ツブキ・ドゥン
「その紙は?」
「分かっているだろう? 冒険者になる際には適性検査がある。実技試験に加えて、異能の有無を調べる検査もな。それは、その異能検査の結果が書かれた紙だ」
冒険者になる際には、いくつかの適性検査を受けることになっている。
実技試験はもちろん、近接戦闘の適性や魔法使いとしての適性なども調べられる。
その結果によって、冒険者になった後にどんな役割を担当するのかが決まる。
魔法の適性が高ければ魔法使い。
近接戦闘の適性が高ければ戦士や格闘家。
まあ、戦士や格闘家なんかは適性がなくてもなれる。
ただ、向いているか、向いていないかの違いだ。
「お前には異能の適性がある。それが本当なら、お前をパーティーから追放するなんてバカのすることだ」
「ギルドマスター。仮に勇者パーティーのディアモがバカだったとしても、戦闘面では優秀です。それに、彼も異能持ちです。ですから、簡単にバカとは……」
「バカにバカと言わないでどうする。まあ、あいつらは自分のパーティー以外の冒険者を見下しているからな。ギルドにも滅多に顔を出さんが」
よく知ってるな、サランドさん。まさか、そこまで勇者パーティーのことを把握していたとは。
「確か、勇者ディアモの異能は『英雄』とかいう、よく分からん異能だったか?」
「はい。ディアモさんの異能については、まだ詳しいことが分かっていません。本人も、自分の異能がどのようなものなのか完全には理解していないようです」
ディアモは、やっぱり勇者だけあって異能持ちなんだな。
……まあ、パーティーから追放された僕には、もう関係のない話だけどね!
「それで、結局僕に何の用なんですか? 僕、これから一人で稼いでいかないといけないんですけど」
「まあ、待て」
サランドさんはニヤリと笑った。
「私はお前のことを気に入っているんだ。あの性格の悪い勇者パーティーで、長いこと荷物持ちなんてやっていたくらいだからな」
「……褒められてます?」
「もちろんだ。だから私は、お前をあるパーティーに推薦したい」
そう言うと、サランドさんは自分の机の上に置いてあった紙を一枚、僕へ差し出した。
そこには、一人の冒険者のプロフィールが書かれていた。
「パーティーっていうから、何人かのパーティーに入れられるのかと思ったんですけど……」
紙に載っているのは、一人の冒険者だけだった。
「この人、パーティーを組んでないんじゃ……?」
「そうだ。こいつはソロでも強い。だが、一人ではできないことも多い」
サランドさんは紙に載っている人物を指差す。
「だから、お前にこいつと組んでほしい」
「この人と……?」
「そうだ。こいつの名前は、ミサキ・サキル。新米の冒険者だ」
「新米の冒険者で強いなら、僕と組ませる必要なんてないんじゃ……」
「この方は、新米の中では強いというだけで、冒険者全体で見ればまだ普通程度です」
横からサランドさんの補佐らしき人物が口を挟んだ。
「ただ、ギルドマスターは将来性があると思っている。だから『強い』と言っているんですよ」
「なるほど……」
そんな冒険者なのか。まあ、一人でやっていくのも寂しいしな。
追放されたばかりとはいえ、誰かと一緒に冒険できるなら悪くない。
「分かりました。僕でよければ、組んでみます」
「そう言ってくれると思っていたよ」
サランドさんは満足そうに笑った後突然、両手を叩いた。
「……?」
何をするつもりなんだろ。僕が疑問に思っていると、ギルドマスター室の扉が開いた。
そこから入ってきたのは――
さっき渡された紙に写っていた冒険者、ミサキ・サキルだった。




