Eランク昇格試験
僕、ツブキは今、Eランク昇格試験の試験官として、南ステイティアにある初心者向けの場所――悪夢の森に来ていた。
今回の試験内容は、悪夢の森に生息する魔物、カラデウスの討伐だ。
カラデウスは、体の大きなネズミのような魔物で、Fランク冒険者にとっては少し手強い相手らしい。
倒した証拠として、カラデウスの体の一部を試験官に見せれば合格となる。
そして、僕以外にももう一人、特例ランクの冒険者が試験官を務めていた。
「あー。ダリィ。働きたくねー」
僕の隣に立っている特例ランクの冒険者が、とんでもないことを言う。
見た目は、上半身に黒いTシャツ。下半身には、膝に穴の開いたダメージジーンズを履いている。靴は黒くて長いブーツ。
そして、背中には黒い大剣を背負っていた。
「なぁ。あんたもそう思わねぇか? えーと……」
「ツブキです。あなたは?」
「わりぃ、わりぃ。俺はグラウ。グラウ・スーだ。よろしく頼む。ちなみに俺の将来の夢は、働かなくても生きていける生活をすることだ」
黒い大剣を装備している男、グラウは僕にそう言った。
この人、少しズレているというか、何というか……。一緒に生活する人は苦労しそうだな。
「ま、俺らは気長に待っていればいいさ。巡回も適当でいい。カラデウスはそんなに強い魔物じゃねぇからな。Fランク冒険者には少し強いかもしれねぇが」
グラウはそう言うと、森の中を眺める。
僕もミサキの護衛を兼ねて、悪夢の森を巡回することにした。
ミサキなら大丈夫だと思う。だけど、サング組の奴らが襲ってくる可能性もあるからな。
念のため、近くにいることにしておこう。
しばらく悪夢の森を巡回していると、一人の冒険者が紫色のスーツを着た男と話をしているのが見えた。
紫色のスーツを着た男は、片目にゴーグルのようなものをつけている。
そして、そのゴーグルのような目は、前後に出たり引っ込んだりしていた。
「君。ミサキという女の子を知らないかな?」
「え、おじさん。今話しかけないでください。大事な昇格試験の最中なんですから」
冒険者がそう答えた。
次の瞬間――。
紫色のスーツを着た男が、冒険者の首を斬り落とした。
「人をいきなりおじさん呼びとは失礼ですね。そんな奴に首はいりませーん」
……何だ、こいつ。
僕は紫色のスーツを着た男の前に立ち、剣を構える。
こいつは今、冒険者にミサキのことを聞いていた。かなり怪しい奴だ。
「ん、んんー。最高の幸福タイムを邪魔する君は誰かなぁ?」
「僕はツブキ。お前こそ何者だ?」
「私はザドゥル・ルーだ。素敵な紳士だよ。さて、君。ミサキという女は知っているかな?」
僕がそう答えると、ザドゥルは恍惚とした笑みを浮かべた。
「あぁ。またおばかな人が来てしまった。私が紳士的に殺してあげよう。私はサング組では『仏』とも呼ばれているんだよ」
「そうか。なら、ミサキという人のことは見逃してほしいのだが」
僕がそう言うと、ザドゥルは僕に近づき、突然殴りかかってきた。
「それはできない相談です!」
僕はザドゥルの攻撃をかわす。
だが、ザドゥルの手のひらから、鋭い剣のようなものが生えていた。




