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勇者パーティーを追放された影の異能使い  作者: アークマ
第三章 勇者選別編

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商人アゲル・カスケル

「そんな指を鳴らしたごときじゃ、自分は止まらないっすよ」


 ゴウがそう言った直後、アゲルが指を鳴らす。

 すると、アゲルとゴウの二人だけが、訓練場から切り離されたように消えた。


「なっ……!」

「安心してよ。これは私の異能だ。私の異能は、対象と私だけの空間を作り出す」


 アゲルはそう言うと、ゴウを見つめる。


「さて、それでは私の異能について説明しよう。まずはこれを提示する」


 アゲルがそう言うと、ゴウの目の前に三つの文字が浮かび上がった。


「魔力喪失、筋力ダウン、異能使用不可? なんっすか、これ?」

「どれか一つを選べ。取引だ」

「取引っすか?」


 ゴウが聞き返すと、アゲルは片腕を前へと伸ばす。


「そうだ。お前が選んだものによって、私が支払う代償が変わる。それが私の異能――『代償取引』だ」

「なるほど……」


 ゴウは三つの選択肢を見ながら、少し考える。   

 そしてーー


「それなら、この『異能使用不可』を選ぶっす。自分には異能なんてないっすから」


 ゴウがそう言うと、アゲルは自分の片腕に表示された代償を確認する。


「……これは、逆にありがたいな」


 アゲルは笑みを浮かべる。


「それでは、代償を支払おう。お前の異能は――今後、目覚めることはない。それが私の支払う代償だ」


 アゲルがそう言った瞬間、二人を隔てていた空間が消える。

 そして二人は、再び訓練場へと戻った。


「異能使用不可がなんっすか! 自分には……」


 ゴウがそう言った直後――


「……っ?」


 突然、ゴウの身体がふらついた。


「な……?」


 そのままゴウは、アゲルの目の前で地面に倒れ込む。


「な、なんっすか……。体が……思うように動かないっす……」

「私の異能、『代償取引』。それは、お前の中にある可能性すらも対象にする」


 アゲルは倒れたゴウを見下ろしながら説明する。


「今は身体能力に優れていようと、いずれ異能が目覚めたり、魔法が使えるようになったりする可能性はある。あくまで『可能性』だがな」


 アゲルは淡々と続ける。


「そして私は、その可能性を含めてお前の異能を奪った。だからこそ、何かが抜け落ちたような感覚が、お前の身体に発生しているのだ」

「そ、そんな……」


 ゴウが苦しそうに身体を起こそうとする。

 しかし、思うように身体が動かない。

 そんなゴウを見ながら、アゲルは懐から一本のナイフを取り出した。


「さて……説明はこれくらいでいいだろう」


 アゲルはナイフをゴウの胸部へ向け――そのまま突き刺す。


「ぐっ!」

「自分は鎧を着てるっす! そんな小さなナイフごときで――」

「ああ、大丈夫」


 アゲルは平然と答える。


「これ、爆発するやつだから」

「……は?」


 次の瞬間――

 ゴウを中心に、大きな爆発が起きた。

 アゲルは爆発が起きると同時に、一目散にその場から離れる。

 爆発による熱風が訓練場を駆け抜け、周囲にいた者たちにも衝撃が襲いかかる。


「くっ……!」


 ランラもある程度の距離を取っていたが、それでも爆風によって身体を吹き飛ばされる。


「ぐっ……!」


 地面に転がったランラは、身体の痛みに顔をしかめる。

 やがて爆発によって立ち込めていた煙が晴れていく。


「……!」


 ランラは目を見開いた。

 そこには、ある程度ゴウから距離を取った場所に立つアゲルの姿があった。


 しかも――無傷。


「そんな……。なんで無傷なんだ?」


 ランラが驚きの声を漏らす。

 対してアゲルは、何事もなかったかのように服についた埃をはらった。


「私は商人なんでね。ちゃんと後のことは考えているのさ」


 そして、ランラへと笑みを向ける。


「そうでないと、商売なんてできんだろう?」

「商売人がこんなことできてたまるかよ……!」


 ランラは叫ぶ。

 そして、爆発の中心へと視線を向ける。

 そこには――皮膚が焼けただれ、見るからに重傷を負ったゴウが倒れていた。


「私の騎士団の……しかも、もっと強くなれば騎士団のエースになるはずだったゴウが……」

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