快速船団が殺到する。


加藤忠広率いる陸戦隊と、島津の示現流の武者たちが、煙に包まれた敵艦の甲板へと次々と躍り込んでいった。


「チェストォォォッ!!」


異国の海に轟く薩摩の勝鬨。白兵戦に移れば、世界最強と謳われる日ノ本の武者たちの独壇場であった。無敵艦隊の将兵は次々と組み伏せられ、碧い海へと叩き落とされていった。


数日間に及ぶ激闘の末、スペインの巨大旗艦「サン・フェリペ号」のメインマストが、長政の放ったカノン砲の一撃によって轟音とともへし折れ、碧緑の波間へと沈んでいった。


残存艦はことごとく命からがら南へと敗走した。


ヨーロッパの巨人が極東へ伸ばした侵略の腕は、日ノ本の智謀と武勇の前に、完膚なきまで叩き折られたのである。


---


「父上、やりましたぞ……」


血と煤に汚れながらも、沈みゆくスペインの巨艦を見つめる長政の目に、静かに涙が滲んだ。


この「宮古島沖海戦」の勝利により、西欧列強によるアジア侵略の野望は完全に潰えた。日ノ本は自らの力で世界の一極を撃破し、名実ともに「世界の海の覇者」としての地位を打ち立てたのである。


物語は、いよいよ新時代の黎明を迎える——最終話へと向かう。


---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ