王を狙うもの
「安心しなさい。そいつは死んでいない。ただ、騎士団に復帰できるかどうかはわからないけどね。命ってのは一つしかない。簡単に奪うものではないよ」
アゲルはそれだけ言うと、訓練場から出ていった。
ランラは、鎧を破壊され、皮膚が焼けただれているゴウに近づく。
そして、心臓のある位置に耳を近づけた。
「心臓は……動いている。ならば」
ランラはゴウを背負い、訓練場から出ていく。
「ステイティア王。今は人命救助を優先しますので、失礼いたします」
そう言い残し、ランラはゴウを背負ったまま訓練場を後にした。
「二人の強さがこれだけあるなら、他の者たちも大丈夫であろう。今日はこれにて解散とする。勇者候補たちには、このステイティア城付近にある宿に泊まってもらう。それと、ツブキ・ドゥン。お前は残るように。他の四人の案内は騎士たちに任せる」
ステイティア王がそう言うと、スカイスたちには一人ずつ騎士がついた。
そして、彼らは訓練場から出ていった。
僕とステイティア王は、スカイスたちが出てからしばらくして、王の間へと戻った。
「お前だけ別に呼んですまんな。気を楽にしてくれ」
「は、はぁ。王様がそう言うのであれば」
僕はステイティア王に言われたとおり、肩の力を抜いた。
ステイティア王は一息ついた後、僕に言う。
「……すまなかったな。勇者候補に入れてしまって」
「え?」
確かに、勇者候補に選ばれたのは急な話だった。
でも、なんで僕にだけそんなことを言うんだ?
「なんで僕だけに?」
「勇者が必要なのは本当だ。だが、実はな。余は狙われているんだ」
え、ステイティア王が狙われている?
でも、それと勇者選別に何の関係があるんだ?
「今回集めた勇者候補たちの中に、余を狙う者がおるかもしれんのだ」
「そうなんですか? でも、集めた人たちの情報は……」
「調べはした。だが、誰が余の命を狙っているかまではわからん。そして、お前以外の四人には疑いがある」
「僕以外の四人に……?」
「お前はサランドの紹介だからな。疑ってはいない」
サランドさんとは仲がいいのかな?
僕をそこまで信頼しているということは。
「無論、あいつが極道なことは知っておる。だが、あいつは仁義をおもんじる極道だ。だから余は、あいつを信頼しておる」
ステイティア王は、僕をまっすぐ見つめる。
「そして、そんなあいつが勧めてきたのがお前だ。余はそれで、お前を勇者候補にねじ込んだ」
「……」
「お前には、他の者たちを調べてほしいのだ」
「僕が……ですか?」
「お前一人だけに行動はさせぬ。こやつをつけよう」
ステイティア王が手を叩く。
すると、王の隣に一人の男が現れた。
黄色の髪が特徴的な男だった。背中には、両手斧を二つ背負っている。上半身は白いTシャツに土色の胸当て。
下半身は、膝の部分が破れた黒い長ズボンを履いていた。
男はステイティア王の前に立つと、深く頭を下げる。
「お呼びですか。我が主人」




