王の護衛
「こやつの名はガー・マンガン。余の護衛だ。余の護衛は四人いるが、そのうちの一人である」
ステイティア王は、隣に現れた金髪の男――ガーについて説明する。
ガーは両手斧を片手に一本ずつ持っていた。
「主人。俺はやつを殺せばいいのか?」
「違うぞ、ガー。お前には、やつと余の命を狙う輩を探してもらう」
「なぜ俺なんですか? 他の護衛の方が……」
「余はお前だから頼みたいのだ。ダメか?ガーよ」
ステイティア王がそう言うと、ガーは背負っていた斧を戻した。
「……主人が言うのであれば従います。ですが、どこぞの馬の骨かもわからないやつを信用できません」
「そうであるな。では――」
ステイティア王が指をパチンと鳴らす。
その瞬間、僕とステイティア王、そしてガーの三人は、別の空間へと転移した。
これは……転移の異能?
ステイティア王は、そんなに強力な異能まで持っているのか?
「これは王の間からつながる、王族にだけ伝わる別空間。この空間へ転移できるのは、王の血族、または王となった者だけだ。余の異能ではない」
ステイティア王はそう説明する。
「余は異能持ちではあるが、便利屋のような異能ではないのでな」
「……」
王の血族にしか使えない空間。そんなものが存在するのか。
僕が考えていると、ガーが両手斧を手に取った。
「主人よ。感謝します」
「では貴様。やろうか」
ガーが僕へと接近してくる。
両手斧を片手で軽々と振り回すその姿からは、明らかな殺気が感じられた。
「っ!」
僕は咄嗟に影の異能を使い、ガーを拘束する。
「これは……貴様の異能か?」
「そうだよ。僕の異能」
僕が答えた、その直後――
ガーは拘束された身体を無理やり動かした。
そして――
僕の影による拘束が、力づくで引きちぎられる。
「……え?」
「この程度、話にならん」
ガーは僕を睨みつける。
「王に死んで詫びろ。自分はザコでした、と」
「まじかよ……」
ガーが両手斧を振り下ろす。
「っ!」
僕は間一髪で攻撃を避ける。
そして、距離を取るために影の異能を使った。
「影の兵士――剣士!」
僕の影から、シャドウトルーパー――影の剣士が姿を現す。
影の剣士はガーの前に立ち、僕を守るように剣を構えた。
「邪魔だ!」
ガーが斧を振るう。
影の剣士が斧を受け止める。
だが――
「なっ……!」
影の剣士の身体が、徐々に押し込まれていく。
そして次の瞬間。
影の剣士は力で押し切られ、一瞬で吹き飛ばされた。
「異能に頼りきりでは、俺には勝てんぞ」
ガーは斧を構え直す。
「どうする!」
確かに、このままじゃガーには勝てない。
下手をすれば……殺される。
ガーが両手斧を振り上げる。
「死ねぃ!」
「まだ死ぬ気はないよ!」
ガーが斧を振り下ろす。
避ける時間はない。
なら――
これしかない。
まだ未完成の技だけど、やるしかない。
僕の影の異能は、本来なら影の中に入るための異能だ。
召喚は、たまたま使えるようになった力にすぎない。
それに――僕には、あの魔法がある。
死ぬような思い。
いや、ほとんど死んだと思うほどの痛みを感じる。
それでも――
「これしかないよね!」
僕は、ガーの攻撃をまともに受けた。
「これで護衛、そして王を狙う不遜なやつは――」
ガーが斧をしまう。
その瞬間。
「ふー……痛かった」
「!?」
ガーが振り返る。
しかし、そこに僕の姿はない。
僕はガーの油断した隙に――
ガーの影の中へと潜り込んでいた。




