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12月5日 其の二 母校に忍び込み作戦

 そして、昼になった。「忙しくて、もこぴーなんかに構ってる暇はないのよ」なんて心の中で唱えながら、私がやって来た場所というのが、数年前に卒業した英輝学院高校だったりするのだが、私は知らぬ間に操られちゃったりしてるのだろうか。「あなたを消滅させますよ」とか「祟りますから!」とか言われたわけでもないのに、何で私は講義をサボってまでこんな所に来たのだろうか。

 しかも、高校時代の制服を着て……。

 十二月だから少し寒いし、一体何で、本当に何で、何で私はこんなことしてんだろう、と、さっきから自分を疑いまくっている。

「桂さん、桂さん。ここから先はどうしましょうかっ」

 楽しそうにはしゃぐもこぴー。いや、実は私も少しワクワクしていたりするのだが。

「そうね、校内に侵入するわ」

「何と! 大胆な……」

「この時間だと、今は昼休み。教師たちも昼食休憩をとっていて、監視は手薄。侵入するなら今よ。問題は、校内の誰かが私のことを憶えていなければいいんだけど……」

「なるほど、その為に私にも制服なんて着せたんですねっ!」

「そうよ」

 半霊体というのは、思いの外不便なもので、物質を透過できても一般人から姿を隠すことができないらしい。なので、私は二着あった制服のうちのサイズの小さな方を着せたのだった。「胸がきつい」とか言われた時は蹴飛ばしたくなったけど、もう高校生じゃない大人な私は我慢したのだった。

「このリボンの色は、今の二年生のリボンの色なのよ。時田まことは二年生なんでしょう? だから、ちょうどいいわよね」

「素晴らしいです、桂さん。あたしにはこんな作戦思いつきませんでした!」

「そりゃどうも」

 私たちは、校内に足を踏み入れた。校舎内に入ろうとした時に、上履きを忘れたことに気付き、外履きを下駄箱の上に置いて、スリッパを利用した。在学中に上履きを忘れた時、スリッパで一日を過ごしたことがあるのでそこまで怪しまれることも無いだろう。

 で、予想通り、特に怪しまれることなく侵入できたことに、ちょっと嬉しかったりもした。校内の様子も、大きく変化しておらず、迷わず目的地まで辿り着くことができた。

「ここが……二年六組の教室ね」

「はい、そうみたいです」

「いくわよ、もこぴー」

 引き戸を開けると、懐かしい教室の風景が広がっていた。教室中の女子の顔が、私を不思議そうに見ている。「誰だろう、あれ」とか「大人っぽーい」などと囁き合っていた。嬉しいんだか何なんだかよくわからないモヤモヤした感情を抱いたが、今はそんなことはどうでも良い。

「どう? いる?」

 私は小声でもこぴーに訊いた。

「あ、はい。居ます。窓際最後尾」

 よりによって、一番奥か。教室最後尾の窓際に目を向ける。そこには二人の女子が居た。一人は大人っぽい女子で、もう一人は明らかにロリだった。ロリロリな方が時田まことだろう。

「行きましょう」

 私は言った。

「え、でも、大丈夫でしょうか」

 この期に及んで躊躇うもこぴー。

「バレても逃げれば良いだけでしょう。それに、やらなきゃいけないんでしょ? だったら、行くしかないでしょうが」

「あっ……」

 私は、頼りない声をもらすもこぴーの腕を引っ張って教室内に入ると、真っ直ぐに時田まことのところまで早歩きした。

「……何か、御用ですか?」

 時田まことと向き合うように座っていた背の高い女子は、彼女を守る近衛兵のようで、威圧的にそう言うと、もこぴーには目もくれず、私を睨みつけた。

「あなたじゃなくて、時田まことに用があるんです」

 すっかり怯えてしまったもこぴーの代わりに、私はそう言った。

「見ない顔ね。クラスは? 出席番号は? 名前は?」

 背の高い女はそう言うと、キッと厳しい目つきで、今度は私の腕にしがみついて震え上がっている桃井もこぴーを睨みつけた。

「ひぅ……」

 怯えるもこぴー。

 あんた……まがりなりにも警察と名の付くものだったと思うけど、そんなに怯えてどうするんだ。

「嶋ちゃん、やめるですよ。怯えてるですよ」

 時田まことの声。確かに混野の家にあった写真の子だ。

「でも……」

「私に用事があるって言ったですけど、それは、ここでは話せないことなのです?」

 時田まことは私に訊いた。

「ええ、少し深刻な話なので、できれば人の居ない所で」

「わかったです。付いて来るですよ」

 物分りのいい人だった。彼女は椅子から飛び降りるようにして立ち上がると、先頭に立って歩き出した。

「ど、どこに行くの?」

 もこぴーがようやく口を開くと、

「屋上です」

 素っ気なく、でも可愛らしい声で答えた。




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