タケイサ組の秘密 2
「それは着けば分かる。今は俺を信じてついてこい」
アスベルはそう言うと、それ以上は何も話さなかった。僕も黙ってアスベルの後をついていく。
それから数十分ほど歩き、冒険者ギルドからかなり離れた場所までやって来た。
僕たちは、娯楽エリアの裏路地へと入っていく。
そこには、小さな店が一軒だけ建っていた。アスベルはその店の前で足を止める。
「ここ?」
「そうだ。ここが目的地だ」
アスベルが建物の中へ入っていくので、僕もその後に続く。
店内にはバーのマスターらしき人物が一人いるだけで、客の姿はなかった。
「おや。お客様ですかな?」
マスターの髪は白く、口元にはちょび髭が生えている。目は細く、服装は黒いTシャツに赤いコート。下には黒の長ズボンを履いていた。
「やぁ、マスター。景気はどうだい?」
「そうですね。まさに閑古鳥状態です。お客様は何のご用で来られましたか?」
「情報だ」
アスベルがそう言うと、マスターは「ふふっ」と笑った。
「あなたはいつも直球ですね。アスベル様」
「俺は心理戦とか苦手なんだよ。だからいつでも直球さ」
「それがあなたの美徳ですね。それでは、こちらを」
マスターはそう言って、二枚の写真を取り出した。
そこには、大剣を背負った男と、黒いロングヘアーの男が写っていた。
「こちらのお二人が、アマイ様を殺した者たちでございます」
「こいつらが……アマイちゃんを……」
アスベルは写真を握りつぶしそうな勢いで強く握りしめる。
その様子を見た僕は、マスターへと尋ねた。
「この写真を、どこで撮ったんですか?」
「アスベル様。こちらの方は?」
「こいつはツブキ。うちの組に協力してくれてる、いいやつだよ」
アスベルが僕を紹介すると、マスターは納得したように頷いた。
「なるほど。では、喋っても大丈夫そうですね」
マスターはそう言うと、二枚の写真へ視線を向ける。
「私の異能で、この二人の写真を記憶から撮りました」
「記憶から撮った?」
どういうことだ?
「私の異能は、そうですね……例えば今回は、アマイ様が殺されました。その殺された現場で何があったのか。そして、なぜそうなったのか。それを知ることができる異能です」
そんな異能もあるんだ。過去に起きた出来事を見ることができるなんて、かなり便利な異能だな。
「ただ、私はこうしてバーのマスターをしていたいですから、この異能は隠しているんです。タケイサ組の方には用心棒をしてもらっているので、こうして異能を使って情報を渡したりしています」
「そりゃ、この南ステイティアは俺らのシマだからな。シマ荒らしは許せねぇよ」
アスベルがそう言った後、マスターから情報が書かれた紙を受け取る。
「じゃあ、俺たちは行くぜ」
「はい。また何かありましたら、いつでもお越しください」
僕たちはマスターに見送られながら、バーを後にした。
……と思ったら、バーから出た直後、アスベルは突然、店の中へ戻っていく。
「えっ?」
僕は慌ててアスベルの後を追った。
なんでバーから出たばかりなのに、また戻るんだ?
店内へ戻ると、アスベルはマスターの前まで歩いていく。
「お前は別についてこなくていいよ。いつものことだからな」
「いつものこと?」
僕には何が何だか分からなかった。




