勇者パーティー
ツブキをパーティーから追放した後、勇者であるディアモは、使える冒険者を一人探してパーティーに加入させることにした。
ディアモは新しく加入した冒険者に依頼を受けさせると、アスタ、ライトとそれぞれで、別行動を取った。
一方、僧侶のカイナは教会へ向かい、祈りを捧げていた。
新しく勇者パーティーに加入した男は、冒険者ギルドで依頼を受けた後、ディアモを探して王都の娯楽エリアへ向かった。
しばらく探していると、酒を飲みながら遊んでいるディアモを見つける。
「ディアモさん! 依頼を受けてきました!」
男は依頼書をディアモに差し出した。
ディアモは依頼書を受け取ると、内容を確認する。だがディアモは依頼書をみて男を睨む。
「おい、お前。こんな依頼を受けてきて、俺を馬鹿にしているのか?」
「え? いや、Aランクの依頼ですよ? ちゃんとAランク魔物の討伐依頼です」
「こんな魔物がAランクなわけないだろ。せいぜいBランクかCランクの魔物だ」
「で、ですが、ギルドではAランクと――」
「全く使えない奴だな」
ディアモは男の言葉を遮る。
「前にいたツブキのほうがまだ優秀だったぞ。冒険者としてはゴミみたいな奴だったがな」
そう言うと、ディアモは依頼書を地面へ投げ捨てた。
「こんな依頼を受けてくる奴なんて、俺たちのパーティーには必要ない」
「……」
男は何も言い返さず、地面に落ちた依頼書を拾い上げる。そして、ディアモの顔を見る。
「……分かりました」
そして、そのまま勇者パーティーを抜けていった。ディアモは、そんな男を気にする様子もなかった。
「次を探せばいいだけだ」
そうしてディアモは、すぐに新たな冒険者をパーティーへ加入させた。
今度の冒険者は、ディアモのお眼鏡にかなう依頼を受けることができた。
その依頼は、王都から少し離れた場所にあるアスガイヤ森林に出現したAランク魔物――ギガマンティスの討伐だった。
ギガマンティス。巨大な体を持つ虫型の魔物で、両腕にある大きな鎌のような手を使い、敵を切り裂いてくる。
本来なら、いつものディアモたちなら倒せる相手だった。だが、ツブキを追放してから初めて受けた本格的な依頼は、最悪の結果に終わった。
「グオオオオオッ!」
「くそっ! こいつ、強すぎる!」
ギガマンティスの巨大な鎌が振り下ろされる。ディアモたちは必死に攻撃するが、思うように戦えない。
「撤退するぞ!」
ディアモの判断で、三人はアスガイヤ森林から逃げ出した。
今回の依頼は――失敗だった。
森から離れたところで、ディアモは新しく仲間にした冒険者へ怒鳴りつける。
「このクズ野郎!」
「えっ……?」
「お前がポーションを持ってこないし、マジックポーションも用意してないから俺たちが勝てなかったじゃないか!」
「でも、必要な道具は――」
「言い訳するな!」
ディアモは新しく仲間にした冒険者を怒鳴りつけると、アスタとライトも、その冒険者を責め始めた。
「本当に使えない奴ね」
「お前みたいな奴が冒険者なんてやってるのがおかしいだろ」
「……」
三人から浴びせられる言葉に、冒険者はうつむいた。
「……もう、あなたたちとはやっていけません」
その冒険者も、ディアモ達からの罵声に嫌気がさし、勇者パーティーを抜けていった。
だが、ディアモたちは気にしなかった。自分たちが悪いとは、少しも思っていなかったからだ。
「また探せばいいだけだ」
ディアモはそう言った。だが、この出来事は、王都の冒険者たちの間ですぐに広まることになる。
勇者パーティーに入った冒険者が、どんな扱いを受けたのか。
それを知った冒険者たちは、次第に勇者パーティーへの加入を避けるようになった。
そして、この日を境に、勇者パーティーに入ろうとする冒険者は、一人も現れなくなった。
◇
僕、ツブキはクロウルフを倒した後、ミサキと一緒に冒険者ギルドへ戻った。
受付で依頼達成の報告をすると、その日はそこで解散した。
「今日はありがとう、ツブキさん!」
「ううん。僕も助かったよ。また明日から頑張ろう」
「はい!」
そして次の日から、僕はミサキと一緒にしばらく依頼をこなすことになった。
最初に受けたクロウルフの討伐依頼以外は、ミサキのレベルに合わせて、比較的ランクの低い依頼を受けることにした。
まあ、ミサキに合わせたと言っても、正直なところ、僕もこれくらいの依頼から始めたかったんだけどね。
それから僕たちは、毎日のように依頼をこなしていった。
薬草の採取。魔物の討伐。荷物の運搬などなど。
簡単な依頼を一つずつこなしながら、僕たちは少しずつ冒険者としての経験を積んでいった。
そんな生活を続けて、一ヶ月が経った頃、僕は再び、ギルドマスターのサランドさんから呼び出された。
「ツブキ。ギルドマスター室まで来てくれ」
「はい」
僕は言われた通り、ギルドマスター室へ向かった。部屋の前まで来ると、扉をノックする。
コンコン。
「ギルドマスター。僕です。ツブキです」
「ツブキか。入ってくれ」
サランドさんの許可をもらい、僕はゆっくりと扉を開けた。
「失礼します」
こうして僕は、再びギルドマスター室へ足を踏み入れた。
――サランドさんはいったい、僕に何の用があるんだろう?




