チェイサーとブンドル
「これでお前が我に勝てる要素はなくなった。お前が魔法を使えないことは、よくわかっている」
ブンドルがチェイサーに言うと、チェイサーは斬られた槍を捨てる。
「槍がなくても戦えるさ。魔法が使えないわけじゃない。ただな――」
チェイサーは霧を発生させる。
次の瞬間、チェイサーは霧に紛れてブンドルの背後現れ、その腹部を殴りつけた。
「がはっ!」
「僕が使えないのは、火属性とか、そういう魔法だよ。身体能力を強化する魔法なら使える。まあ、あんまり長時間は持たないけどね」
チェイサーがそう言うと、ブンドルは腹部を押さえながらチェイサーを睨みつける。
「チェイサー……お前は本当に……ほんとーに目障りなやつだな。お前だけは、兄貴分として認めたくないくらいに目障りだ」
「実際、お前からすれば兄貴分だろ。一年も違うんだから」
「あ?我からすれば、てめぇなんてあんまり変わらねぇんだよ!」
ブンドルはチェイサーに向かって剣を振るう。
だが、その剣は空を切った。
チェイサーはブンドルが剣を振り切った直後の隙を狙い、再びその身体を殴りつける。
「ぐっ!」
「どうした?僕の異能『霧』はよくわかっているんだろ?対応も簡単なんだろ?」
「この……野郎が!」
ブンドルは再びチェイサーに剣を振るう。
しかし、またしてもチェイサーには当たらない。
「ならば、我の異能で――」
「やらせないよ」
チェイサーは瞬時にブンドルの真横へ移動すると、腹部に強烈な蹴りを叩き込んだ。
「あ、がっ!」
「お前の異能は脳筋だけど厄介だ。だから、使わせはしないよ」
「チェイサー……チェイサーァァァァ!」
ブンドルは怒りに任せて何度もチェイサーに攻撃を仕掛ける。
だが、その攻撃はことごとくかわされる。
「ぐあっ!」
チェイサーの蹴りがブンドルを捉え、その身体を地面へと叩きつけた。
「僕はここまでにしといてやるよ。お前はちゃんと、けじめをつけないとだめだからね」
「けじめを、だと?この我がか?我がけじめをつける相手などおらぬ!いい加減なことを――」
ブンドルが言い終えるよりも早く――
何かがブンドルの左肩を貫いた。
「がっ!」
「チェイサー。そいつをそこで眠らせといて。私はさっさとこいつをやるから」
セツはバルトスに銃を向けながら、チェイサーに言う。
「わかった」
チェイサーはブンドルを地面に押さえつけ、その両手両足を拘束する。
「じゃあ、こっちも早く済ませましょう」
セツがバルトスに言うと、バルトスは少し考えた後――
「ブンドルの兄貴がやられたなら、帰ろうか。私は自殺願望はないからな」
「逃すとでも?」
セツが銃の引き金を引こうとした、その瞬間。
セツの隣を、斬撃のようなものが通り過ぎる。
「!」
セツはとっさに銃を向け、その斬撃を撃ち抜いた。
斬撃は霧散し、消えていく。
「それじゃ、私は失礼するよ。ブンドルの兄貴は好きにするといい」
バルトスはそう言い残す。
そして――いつの間にか、その場から姿を消していた。




