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勇者パーティーを追放された影の異能使い  作者: アークマ
第一章 ツブキの新たな生活

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ミサキ・サキル

「組の奴らって、サランドさんのいるタケイサ組の奴らですか?」

「確かに、うちの組にもいるかもしれん。だが、それは私がどうにでもできる。問題は敵対している組の方だ」


 サランドさんの表情が険しくなる。


「最近、うちはサング組の奴らに、うちがケツ持ちしている店を狙われていてな」

「サング組……」

「それだけじゃない。最近のサング組は、外道な商売にも手を出しているという噂がある」


 サランドさんは一度言葉を切った。


「先代は仁義に厚い人だった。だが、先代が亡くなり、今の組長――サザル・クルンガという男になってから、仁義に外れたことばかりしているらしい。まあ、あくまで噂の域を出んがな」


 サング組か。この辺りにも組員が来ているのだろうか。


「サング組は、王都の北側にある組のケツ持ちをしていてな。どうやら、こちらの様子を探るために何人か送り込んできているらしい」


 サランドさんは腕を組み、低い声で続ける。


「そいつらがうちのケツ持ちしている店で暴れでもしたら、こちらとしても黙っているわけにはいかん。だが……問題が一つある」

「問題、ですか?」

「奴らが、ミサキが私の妹の娘だと知っている可能性がある」

「……!」


 僕は思わず息を呑んだ。サング組がミサキの素性を知る可能性があるなら、確かに護衛が必要だな。


「だから、ツブキ。お前にミサキのことを任せたい」


 そう言って、サランドさんは僕に頭を下げた。


「えっ、ちょっ……サランドさん! 頭を上げてください!」


 極道には、できればあまり関わりたくない。

 だけど……。

 勇者パーティーで荷物持ちをしていた僕をひどく扱うどころか、ここまで高く評価してくれたのはサランドさんだ。その人から頼まれて、断るなんてことはできなかった。


「……わかりました。その頼み、引き受けます」

「そうか。よかった」


 サランドさんは顔を上げると、どこか安心したように笑った。


「お前なら信頼して任せられる」

「ありがとうございます」

「ただし、一つだけ言っておく」

「はい?」


 サランドさんの目が鋭くなる。


「恋愛とか、そんなものには発展するなよ」

「……え?」

「もしミサキの貞操を狙うような真似をしたら……私はお前に何をするかわからん」

「…………」


 怖い。めちゃくちゃ怖い。

 サランドさんから放たれる脅迫じみたオーラに、僕は首を勢いよく縦に振った。


「わ、わかりました!」

「よろしい」


 サランドさんは満足そうに頷く。

 ……絶対にミサキには手を出さないようにしよう。


「それと、お前とは別に、うちの組の者にもミサキの護衛を頼んである。もう少ししたら来るはずだ」

「護衛ですか?」

「ああ。お前一人に任せるつもりはない」


 サランドさんが言った瞬間、ギルドマスター室の扉が勢いよく開いた。

 ――バァンッ!


「サランドの親父ー! ただ今、来やした!」

「……」

「……」


 部屋に、一瞬の静寂が訪れる。入ってきた男は、金髪のリーゼント。

 口元には傷跡があり、黒いTシャツの上から赤いパーカーを羽織っている。下は黒い長ズボン。

 どう見ても、堅気には見えない。その男は僕を見るなり――。


「あ? あんたは誰だ?」


 ナグモが近づいてきた瞬間、そのリーゼントが僕の頭にゴツンとぶつかった。


「痛っ!」

「ナグモ。お前は元気があるのはいいが、もう少し落ち着いたらどうなんだ?」


 ゴンッ!


「痛ぇ!」


 サランドさんがナグモの頭を拳で殴った。


「いってぇ……! サランドの親父!何するんですか!」

「ここは冒険者ギルドだ。『親父』はやめろ。サランドさんでいい」

「あっ、そうでした!」


 ナグモは頭をさすりながら、僕を指差す。


「サランドさん! こいつ、誰なんですか!」

「ツブキだ。ミサキの護衛を任せることになった冒険者だ」

「へぇ……」


 ナグモは僕を上から下までじっくり眺める。


 ……なんだ?僕、何か変なことしたか?


「それよりナグモ。お前には話がある」

「わかりました!」


 ナグモはキラキラと目を輝かせながら、サランドさんを見る。

 その顔はまるで、親に呼ばれた子供のようだった。

 ……この人、本当に極道の人なのか?

 僕はそんな疑問を抱きながら、ナグモを見つめていた。

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