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「リリーお姉さま、少しだけ良いかしら?」


 リリアナが自室で林に薬草を取りに行く準備をしていると、花が咲いたような笑顔を見せてヴィヴィアンが部屋に入ってきた。

 ヴィヴィアンとパトリックは夏期の休暇の大半を、リリアナのお目付け役としてメイルズ男爵家で過ごすらしい。


 ーーーヴィヴィアンもパトリックも都合があるはずなのに、アークったら横暴ね


「あら?リリーお姉さまはどちらかにお出掛けになる予定があるんですの?」


 リリアナが大きめの袋に、薬草を借りとるカマや束ぬるロープなどを詰め込んでいるからか、不思議そうな顔をしてヴィヴィアンが尋ねた。


「今から林に薬草を取りに行こうかなって」


 リリアナは、以前アークが精霊魔法で生やしたモナミ草を獲りに行こうと思ったのだ。いつもの薬草も見つかれば持って帰ろうと張り切っているため、リリアナの服装は使用人から借りた動きやすい服装を着ていた。


「はい?リリーお姉さま、お一人で林に向かわれるのですか?」


「うん。いつもの林だから、迷うこともないし。今日は天気も良いから薬草獲りにはもってこいの日なの」


「ーーなるほど、分かりました。リリーお姉さま、少しだけお時間を頂けます?パトリックお兄様に同行をさせますので」


「大丈夫だよ!迷子になったこともほとんどないんだから」


「そこは、1度もないとおっしゃってくださいませ!」


 ーーーヴィヴィアンって心配性ね…アークからもらったカルラ・ルカだって身に付けてるのに


「ねぇ、ヴィーの話って今日の予定の確認ってこと?」


 リリアナについて、なにかと行動を管理したがるヴィヴィアンにげんなりして訊ねると、ヴィヴィアンははっとして、公爵家の侍女からなにか受け取った。


「いいえ、はい。まぁ、予定の確認もしたいのですがーー、リリーお姉さま宛に先ほど、移動魔法を使った荷物が届きましたのーーユーリお兄様からリリーお姉さまにですわ」


 ヴィヴィアンはそういうと、リリアナにアークからの贈り物を渡した。


 ーーーなんだろう?重いし、結構、たくさんあるーー


「これって?まさか」


「えぇ。人間を移動させるための魔力が込められております」


 リリアナが贈り物を開けると、移動魔法の水晶がたくさん入っていた。水晶は1度使うと割れてしまうため使い捨てであるが、大変高価な品である。


 ーーー移動魔法の水晶がこんなに…ものすごく高いんじゃ…


「ユーリお兄様がリリーお姉さまに会いたくて用意したものです。ユーリお兄様は大変お忙しくて、リリーお姉さまに会いにこちらに来れないからと。この水晶を使って会いに来てほしいそうですわ」


「え?忙しいんじゃ会いに行っても、迷惑なだけじじゃない?」


 リリアナがそういうと、ヴィヴィアンは困った顔をして首をふった。


「ぜひとも、ユーリお兄様に会いに行ってくださいませ。公爵家の仕事も、学園の仕事も立て込んでおりますが、リリーお姉さまが会いに行かれると心が癒されますから!ーー(どうか最高潮の不機嫌を粉砕してくださいませ!)」


 会話の最後の方で、何故か語尾を強めたヴィヴィアンにリリアナは不思議に思うが、アークに会いに行っても迷惑ではなさそうだ。それに、アークに会いに行く次いでに、久しぶりに帝都を散策も良いかと思い直す。


 ーーー今後の研究の材料とか、観光に活かせるものとかのヒントも見つかるかも


「分かったわ。アークが忙しそうだったら、少し街も散策して来れるしね。でも、かなり高価なものだから、こんなには不要かな…」


 リリアナは研究に没頭するあまり、誘拐監禁事件以降、帝都から足が遠退いていた。久しぶりで、帝都の街並みはすっかり変わっているだろう。アークと将来一緒になるのであれば、これを機会に帝都になれるのも良いだろうと思う。


「リリーお姉さま。ぜひとも、すべての水晶を使いきってくださいませ!アークお兄様はきっと、絶対!リリーお姉さまにたくさん会いたいはずですわ!」


 リリアナが半分くらい水晶をヴィヴィアンに返そうとすると、かなり強引にリリアナの手元に押し止められる。


「ヴィー?そんなに頻繁に会いに行ったら、アークの仕事の邪魔になっちゃうよ?それに、こっちで研究の続きとかもしたいし」


「大丈夫ですわ!リリーお姉さま!もう、毎日でも会いに行ってくださいませ!ーー研究は…、そうだわ!!」


 ヴィヴィアンは毎日でもアークに会いに行けと言うが、それはちょっとやりすぎではないかとリリアナは思う。それに研究と聞いて何かしら閃いたようなヴィヴィアンに少しの不安を感じた。


「じゃぁ、ここは一旦、水晶を受け取っておくね。とりあえず、今日は薬草を獲りに行ってくるわ」


 せっかくだから、移動魔法の水晶を使おうかとも頭を過ったが、高価なものを近距離で使うのは忍びないし、アークに会いに行く以外で使うと気が引ける。いつも通り歩いて行くことにし、リリアナは準備が出来たカバンを持って出かける事にする。


「ちょっ、ちょっとリリーお姉さま、お待ちください!レイチェル、すぐにパトリックお兄様を呼んできて!」


 リリアナが出掛けようとすると、ヴィヴィアンが慌てて、侍女にパトリックを呼ばせる。少し過保護だと思いつつも、いつにないヴィヴィアンの慌てように、リリアナは大人しくパトリックを待つことにした。


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