カゲヤ・ホウリ
次の日、僕ことツブキが宿で休んでいると、ホーリィが迎えに来た。
僕はホーリィの案内でステイティア城へ向かい、そのまま王の間へと案内される。
王の間に入ると、すでに僕以外の勇者候補たちが揃っていた。
「それでは、今日より勇者選別を本格的に開始する。まずはカゲヤとツブキ。お前たちで戦ってもらう」
ステイティア王が僕とカゲヤに告げると、カゲヤはおそるおそる手を挙げた。
「あ、あのー。王様。ぼ、僕じゃ、ツ、ツブキにはか、勝てないから、じ、辞退してもい、いいですか。ふ、ふへへ」
「笑いながら何を言っている。貴様は強いだろう。余は知っておるのだぞ」
「ふ、ふへへ。ぼ、僕じゃあ、ありませんよ。ふへへ」
カゲヤは辞退すると言っているわりには、僕の前に立っている。
こいつ、本当は辞退する気なんてないだろ。
「き、昨日のく、訓練場でら、らしいからは、早く行こう。ツ、ツブキ」
「わかった。それじゃあ行こう」
僕はカゲヤと先に騎士団の訓練場へ向かった。
訓練場に着くと、今日は騎士たちの姿がなかった。
「今日は騎士団は休みだ。というか、休ませた。ランラが昨日のことで寝込んでしまってな。奴は想定外のことが起こると、体調を崩しやすくてな」
よくそれで騎士団の隊長ができるな、ランラは。
そう思いながら、僕はカゲヤの後を追って訓練場へ入っていく。
すると、カゲヤが僕の方を振り向いた。
「い、今からか、変わるからま、待って」
今から変わる?何のことだ?
カゲヤは胸に手を当てる。
すると――突然、地面に倒れた。
「あれ? どうした?」
僕が近づこうとした、その時だった。
「ふ、ふふ……ふはは!」
カゲヤは突然、高らかに笑いながら起き上がった。
さっきまでのカゲヤとは明らかに違う。
髪は逆立ち、目の下にはかなり濃いくまができている。
「さぁ!殺し合おうではないか!なぁ!なぁ!なぁ!」
カゲヤ――いや、目の前にいるこいつは、本当にカゲヤなのか?
その指先から、鋭利な爪が伸びていく。
あれは……異能か?
「お前の異能は、人を暗くするとか、そういうやつじゃないのか?」
「ん? ああ。カゲヤの方はそうだな。俺はツメヤ。俺の異能は、爪を伸ばす異能だ!」
ツメヤ……。
カゲヤは、まさか二重人格か何かなのか?
「俺は、カゲヤが自分に異能を使って、過度な負荷をかけたときに出てくるんだ。そして俺は、目の前にいる奴をどうしても殺したくなる衝動が抑えきれないんだよ!」
ツメヤは僕との距離を一気に詰め、鋭い爪で攻撃してくる。
僕は影の剣を生み出し、その爪を斬り落とした。
「そんな簡単に殺されたりはしないよ」
「いいねぇ!実にいい!俺をもっと楽しませてから死んでくれ!」
僕が斬り落としたはずの爪。
しかし――
ツメヤは再び異能を使い、切られた爪を伸ばしてくる。
「危な!」
僕はとっさに後ろへ飛び退く。
「俺の爪を切ったところでよぉ。俺の異能の効果がなくなるわけじゃないんだぜ!」
ツメヤは笑いながら、さらに鋭く伸びた爪を僕へ向ける。




