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「何で1人で薬草獲りとか行こうって言う発想にななっちゃうのかな?」


 ブツブツ言いながらパトリックがリリアナを手伝って、モナミ草を摘んでは籠へいれていくーー結局、リリアナは、ヴィヴィアンの提案通りにパトリックと2人で林にやって来ていた。


 緑の草原に天使のような美貌のパトリックがいると、まるで天から天使が舞い降りた光景のようだとリリアナは思った。浮世離れした光景に、思わずリリアナが手を止めてうっとりパトリックを見つめていると、パトリックが嫌そうに顔をしかめた。


「リリーお姉さま。ちょっと、見つめてこないで。どこで、風の精霊が監視していて、兄上にチクるとかもしれないのに」


「だって、パトリックったら、絵画みたいにものすごくきれいなんだもの!それにパトリックを見ていても、風の精霊はなんとも思わないわよ」


「男にきれいって誉め言葉かな…。まぁいいから、とにかくあんまりこっち見ないでよ。兄上って、リリー姉さんさまが思うよりもずっと、リリー姉さまの事になると狭量なんだから」


 パトリックは、そういうと薬草摘みを再開したので、リリアナも負けずに籠に薬草を入れていく。


 ヴィヴィアンの命によって、パトリックが薬草獲りに同行することになり、リリアナとパトリックは当初の予定よりも遅い昼過ぎから薬草獲りに来ていた。そのため、日が傾き、暗くまでにはあまり時間が残っていなかった。リリアナもパトリックに倣い、できる限り薬草を持って帰ろうと薬草摘みを再開した。



ーーーーーー



 屋敷から持ってきた籠が一杯になった所で、リリアナが顔をあげると、パトリックからは大分離れて1人で林に佇んでいた。

 リリアナが離れたことに、気配に敏感なパトリックが気がつかないなんて、おかしいなとリリアナは思いつつも、1人で林の中にいることに心細さを覚える。すぐにパトリックの側に戻らなくてはと、パトリックが何処にいるかと辺りを見渡すと、遠くの草原にしゃがみこんでいる姿が見えた。パトリックも暗くならないうちに帰るためか、かなり薬草摘みに集中しているようだ。


 ーーーパトリックからこんなに離れては、今後はますます、1人で薬草を摘みに行くなって言われちゃうわね


 お目付け役のパトリックから離れては、後からヴィヴィアンとパトリックに説教されると感じたリリアナは、急いで草原のパトリックの元に戻ろうとした。すると、リリアナの視界の端にメイルズ男爵領ではかなり珍しい花が咲いているのが見えた。


 ーーーライベルトの花だわ。こんなところに咲いているなんておかしいわね…


 リリアナはアークの紀章、ライベルトの花がこんな薄暗い林の中に咲いているのを不信に思った。しかし、リリアナの気持ちとは裏腹に、何かに誘われるようにして、林の奥に咲くライベルトの花に足が向かって進んでしまう。

 ライベルトの花は通常、海岸線の陽当たりの良いところに咲くことが多い。こんな林の奥にどうしてーーとリリアナは疑問に思いながら、咲いているライベルトの花をより近くで見ようと、さらに歩を進めた。すると隣でガサッと草を踏む音がした。


 ーーーえっ!?魔獣ーー!!


 どうして側に来るまで気がつかなかったのか、不思議に思うほど、巨大な体を持った魔獣がそこにはいた。荒い息を繰り返しながら、ライオンと虎が入り交じったかのような外見の魔獣が周りを見回し、濁りきった目でリリアナを捉えた。


 ーーーっ!!


 グォォォ…


 リリアナよりもはるかに巨大な魔獣は、低い唸り声をあげながら、淀んだ目でこちらの様子を伺ってきた。リリアナは恐怖で声もあげられない。

 リリアナを丸呑みに出来るような大きな口には鋭い牙が何本も見えており、今にもリリアナを餌食にしようと涎を垂らしていた。


 ーーー嘘!こんなところに魔獣が出るなんて!!


 リリアナの住むメイルズ男爵領では、魔獣が出たと言う報告は今までに上がっていない。リリアナが魔獣を見たのは、幼少期に帝都で見たサーカス以来である。


 必死にパトリックに助けを求めようとしても、魔獣とリリアナの距離が近すぎている。リリアナが助けを求めるために背を見せるとすぐに飛び掛かってくるのは明らかだった。

 恐怖に震え、おののきながらも、リリアナが息を殺し魔獣と対峙すると、魔獣が荒い息を繰り返しながら、ゆっくりリリアナへ一歩一歩近づいて来た。



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