大剣のヤシオ
ツブキたちがステイティアの森を離れて数十分後。
ヤシオの死体のもとへ、一人の男が近づいていた。
「バカやろうが……。なんでお前みたいな若い奴が、こんな早死にしてるんだよ、ヤシオ」
ヤシオの死体を見下ろしていたのは、サング組の男――カエンドだった。
カエンドは以前からヤシオを追っていた。
そして、ヤシオが一般人に迷惑をかけるところを目撃した後も、あえて助けなかった。
ヤシオがどんな結末を迎えるのか――それを見届けるために。
「俺は、お前が仁義外れなことをしなければ助けていた。だが、お前はカタギに迷惑をかけた。それに……なんとなくだが、お前はこの状況を望んだんだろ」
カエンドは、ヤシオの死体に向かって静かに語りかける。
大剣を振るっていたヤシオは、サング組に入ってまだ一年ほどしか経っていない。
本来なら、こんなふうに鉄砲玉として扱われていいような男ではなかった。ミントの兄貴のもとにいれば、きっとこんなことにはならなかっただろう。
俺は、ヤシオが組に入ったばかりの頃、こいつを鍛えたことがある。当時のこいつは大剣なんて持っていなかった。
他の武器の扱いも大したことはなく、銃もまともに使えなかった。
だから、すぐに組を辞めると思っていた。だが、こいつは違った。
『自分がどこまで行けるか、試してみたい』
そう言っていた。
だから俺は、俺が構ってやれる時にはこいつを鍛えてやった。だが、こいつは結局、バララの方についた。
「いずれは、こうなると分かっていたはずだ。お前は不器用な奴だった。だから……俺といればよかったのにな」
「それじゃあ、ダメなんですよ。カエンドの兄貴」
「――ッ!?」
突然、カエンドは背中に何かで刺されたような激痛を感じた。
「ぐふっ……!」
背中に手を当てる。手には大量の血が付着していた。
「誰……だ。こんな……こと……」
「冥土の土産に教えてあげますよ」
背後から聞こえてきた声。カエンドが振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
黄色いスーツを身にまとい、細長い顔。そして、背中まで伸びた長い髪を垂らしている。
「お前……は……バルトス……」
「早く死んでくださいよ、カエンドの兄貴」
バルトスは薄く笑う。
「あなたはここで、ヤシオと共に死んだという筋書きになっているんですから」
「く……そがぁ!」
カエンドは残された力を振り絞り、バルトスへ殴りかかる。
だが、バルトスが指を鳴らし、次の瞬間、カエンドの真横に何かが現れた。
「――ッ!?」
それがカエンドの首元を横薙ぎに首を斬り払った。
ドサッ。
カエンドの身体が、その場に倒れ込む。
「さて。私のお仕事は終わりました」
バルトスは倒れたカエンドを見下ろしながら、平然と呟く。
「あとは、ブンドル君がうまくやるだけですね」
そう言うと、バルトスはカエンドの首を蹴り飛ばした。
「ほんと、この人は目障りでしたよ」
バルトスは、楽しそうに笑う。
「目障りすぎて、すぐに殺したかったくらいです。でも、寛容な私ですからね。今まで我慢してあげたんですよ」
そして、ヤシオの死体へ視線を向ける。
「ヤシオと一緒に逝けてよかったですね、カエンドの兄貴」
それだけ言うと、バルトスはステイティアの森を後にした。




