喧嘩屋シムラ・ナサギ
「いや、ちょっとシムラに用事があって」
「あたいに用事?一体なんだい?まさか一目惚れとか?」
してないよ。
なんで急にそうなるんだよ。
「違うよ。用事っていうのは……」
僕がシムラに話そうとした、その時だった。
地面に倒れていた男の一人が、シムラの足を掴む。
「この……喧嘩……屋……がぁ……」
男が「喧嘩屋」と言った瞬間、シムラは男の背中に拳を叩き込んだ。
「がっ!」
「あたいは、喧嘩屋じゃない!あたいはただ強くなりたいだけ!喧嘩が大好きなわけじゃないの!だから喧嘩屋なんて呼ばないで!」
シムラは何度も男の背中を殴り、男が完全に気絶すると、何事もなかったかのように僕へ話しかけてきた。
「ツブキ。あたいを喧嘩屋とは呼ばないでほしいの。あたいは強くなりたいだけで、その過程として戦っているだけ。あたいには目標があるから、そのために強くならないとダメなの。それに今回の勇者選別も、あたいには好都合なんだ」
好都合?
まさか……ステイティア王に近づいて、殺そうとか考えてるんじゃ……。
「あたいは、自分より強い男と結婚するのが夢なの」
「……え?」
「だから、あたいが弱いと将来の旦那様に迷惑をかけちゃうでしょ? あたいは強くないとダメなの。それに、喧嘩屋なんてあだ名が結婚してからも広まってたら不名誉じゃない?」
「な、なるほど……」
強い男と結婚、ねぇ。
まあ、わかった。
でも、それなら勇者選別が好都合っていうのは……。
「ま、まさか勇者になって有名になって、未来の旦那を探すために勇者になりたいとかじゃないよね?」
「え? そうだけど?」
マジかよ。
「あたいが強い勇者になれば、自ずと強い男が寄ってくると思って」
そんな不純な理由で勇者になろうとしてるのか……。
まあ、多分シムラもステイティア王を狙っている奴じゃないな。
だって……なんか、理由がアホすぎる。
「あたいはとりあえず商店で武器とか見てくるけど、あんたも来るかい?」
「いや、いいかな。今日はなんか疲れたし、もう宿で休むよ」
「そう? あたいに用があったっていうのは、もういいの?」
シムラに聞かれ、僕は首を縦に振る。
「うん。もう大丈夫」
「そうかい。じゃあ、またね」
シムラは商店がある方へ向かっていき、僕は宿へ戻ることにした。
カゲヤのことも調べたかったけど、シムラを探すだけでかなり疲れた。
それに、慣れない土地を歩き回ったせいか、別の意味でも疲れている。
宿に着いたら、部屋に戻ってすぐに休もう。
僕はゆっくりと宿へ戻り、部屋に入る。
そしてベッドにへたり込み、そのままごろごろしながら、疲れた頭を少しだけ働かせる。
今日はアゲルとシムラについて調べることができた。
明日はスカイスとカゲヤについて、ちゃんと調べようかな。
……そういえば、僕は急にここへ連れてこられたから、ナグモたちには何も伝えてない。
大丈夫かな?
そんなことを考えながら、僕はベッドに横になった。




