タケイサ組のアスベル
「お前の攻撃など避ける必要はないが、まあ避けてやる」
「避ける必要がない? アスベル、お前、俺をなめてるんか?」
ヤシオはアスベルを睨みつける。
するとアスベルは、ヤシオを見下すように言った。
「当たり前だろ? 正々堂々とはやる。だが、俺は弱者に一方的に攻撃するのは好きじゃない。だから、お前が満足するまで俺に攻撃するがいい」
アスベルがそう言うと、ヤシオの顔が怒りで引きつった。
「そうかよ。なら、死んでも後悔するなよ!」
ヤシオは大剣を振り下ろす。
だが、アスベルはその攻撃をギリギリまで引きつけ、紙一重で避けた。
「はぁぁぁぁ!」
ヤシオは何度も大剣を振るうが、アスベルはそのすべてを簡単に避けていく。
何度攻撃しても当たらない。
やがてヤシオの息が上がり、動きも鈍くなっていく。
そして、大きく振りかぶった瞬間ーー。
アスベルはヤシオの大剣を持つ手首を殴りつけた。
「うっ、ぐぅぅ!」
手から力が抜け、ヤシオの大剣が地面に落ちる。
「弱い。本当に弱い。こんなやつが、うちのアマイちゃんを……」
アスベルはそう呟くと、ヤシオを仰向けに倒した。
そして、その顔面を何度も殴りつける。
「ぐっ!」
「弱い者いじめは嫌いだ。だが、お前はアマイちゃんを殺した」
アスベルは怒りを抑えきれないまま、拳を振るい続ける。
「アマイちゃんは情報屋だ。身を守る術は教えていた。だが、お前ら二人がかりで襲ったんじゃ、アマイちゃんでもやられてしまうだろうからな」
ヤシオは顔面を殴られながら、必死に言葉を絞り出す。
「お、れだっ、て……あんな、こと……したく……」
「あぁ? なら、なんでやったんだ!」
アスベルは怒鳴りながら、さらに拳を振るう。
そしてヤシオの顔が腫れ上がったところで、ようやく殴るのをやめた。
「す、まな……かった。おれ、は……」
「謝るくらいなら、なんでやった。命令だったとしても、お前には意思というもんがあるんだ」
「わか、ってて……それを、いう、のか……。けど……最後に、おれ、じしんの……身の程を……しれて……よか、った……」
ヤシオはそれだけ言うと、力なく目を閉じた。
アスベルは地面に落ちていた大剣を拾い上げる。
そして、その大剣をヤシオの胸へと突き刺した。
「これでまずは一人。次はブンドルってやつだな」
アスベルがそう言ったところで、ここまで僕たちを案内してくれたザドンが口を開いた。
「おい。俺たちを助けるのはどうした?」
「俺、たち?」
アスベルが助けるのは、ザドンだけじゃないのか?
僕が疑問に思っていると、ザドンはアスベルに向かって話を続けた。
「こいつは俺に仕事もくれたし、金もくれた。俺には妹がいる。俺は妹を食わせていかなきゃならない。だから、俺に仕事をあっせんしてほしい。それと、妹の面倒も見てほしい。ただ……俺はヤクザにはなりたくない」
ザドンは真剣な表情でアスベルに頼む。
アスベルは少し考えた後、
「いいだろう。ならザドン、お前は俺の下につけ。カタギのままでいられるように、できる範囲で仕事を回してやる」
アスベルはそう言ってから、続ける。
「それと、お前の妹に関してだが……まずは案内してくれ」
「……ああ、分かった」
ザドンは頷き、僕たちは再びザドンを先頭にして歩き始めた。
向かう先は、南ステイティア。
僕たちはザドンの妹がいる場所へ向かうのだった。




