ガルンの狙い
オサヌがステイティア王にそう言った後、僕のもとへ近づいてきた。
「君がツブキ・ドゥン君だね?」
「は、はい。僕のことを知っているんですか?」
「勇者同士で、たまに会合をしていたからね。パーティーの役職や、どんな人物なのかは大抵聞いているんだ。ディアモ君は、特に君のことを小馬鹿にしていたからね。一度、君がどんな人物なのか自分の目で確かめてみたいと思っていたんだ」
ディアモさん、僕のことを悪く言っていたのか。
それに、勇者同士の会合なんて初めて聞いた。
荷物持ちの僕には話す必要がないと思って、教えてくれなかったんだろう。
「実際の君の実力は、ディアモ君が言っていたものとは違っていた。だから驚いたよ。遠くから見ていただけだから、君だという確信はなかったけどね」
遠くから見ただけで僕だと分かりかけていたこともすごいと思う。
とはいえ、僕がここまで戦えていたのは、影の異能があったからこそだ。
「君の力を貸してほしい。共にガルンの狙いを止めようじゃないか」
ガルンの狙い?それって、ステイティア王のことじゃ……。
「余であろう。敵の狙いは」
「そうです。ですが、ガルンはなかなか姿を現しません。奴は異能を持つ人間を操る異能を使い、今のように別の者を差し向けてくるんです」
オサヌは、先ほど斬った男の死体を指差しながら言った。
それを聞いたステイティア王は、怒りを露わにする。
「余の民を操り、本人は表に出てこないなど、許されんことだ。オサヌ、ツブキよ。そのガルンとやらを始末してこい!」
「ステイティア王。私はもとより、そのつもりです。ツブキ、行こう」
ガルンを倒しに行くのはいい。
でも、王の護衛はどうするんだ?
「余のことなら心配しなくていい。余にはガー以外にも護衛がいるからな。だから早く行け」
「分かりました。それでは」
僕とオサヌは訓練場の待機部屋を出て、城の入り口へ向かった。
すると、そこには大剣を背負い、顔に傷のある男が立っていた。
「ここは通さん」
男は背負っていた大剣を抜き放つと、僕たちへ斬りかかってきた。
僕は横へ飛んで大剣を避けたが、オサヌは大剣を構えて受け止める。
「この程度で私をやれると?」
「うる、さい……。はやく、斬られて、死ね……」
男はオサヌを押し切ろうと、大剣を振り下ろす。
しかし、オサヌは力任せに大剣を弾き返した。
そして、そのまま男の顔へ斬り込む。
「っ!」
男は咄嗟に大剣を持ち上げ、オサヌの一撃を受け止めた。
「俺を、簡単に、殺せると、思うな……。俺は大剣使いの、ニシカ、だぞ」
「聞いたことのない名前だな。だが、あいつの異能に逆らっているのは流石だ。……それでも、私たちに攻撃を仕掛けたことは残念だ」
オサヌは一気に間合いを詰める。
そして大剣を振り上げ――
ニシカの腹部へ、袈裟斬りを叩き込んだ。
「ぐっ……!」
確かにオサヌの一撃はニシカの腹部を捉えた。
だが――浅い。致命傷にはなっていなかった。
「……浅い?」
僕は思わず呟いた。
オサヌの攻撃をまともに受けたはずなのに、ニシカはまだ立っている。
こいつ……一体、何者なんだ?




