調査
「助かる。ツブキ。では、空間から王の間に戻るぞ」
ステイティア王がそう言うと、指をパチンと鳴らした。
すると、ガーと戦った空間から一瞬にして景色が変わり、僕たちは王の間へと戻っていた。
「ツブキ。ガーよ。お前たち二人に、余の命を狙う不届き者を調べることを命ずる」
ステイティア王は僕たちを見ながら続ける。
「余は、その者が勇者候補の中にいると思っている。だが、そやつに仲間がいる可能性もある」
王の表情が少し険しくなる。
「ガーは余の護衛から少し離れ、城の外――中央ステイティアの城下を歩き回り、怪しい者がいないか調べてほしい。そしてツブキには、候補者の中に余を狙う者がいないか調査を頼む」
「「はい!」」
僕とガーは同時に返事をした。
ステイティア王との話を終えると、僕とガーは王の間を出た。
「ツブキ殿。俺はどう動けばいい?」
「どう動けばいいって……ステイティア王に言われただろ。城下を調査しろって」
僕がそう言うと、ガーは首を横に振った。
「確かに主人はそう言った。だが、正直なところ、護衛の中にステイティア王を狙う不届き者がいる可能性もある。だから、多少は違う行動をしないといけない」
「なるほど……」
確かに、それは一理ある。でも――。
「そんなこと言ったら、お前はなんで護衛から外れるんだ?」
「それも敵を油断させるためだ」
ガーは少し声を落として言った。
「それと……お前には言っておこう。俺も異能持ちだ」
「異能持ち?」
「俺の異能は、戦闘面ではあまり役に立たん。だが、護衛としては非常に役に立つ」
「どんな異能なんだ?」
「俺の異能は――対象の危機感知だ」
「危機感知……」
対象の危機感知ということは、ステイティア王にその異能を使っているということか?
「俺の危機感知にかかれば、俺が信頼する部下が王を守る手筈になっている。だから大丈夫だ」
ガーはそう言うと、僕の目を見た。
「ツブキ殿。俺の異能を説明した上で、もう一度聞く。お前はどう動く?」
「どう動くって言われてもな……」
僕は少し考える。中央ステイティアについて、ほとんど何も知らない。
城下の調査なら、ガーのほうが適任だろう。
だったら僕は――。
「僕は他の候補者を調べる。ガーは城下の見回り。それと、王に近づく者がいないか調べる。それでいいんじゃないか?」
「ツブキ殿がそう言うなら、それでいこう」
ガーは頷いた。
「では、今日は解散としようではないか」
「ああ。また何か分かったら教えてくれ」
ガーはそう言うと、僕とは反対方向へ歩いていった。
僕はその背中を見送ったあと、城を出ることにした。
すると、城門の前で見覚えのある人物が待っていた。
僕を家まで迎えに来てくれた騎士――ホーリィだ。
「ツブキ。お疲れ様」
「お疲れ。何か用かな?」
「ステイティア王から、ツブキは勇者候補たちが泊まっている宿を知らないだろうから、案内するように言われたの」
ホーリィはそう言うと、僕に背を向ける。
「だから、私についてきて」
「分かった」
僕はホーリィについていく。
歩くこと数分。
僕の目の前に、大きな宿が現れた。
「ここが……?」
「そう。ここに他の候補者たちも泊まっている」
ホーリィは宿を見上げながら言った。
「仲良くしてくれ」
僕は宿を見つめる。
ここに、他の勇者候補たちがいる。
そして、その中には――ステイティア王の命を狙っている者がいるかもしれない。
僕は少しだけ警戒しながら、宿へと足を踏み入れた。




