第一話 はなびら
入学式の直後、自己紹介の時間だった。窓辺にいた僕は、外の桜の木をずっと見っていた。柔らかな風が横からほっぺを吹いていた。
突然、一つのはなびらがひょっとして机の上に落ちた。もともとぼーっとしていた僕は、視線があのピンクの花に集まってきた。その時、もう一つの「花」が僕の前に現われた。澄み透った声が一瞬で、この冷めたい心をすり抜けた。
「私の名前は桜木はるかです、今後はよろしくお願いします。」
あの生き生きそうな声が眩しすぎた。数えきれないほどの目線があの子に集まって、太陽と言っても言い過ぎではないと思う。確かに、僕の心を照らした。
放課後、僕は一人で帰り道を歩いていた。他の人と話さず、一人で街の風景をゆっくり味わうのが好きだ。走っているワンちゃん、遊んでいる子供達、落ちている花びら。全ては一人でしか見えない景色なんだ。
「ニャーニャー」
坂道の脇にあるダンボールの中から、そんな声が聞こえたような気がした。近づいて見たのは、毛並みの汚れた子猫ちゃん。猫の母親や主人などはいないみたいだ。
しかし、うちはペット禁止だ。連れて帰ったら、絶対に母さんに怒られると気がした。でも、この子は可愛いし、可哀想すぎる……。心の中でそう思って悩んでいる際、傷を癒やすくらい澄んだ声が聞こえてきた。
「冬城楓人君でしょ、やっぱりそうなんだ」




