冒険者ギルド
僕の名は、ツブキ・ドゥン。
つい先日まで勇者パーティーの一員だった、荷物持ちの冒険者だ。
見た目は黒髪のショートヘア。服装は、動きやすさを重視したラフな装備を身につけている。
勇者パーティーにいた頃、僕は「荷物持ちが武器を持つな」と言われていた。
だから僕は、戦うための武器を持つことすら許されなかった。
それでも、一人で生きていくためには何か力が必要だった。
そこで僕は、魔法を独学で覚えた。魔法は自分で編み出したオリジナルの魔法しか使えない。
その効果は――自分が受けた致命傷を、五回まで耐えることができるというもの。簡単に言えば、五回までは死なない。痛みまで消えるわけじゃないけど五回も死なないってすごくない?
この魔法は僕が一人で冒険者を続けるには十分な力だった。
そして今、僕は剣を腰に装備し、王都スティティアにある冒険者ギルドの前に立っていた。
「……よし」
これからは一人でやっていく。まずは依頼を受けなければならない。
僕は冒険者ギルドの扉を開け、中へ入り、すぐに受付へ向かう。
勇者パーティーにいた頃も、依頼を受けるのは僕の仕事だった。
依頼を探し、受付で手続きをして、必要な道具を準備する。
その後、ディアモたちと一緒に依頼をこなしていた。
……今思えば、依頼を受けるところまで僕がやっていたのに、よく「何もしていない」と言えたものだ。
「ツブキさん。今日はどんな依頼を受けに来たんですか?」
受付にいた女性が、僕に声をかけてきた。
彼女の名前は、アマイ・フォン。ピンク色の短い髪に、頭には黒いピンを二つつけている。
僕が勇者パーティーにいた頃から、何度もお世話になっている受付嬢だ。
「アマイさん。今日は僕一人で依頼を受けに来たんだ」
「お一人ですか?」
アマイさんは不思議そうに首を傾げる。
「勇者様――ディアモさんとは別行動するんですか?」
「い、いや……」
どう言えばいいんだろう。できれば、あまり大きな声で言いたくない。
「すごく言いづらいんだけど……僕、勇者パーティーを辞めたんだ」
「…………」
アマイさんの笑顔が止まった。
「……ん?」
笑顔のまま、明らかに困惑した表情になる。
「ツブキさん」
「はい」
「こちらで少し待っていてください」
「え?」
アマイさんはそれだけ言うと、受付の奥へと向かっていった。
「…………」
僕は言われた通り、受付の端で待つことにした。
何か問題でもあったのだろうか。
数分後。アマイさんが戻ってきた。
「ツブキさん」
「はい」
「ギルドマスターがお呼びです。来ていただけませんか?」
「ギルドマスターが?」
僕は首を傾げながら、アマイさんについていった。
案内されたのは、冒険者ギルドの二階にある部屋だった。
扉を開け、そこにいたのは坊主頭が特徴的で顔や腕には、いくつもの傷跡、服の上からでも分かるほど鍛え上げられた筋肉をもつ男だった
「……」
僕は思わず固まった。
「ツブキ・ドゥンだな」
男は低い声で言った。
「私はこの冒険者ギルドのギルドマスター、サランド・カサランだ」
「サランド……?」
その名前を聞いた瞬間、僕は驚いた。
サランド・カサラン。かつて冒険者として大きな功績を残し、名を上げた人物だ。
僕も冒険者として活動している以上、その名前くらいは知っている。確か、すでに冒険者を引退したと聞いていた。
まさか、今はこのギルドのギルドマスターをしていたなんて。
「……驚いているようだな」
「あ、すみません」
「構わん。それより聞きたいことがある」
サランドさんは僕を真っ直ぐに見つめる。
「お前は勇者パーティーにいたと聞いている」
「はい」
「なぜ辞めた?」
「…………」
どう答えればいいんだろう。
僕は少し迷ってから口を開いた。
「えーと……これはディアモ達には言わないでほしいんですが」
「安心しろ」
サランドさんは即答した。
「この部屋の話が外に漏れることはない」
「……分かりました」
僕は勇者パーティーを追放されたことを話した。
ディアモに言われたこと。アスタやライトに言われたこと。
そして、最後に「自分からパーティーを抜けたことにしろ」と頼まれたことまで。
サランドさんは、僕の話を最後まで黙って聞いていた。
「…………」
やがて、腕を組む。
「ふむ」
そして、短く息を吐いた。
「私は、お前のことを買っていたんだがな」
「……え?」
思いがけない言葉だった。まさか、ギルドマスターが僕に言うとは思わなかった。
「僕のことを……?」
「そうだ」
サランドさんは机の上に置かれていた一枚の紙を手に取った。
「お前は、自分が思っている以上に評価されているぞ」
「……どういうことですか?」
サランドさんは、その紙を僕の目の前に置いた。
「これは……?」
僕はギルドマスターが見せてきた紙を見ていた




