狙われたミサキ
僕はザドゥルに近づき、ミサキのことについて聞く。
「なんでミサキを狙ったの?」
「ふっ。紳士は仲間を売らない。ゆえに情報は吐かない」
ザドゥルはそう言って、不敵な笑みを浮かべる。
僕は自分の剣を抜き、ザドゥルの足を軽く刺した。
「ぐっ!」
「僕もあんまりこんなことはしたくない。でも、ミサキが狙われているなら守らないとダメなんだよ。昇格試験の試験官としてね」
僕がそう言うと、ザドゥルは「ふっ」と笑った。
「ものは言いようというやつだな。お前は紳士的ではない。だから絶対に教えない。殺すなら、さっさと殺せ」
ザドゥルはそう言い放つ。でも、このままじゃ埒が明かない。
仕方がないので、僕はザドゥルを気絶させ、拘束することにした。
そして一旦、持ち場へ戻る。
僕はグラウがいる試験官の待機場所へ向かった。
そこにはグラウとミサキがいた。二人の近くには黄色いスーツを着た男が立っていた。
「ミサキ!」
「ツブキさん!?このナンパ野郎、うざいんです!」
ミサキは黄色いスーツを着た男を指差す。すると黄色いスーツの男は、呆れたような表情を浮かべた。
「ナンパなんてしていませんよ。私はあなたを攫いに来たんですよ、ミサキさん」
「なんで私の名前知ってるの!? きもい!」
初対面でいきなり「キモい」はきついでしょ。
……いや、でもあの黄色いスーツの男、僕も初めて見るよね?
「私はバルトスといいます。あなたを攫い、有効活用させていただきたく」
バルトスは頭を下げ、ミサキに言う。
「有効活用とか、私は物じゃないから!そんなこと言われたくないわ!」
ミサキはバルトスに斬りかかった。
しかし、バルトスはミサキの攻撃を軽々と避ける。
そしてミサキの腹部へ蹴りを入れようとした、その瞬間――。
グラウが二人の間に入り、バルトスの蹴りを片手で受け止めた。
「!?」
「めんどいから、やめてくれないか?俺、今日ここに来てるだけでもダリィのに、これ以上ダリィことしないでくれよ」
グラウはあくびをしながら言う。
すると、グラウの真横を、斬撃のようなものが突然飛んできた。
「お前もこれで終わ――」
「あらよっと」
グラウは軽い調子で身体を動かし、飛んできた斬撃を避ける。
「なっ……!」
「俺がお前如きに負けると?」
グラウはバルトスを見ながら、面倒くさそうに言う。
「俺は強すぎてな。格下とやんのはマジでだるいの」
グラウは一度、ため息を吐く。
「俺の心を震わせてくれたのは、ギルドマスターのサランドだけだ。だから俺は、だるくてもあの人に従うの。……だるくてもな」
そう言うと、グラウはバルトスの攻撃を避け、その背中に蹴りを叩き込んだ。
「ぐっ!」
「大人しく寝ていろ。でないと俺は、お前を捕らえるか、殺さないといけなくなる」
「この私を、この程度で殺せると?」
バルトスは立ち上がり、不気味な笑みを浮かべる。
「そうですか、そうですか。私のことを舐めていますね」
バルトスは指をパチン、パチンと何度も鳴らした。
すると、空中に無数の斬撃が現れる。
まるで嵐のように、斬撃が周囲を埋め尽くしていく。
「さあ、避けられますか?」
バルトスが笑った。
次の瞬間、無数の斬撃が、一斉にグラウへ襲いかかった。




