勇者 2
僕はディアモの攻撃をギリギリで避けた。
勇者。
それは、選ばれた者に与えられる称号だ。
ディアモさんは、僕が勇者パーティーにいた頃、言葉づかいも態度も悪く、とても勇者と呼べるような人ではないと思っていた。
けれど、ディアモさんには行動力があった。
僕が受けた依頼では、討伐が必要になると自分から率先して戦っていた。依頼先で困っている人がいれば、面倒くさそうにしながらも助けていた。
そんな人が、まさかここまで落ちてしまうなんて。僕は思ってもいなかったし、そうなってほしくもなかった。
「ディアモさん……なんでこんなことを」
「うるさい! 俺を詮索するな!」
ディアモさんは怒鳴り声を上げ、剣を強く握りしめた。
「俺はもう、手段なんて選んでいられるほど余裕はないんだ!お前を追放してから、何もかも上手くいかない!ライトもいなくなるし、アスタも引き抜かれた!さらにはカイナまで教会に戻された!」
ディアモさんの声には、焦りと苛立ちが混じっていた。
「このままじゃ、俺は勇者とは呼ばれなくなる! 他の奴を勇者にするつもりらしいからな!俺以外に勇者なんていないのに……!」
ディアモさんは、悔しそうに顔を歪めた。
確かに、勇者は生まれた時から決まっているものではない。
多くの実績を積み、勇敢な行動をした者に与えられる称号。それが勇者だ。
僕がパーティーにいた頃のディアモさんは、確かに勇敢な人だった。
けれど、今の彼は違う。勇者という称号にしがみつき、何もかも失いかけている。
ライトさんは自分が手をくだしたから知っていたけれど、アスタさんとカイナさんまでパーティーを抜けていたなんて、僕は知らなかった。
「俺は……俺は勇者なんだ!」
ディアモさんは、まるで自分自身に言い聞かせるように叫んだ。
「お前を殺して大金を手に入れる! そして俺は、もう一度やり直すんだ!」
ディアモさんは再び僕に向かって剣を振るった。僕はその一撃をかわす。
ディアモさんの異能は、サランドさんや、使っている本人ですら正確には理解していないらしい。
けれど、僕は知っている。
ディアモさんの異能――『英雄』。
この異能はかなりムラがある。だが、発動したときの攻撃力は非常に高く、厄介な異能だ。
勇敢な者に勇者の称号が与えられる。けれど、ディアモさんが勇者に選ばれた理由は、それだけではない。
この異能、『英雄』の存在も大きい。
『英雄』は、ディアモさんが思い描く自分の強さに近づくほど、攻撃の威力が増していく異能だ。
単純な能力だが、単純だからこそ恐ろしい。
まともに攻撃を受ければ、ほぼ一撃でやられてしまう。
だから、絶対に食らうわけにはいかない。
「さっきから俺の攻撃を避けてばかりじゃないか! そんなに俺が怖いのか!」
「怖いよ!だって、ディアモさんの異能は恐ろしいから!」
「なんでお前が俺の異能を知ってるんだよ!俺自身ですら、よくわかっていないっていうのによ!」
ディアモさんは再び剣を振るった。僕はその攻撃をかわすと、すぐに影の異能を発動させる。
僕の足元から、黒い影が勢いよく伸びていく。
「シャドウ・トルーパー!影の戦士、行け!」
地面から現れた影の戦士が、ディアモさんに向かって駆け出した。
影の戦士は剣を振り上げ、ディアモさんに斬りかかる。
しかし――。
「こんなもので、この俺がやられるか!」
ディアモさんは剣を一閃させた。
次の瞬間、影の戦士は真っ二つに斬り裂かれ、黒い霧となって消滅した。やはり、まともに戦えば危険だ。
僕は距離を取りながら、ディアモさんの動きを見つめた。




