チェイサー
僕はチェイサーを連れ、娯楽エリア、商店エリア、最後に冒険者ギルドエリアを案内した。
一通り案内を終えると、チェイサーが周囲を見渡しながら口を開く。
「あれ? ここには教会はないのかい?」
「教会なら冒険者ギルドから少し離れた場所にある。案内しよう」
「ああ、頼むよ」
僕はチェイサーを教会へ案内する。
そして教会へ向かう途中、人の気配がほとんどない通路へ差しかかったところで、僕は足を止めた。
「……急で悪いけど、なんでそんな殺気を放ってるの?」
「……あれ? わかるんだ」
チェイサーは驚いたように目を見開き、口元をニヤリと歪めた。
「やっぱ親父の言う通り、強いんだね。ツブキ・ドゥン」
チェイサーは槍を抜き、僕の背中へ向かって突き出した。
速い!
僕は咄嗟に身体を捻る。それでも槍は僕の身体を貫いた。
「ぐっ……!」
普通なら致命傷だけど、僕には五回までなら致命傷を受けても死なない魔法がある。それがなければ、今ので死んでいた。
「あら。今のでやれたと思ったんだけど」
チェイサーは槍を構えたまま、楽しそうに笑っている。
僕も剣を抜き、チェイサーへ向けた。
「お前……思い出した。ライトを僕にぶつけてきた奴だね」
「なんだ、あいつ俺のことを言ったのか」
チェイサーは肩をすくめる。
「それにしても、そこまで役に立たないなんて拍子抜けだなー。勇者パーティーも落ちたもんだ」
「……お前の目的はなんだ?」
僕が問いかけると、チェイサーは槍を構え直した。
「俺? 俺の目的は、この南ステイティアの極道――タケイサ組をなくすことだよ」
チェイサーは笑みを浮かべる。
「そうして、ここを俺たちサング組のシマにするのさ」
「……なるほど」
僕は剣を握り直す。
こいつは最初から、僕を狙ってここへ来たんだ。
「なら、僕が邪魔ってことか」
「そういうこと」
チェイサーが槍を構え、僕も剣を構える。
「だったら――!」
僕は一気に距離を詰め、チェイサーへ斬りかかった。
ガキィン!
僕の剣をチェイサーの槍が弾き飛ばす。
「っ!」
僕は一旦距離を取ろうとしたがーー。
「逃がさないよ~」
チェイサーの槍が僕の胸部を狙って突き出された。
「これくらい、なんともないよ!」
僕は剣で槍を弾き飛ばし、異能を発動させる。
「シャドウトルーパー。剣士!」
僕の影から、黒い剣士が姿を現す。
その手には、一本の剣が握られていた。
影の剣士はチェイサーへ向かって駆け出した。
「無駄だよ」
チェイサーは冷静に槍を構える。
「俺には効かない」
「何……?」
「俺も異能を使おうか」
チェイサーは影の剣士の懐へ一瞬で入り込んだ。
ズブッ!
槍が影の剣士の胸を貫くと、影の剣士は黒い霧のようになって消滅した。
「なっ……!」
影の剣士を一撃で……。こいつの異能は、かなり厄介だ。
チェイサーは僕から距離を取る。
「この人けのない通路を選んだのは、俺が異能を使いやすいからだよ」
そう言うと、チェイサーの手から何かが溢れ出した。
白い何かが、徐々に周囲へ広がっていく。
「周囲が見えなく……。まさか、霧か?」
「ご名答」
チェイサーの声が霧の中から聞こえる。
「俺の異能――霧で、お前を見えないところから突き殺してやろう」
その言葉を最後に、チェイサーの声が聞こえなくなった。
どこにいる……?目の前は真っ白だ。このままでは、いつどこから攻撃されるかわからない。
「……だったら、僕も迎撃するしかない!」
僕は再び異能を発動させる。
「シャドウトルーパー。防御兵!」
僕の周囲から、複数の黒い兵士が姿を現す。
彼らは影の鎧に身を包み、盾を構えて僕を囲んだ。
「これなら、どこから攻撃されても――」
「なかなかやるな」
霧の中からチェイサーの声が聞こえた。
「それじゃ、俺が一撃でお前を殺さないと、俺がどこにいるのかバレそうだ」
「……!」
急に、周囲を包んでいた霧が、一瞬で晴れた。
「何……!」
霧が消えた!?そんなことまでできるのか!
そして僕の目の前には、槍を構えたチェイサーが立っていた。
「不意打ちしても意味ないなら、使う要素ないからな」
チェイサーはニヤリと笑った。
「これでもくらっときな!」
チェイサーが一気に踏み込んだ。槍が防御兵の身体を貫く。だが、それでも止まらない。
槍は防御兵を次々と貫き――。そのまま、僕の身体へ向かって突き出された。




