初依頼
依頼を受けて魔物や魔獣が住む場所は、ダンジョンと呼ばれている。そして今回、僕たちがやってきた悪夢の森は、王都の近くにある小さな森だった。
こんな小さな森にクロウルフがいるなんて、正直信じられない。でも、依頼が出ているってことは、本当にいるんだろうな。
僕はミサキと合流した後、森の中を数分ほど探索していると、体毛が黒いのが特徴的な魔獣、クロウルフを見つけた。
まさか、本当にいるなんて。
僕が腰に装備していた剣を抜こうとした、その瞬間。
「せやぁぁぁ!」
ミサキが背中に装備していた長剣を抜き、クロウルフへ斬りかかった。
「ガゥ!」
しかし、クロウルフはミサキの攻撃を素早く避けた後、そのままミサキへ体当たりを仕掛けた。
「うぐっ!」
ミサキの身体が大きく吹き飛ばされる。
やっぱりクロウルフは知性があるから厄介だな。ミサキが倒せるなら、僕は手を出さないつもりだったけど仕方ないか。
僕は一瞬でクロウルフの背後へ回り込み、剣を振るう。
「ガッ!」
剣がクロウルフの背中を斬り裂いた。
「ありゃ? 浅かったかな?」
僕はクロウルフから距離を取るとクロウルフは、こちらを睨みながら警戒するように身構えた。
一回斬られただけで、そこまで警戒するか。
「あんまり時間はかけたくないんだけどな」
僕は手を前に出し、クロウルフへ向ける。
すると、クロウルフは僕の手を噛み砕こうと、一気に飛びかかってきた。
「遅いかな」
僕は指をパチンと鳴らす。
次の瞬間――
「ガッ……!」
クロウルフが僕のすぐ近くまで迫ったところで、突然その動きを止め、口から大量の血を吐き出す。
ドサッ。
クロウルフはそのまま地面へ倒れた。
「す、すごい! ツブキ、すごいですね!」
ミサキが僕のところへ喜びながら近づいてきた。
でも、クロウルフを討伐したことに対し、僕にはそこまで驚くことなのか分からなかった。
勇者パーティーにいた頃は、これくらい当たり前のことだったからだ。
「ありがとう。クロウルフを倒しただけで、そんなに褒められるとは思わなかったよ」
「だって、私には倒せませんから! 今のって異能ですか?」
「そうだね。僕の異能は、影を使う異能でね」
僕は自分の異能について説明する。
「相手の影へ瞬時に移動したり、相手の身体の中に影を入れたりできるんだ。それで、身体の中をめちゃくちゃにしたりとかね」
「身体の中に……?」
ミサキは驚いたように目を見開く。こんな異能を使う冒険者がいるなんて、普通は聞いたことがないだろう。僕が思う範囲でだけど。
勇者パーティーにいた冒険者の中でも、僕の異能を知っている人は少なかった。
「勇者パーティーの冒険者の方は、ディアモさんがすごく強いって聞いたくらいでしたから」
ミサキは少し嬉しそうに話を続ける。
「私は、そのディアモさんに憧れて冒険者を始めたんです」
「ま、まあ、よく聞く話かな」
勇者に憧れて冒険者になる人は珍しくない。
ディアモは確かに強い。勇者と呼ばれても問題ないくらいには。
……ただなぁ。性格、というか行動に難があるからなぁ。
「きっかけはどうあれ、そう思うなら強くならないとね」
「はい!」
ミサキは元気よく返事をした。
その後、僕とミサキはクロウルフの皮を少しだけ剥ぎ取る。
そして、そのままスティティアの冒険者ギルドへ向かった。




