チェイサーとセツ
「お前が、お前が姉さんを! 姉さんの名を口に出すな!」
セツは銃をチェイサーの腕に向けて発砲した。
「っぐ!」
チェイサーは苦痛に顔を歪め、撃たれた腕を押さえる。
「セツ!」
サランドはセツを叱ろうとした。
しかし、チェイサーの腕からは血が出ていない。
「血は出ないわ。ゴム弾をかなり痛くしたものだから、それなりに痛いとは思うけど」
「っくぅ……。これで、僕のことを許す気になった?」
「許さないけど、今はそれで勘弁してあげる。私はブンドルを殺したいから」
セツがそう言うと、サランドは冷や汗をかきながら口を開いた。
「あまり驚かすようなことをするな。本当にびっくりしたぞ」
「ごめんなさい。敵が姉さんの名前を出すと、虫酸が走るの。でも、こいつはブンドルを呼び出すために利用できる。だから、殺したりはしないわ」
セツが答えると、サランドは「ふっ」と軽く笑った。そして、チェイサーに向き直る。
「ここにいる私たちは、お前たちサング組を許すことはない。だが、利用価値があるなら利用する。それだけは言っておく。私たちに仲間意識など抱くなよ」
「そ、そこまで甘っちょろくはないよ。アマイを殺した時点で、もう僕も覚悟はできてる。今日ここに来たのも、死ぬ気はないけど……半分は、殺されないことを願ってのことだからね」
チェイサーは、サランドたちにそう告げた。
こうして、サランドたちは三日後にブンドルを奇襲するための作戦を練り始めた。
作戦の内容を詰め、何度も考え直し、試行錯誤を繰り返しているうちに、三日はあっという間に過ぎていった。
そして、ブンドル奇襲作戦の決行日。
ギルドマスターの部屋には、アスベル、ナグモ、そしてサランドが集まっていた。
「サランドさん。何で俺たちはギルドマスター室に呼ばれたんですか?」
アスベルが尋ねると、サランドは二人に説明した。
「セツの復讐が、そう簡単にはいかないことを分かってもらわなければならない。だから、お前たち二人を先にここへ呼んだ。そして、チェイサーとセツには、ブンドルを呼び出す場所へ向かってもらった」
サランドがそう言うと、アスベルとナグモはギルドマスター室から出ようとした。
「待て待て、二人とも」
「なぜです、組長!セツだけに行かせるなんて!」
アスベルは声を荒らげた。
すると、サランドはアスベルの肩を軽く叩いた。
「この場所で『組長』はやめろ。私はギルドマスターなんだ。ギルドマスターか、サランドさんと呼べと何回言えば分かるのかな?」
「す、すいません。ですが、セツは……」
「セツなら大丈夫だ。あの子はそんなにやわじゃない。それに、魔法も使えるしな。ナグモ、お前はこいつを処理しておいてくれ」
サランドは、ギルドマスター室に吊るされていたギザルドを指差した。
ナグモはギザルドを地面に落とすと、部屋に置かれていた大きな布でその体を包んだ。
そのままギザルドを隠し、アスベルとともにギルドマスター室を後にした。




