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勇者パーティーを追放された影の異能使い  作者: アークマ
第一章 ツブキの新たな生活

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パーティー追放

 僕の名前は、ツブキ・ドゥン。

 勇者パーティーの一員として、冒険者をしている。

 ……そう聞けば、僕も勇者と肩を並べて魔物と戦う、立派な冒険者だと思うだろう。

 でも、現実は違う。僕には、勇者のような力はない。

 魔法使いのような強大な魔力もない。

 戦士のような剣技もない。

 僕ができるのは、荷物を運ぶこと。

 仲間たちの武器を手入れすること。

 ポーションや回復アイテムの数を管理すること。

 つまり――僕は、勇者パーティーの荷物持ちだ。

 それでも僕は、自分の役割に誇りを持っていた。

 戦えなくても、仲間を支えることはできる。

 そう信じていたある日、僕たちが拠点としている宿屋の一室で、次の依頼について作戦会議をしていた。

 いつもと変わらない時間。いつもと変わらない仲間たち。その日も何もなくいつも通りに会議だけ、そう思っていた。


「ツブキ」


 勇者であるディアモ・アルマが、突然僕の名前を呼んだ。


「なんですか、ディアモ?」

「お前には、パーティーを抜けてもらう」

「…………え?」


 一瞬、何を言われたのか理解できなかった。

 パーティーを……抜ける?なんで?


「えっと……ディアモ。冗談、ですよね?」

「冗談じゃないわよ。無能のツブキくん」


 僕の隣から、冷たい声が飛んできた。

 魔法使いのアスタ・クレイスター。

 水色の髪を揺らしながら、彼女は僕を見下ろしている。


「な、なんでですか、アスタさん。僕はちゃんと自分の役割を――」

「その役割が必要ないのよ」

「……必要ない?」


 なんで、なんで急にそんなことを言いだすんだ?

 すると、今度は戦士のライト・スクルドが口を開く。


「荷物持ちがいれば便利だと思っていた。だが、ポーションや回復アイテムの管理くらいなら俺たちでもできる」

「でも……」

「それに、お前は戦闘では何もできない」

「…………」

「魔物が出れば、俺たちが戦う。お前は後ろで荷物を持っているだけだ」


 ライトの言葉が、一つ一つ胸に突き刺さる。

 確かにそうだ。僕は戦えない。

 だからこそ、みんなが戦っている間も、僕にできることを探してきた。

 武器が壊れないように手入れをする。ポーションを切らさないように管理、必要な道具を準備し、仲間たちが安心して戦えるようにする。

 それが僕の仕事だった。それだけは、誰にも負けないようにやってきたつもりだった。


「僕は……みんなの役に立っていたと思っていました」

「役に立っている?」


 ディアモが鼻で笑う。


「数年間、一緒に冒険してきた」

「はい」

「それなのに、お前は何も成長していない」

「…………」

「剣も使えない。魔法も使えない。特殊な能力もない」


 ディアモは淡々と告げる。それはディアモが僕に武器を持つなと言うからだ。荷物持ちは荷物持ちらしくしていろと。


「お前を連れている意味がないんだよ」


 言い返せなかった。僕自身、それはわかっていた。ディアモ達の前ではおもてだって行動はしてないから

 だからこそ、別の形で役に立とうとしてきた。

 なのに――。


「ディアモさん」


 静かな声が部屋に響いた。

 僧侶のカイナ・アルナだった。


「そこまで言わなくてもいいでしょう」

「カイナ?」

「ツブキさんは、ツブキさんなりに頑張っていました」


 カイナさんは僕を見る。その目には、悲しみが浮かんでいた。


「戦う力がないからって、彼の努力まで否定する必要はありません」

「……カイナさん」


 その言葉だけで、胸が少しだけ軽くなった。カイナさんは僕を評価してくれているんだと。だがーー


「お前は優しすぎる」


 ディアモがため息をつく。


「だから今までこいつを置いてやったんだ」

「…………」

「だが、もう限界だ」


 ディアモは立ち上がる。


「俺たちはこれから、さらに強い魔物と戦っていく。足手まといを連れていく余裕はない」

「僕が……足手まとい?」

「そうだ」


 ディアモは迷いなく答えた。


「だから、今日で終わりだ」


 その言葉と同時に、ディアモは懐から袋を取り出した。

 そして――。

 ドサッ。

 僕の足元に袋が落ちる。中から金のぶつかる音がした。


「これは……?」

「お前にやる」

「……お金?」

「今までの働きに対する報酬だと思え」


 ディアモは冷たい笑みを浮かべた。


「それと、もう一つ頼みがある」

「なんですか?」

「俺たちに追放されたことは、他の冒険者には言うな」

「え?」

「勇者パーティーが仲間を追い出したなんて知られたら、俺たちの評判が悪くなるからな」

「そんな……」

「だから、お前が自分から抜けたことにしろ」


 あまりにも身勝手な言葉だった。僕はもう、完全にみきられたんだと、この金の入った袋でよくわかった。


「じゃあな、ツブキ」


 ディアモは背を向ける。


「今までご苦労だったな」


 そして、最後に僕を見る。


「無能のツブキ」


 その言葉を残して、ディアモはアスタとライトを連れて部屋を出ていった。

 カイナさんだけが、僕の前に残った。


「……ツブキさん」

「カイナさん」

「ごめんなさい……」

「どうして謝るんですか?」

「私、何もできませんでした」


 カイナさんは悔しそうに拳を握る。


「本当に、ごめんなさい……」

「……大丈夫です」


 僕は笑った。カイナさんは僕をみていてくれたし庇ってもくれた。だから最後くらいは笑おう。


「今までありがとうございました」

「ツブキさん……」


 カイナさんは何か言おうとした。

 けれど、結局何も言わずに自分の部屋へ戻っていった。

 静かになった部屋。そこに残されたのは、僕一人だった。


「…………」


 僕は足元の袋を拾う。ずっしりと重い。

 でも――。

 僕には、その重さが金貨の重さには感じられなかった。

 まるで、数年間一緒に過ごした仲間たちとの時間そのものを、袋に詰めて渡されたような気がした。


「……これから、どうしよう」


 勇者パーティーを追放された。


 今日から僕は、一人だ。住む場所も。仕事も。仲間も。何もない。それでも、立ち止まっているわけにはいかなかった。僕は宿屋を出る。

 向かった先は、冒険者ギルドだった。

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