特例ランク
僕がギルドマスター室に入ると、サランドさんは大きなため息をついた。
「ツブキ。お前でも、私が頼んだ用事がなければ気軽に来ていい場所じゃないぞ」
「すいません。ただ、僕は自分の冒険者ランクについて聞きたくて」
僕がそう言うと、サランドさんは一枚の紙を僕に手渡してくる。
「お前のランクは、この紙に書いてある通りだ。新米の方になるがな」
新米ってことは、またFランクからってことかな?
僕はそう思いながら紙を見る。
すると、そこに書かれていた内容に驚いた。
「特例ランク?」
特例ランクって何だ?聞いたことないんだけど!?
「特例ランクは、ギルドマスターが認めた冒険者のみに与えられるものだ。扱いとしてはSランクと同等。ただし、ギルドマスターが頼る特別な依頼には、必ず応じなければならなくなる」
「えぇ……。そんなこと聞いてないんだけど」
僕が困った顔をすると、サランドさんは苦笑する。
「勝手に決めて悪いな。だが、お前ほどの男をSランクという枠に収めておくわけにはいかないんだ」
「まぁ、いいですよ。それより、Eランク昇格の試験はミサキ一人で挑むんですか?」
僕が尋ねると、サランドさんは真剣な顔になる。
「そうだな。そして、昇格試験には部外者は参加できない。だからナグモとセツは、ミサキのことを見ることができない」
「そうなんですか」
「だが、特例ランクは別だ。試験官の付き添いがあれば、昇格試験を受ける者を見学することができる。だから、その時はミサキを頼むぞ」
「わかりました。それじゃあ、近くなったらまた教えてください」
僕はサランドさんに頭を下げ、ギルドマスター室から出ようとする。
すると、ドアの前にサングラスをかけ、背中には長い大剣、腰には二本の剣を装備した黒いスーツ姿の男が立っていた。
「組長」
「ここでは組長と呼ぶな、アスベル。何しに来た?」
サングラスをかけた黒いスーツの男――アスベルに、サランドさんが声をかける。
「あんまり組長が事務所に来られないんで、俺から来ました。それと、マスターのところには誰が?」
アスベルがそこまで言うと、サランドさんが僕を見る。
ん? なんだろう。マスターって、何の話だ?
「そうだな。このツブキを連れていくといい」
サランドさんがそう言うと、アスベルはギルドマスターの机を叩いた。
「冗談言わないでくださいよ、組長。こいつはカタギでしょう」
「確かに組の者ではない。だが、関わりがないとも言えない。アマイに近いものさ。アマイも一応、組に入っている形で受付嬢をしていただろ?」
「アマイちゃんは話が違います。こいつは完全なカタギでしょう」
アスベルはそう言うと、サランドさんを真剣な目で見つめる。
「私を信じて、こいつとマスターのところに行ってくれ。頼む」




