アゲルの相手
シムラ達が訓練場前の待機部屋から出た後、アゲルはステイティア王に尋ねる。
「それで、僕の相手はどうするんですか?」
「ふむ。もうそろそろ来る頃だと思うのだが」
ステイティア王がそう言った直後、待機部屋に一人の男が現れた。
男は背中に大剣を背負い、顔には片目を覆う黒い眼帯をしている。
「遅れてすまない! 中央ステイティアの王よ!」
「やっと来たか。東の勇者、オサヌ・デザム」
東の勇者!?
何でそいつが勇者候補戦に呼ばれてるんだ?
「ま、まさかですけど、ステイティア王。僕の相手って……」
「そうだ。この東の勇者がお前の相手だ。アゲル」
ステイティア王がそう告げると、アゲルは驚いた顔をする。
「え、マジですか、ステイティア王。僕は商人ですよ?」
「知っている。だが、お前の相手は奴と決まった。勝てとは言わん。東の勇者に、お前の合否を判定してもらう」
ステイティア王がそう言うと、東の勇者であるオサヌは口を開いた。
「中央ステイティア王には借りがある。だから今回のことも引き受けた。それに、こちらで調べたいこともあるからな。そこは私の仲間たちに任せているが」
オサヌはそう言うと、訓練場へと入っていく。
アゲルも慌ててその後を追い、訓練場へ入った。
「お、お手柔らかにお願いしまーす」
「ふむ。勇者候補として、君がどこまで私に攻撃を当てられるか見てあげよう」
オサヌは背中から大剣を抜く。
その瞬間、アゲルもすぐに異能を発動させた。
「私の異能、代償取引。では、まず代償を見ようか」
アゲルは異能を使い、オサヌの代償を見ようとする。
「……ん? 何で出ない?」
「戦いの場で油断していると、死ぬよ」
オサヌが大剣を振り下ろす。
「うおっ!?」
アゲルは転がりながら、なんとかその一撃を避けた。
「待ってくださいよ!私は商人なんですよ!戦闘は得意じゃないんですよ!」
珍しく慌てた様子でアゲルが叫ぶ。するとオサヌは冷静に答えた。
「勇者候補であるなら、どんな時でも戦いに備えておくべきだ」
オサヌは大剣を構え直す。
「私は弱い。だが、弱いなりに肉体を鍛え上げた。私は異能を使えないし、魔法も使えない」
オサヌは淡々と告げる。
「だが、その代わりに異能は効かない。魔法も効かない」
異能が効かないって、普通に強いじゃないか。
「余は奴が東の勇者でよかったと思う。もし奴が敵だったらと思うと、余は怖くて怖くてたまらんわ」
ステイティア王でも怖いって……。
オサヌって、実力もそんなにヤバいのか?
「奴はあの体質なのだが、肉体を鍛えたと言っていただろう?」
「はい」
「だが、奴は元より肉体が常人の何倍もの強さを持っている」
「常人の何倍って……。それで、さらに鍛えてるんですか?」
僕がステイティア王に尋ねると、ステイティア王は誇らしげな顔をした。
「そうだ。奴は本当に自分に厳しい男でな。だからこそ、余は奴を東の勇者に決めたのだ」




