サング組員
「何人かは、もう王都にいるらしい。奴らの目的は、まずこの王都で活動するための拠点を作ることだと思われる」
サランドさんは手元の紙に目を落としながら説明する。僕は黙って、その話に耳を傾けていた。
「現状、こちらに来ている構成員は武闘派が三人。それと、舎弟が数名だ。武闘派三人の名前は――槍のチェイサー、剛力のカエンド。そして……」
サランドさんが最後の一人の名前を口にしようとした、そのときだった。
手にしていた紙が、微かに震える。
「……まさか。そんなバカな。奴が本当に来ているのなら……」
サランドさんは慌てたように立ち上がると、僕の肩に手を置いた。
「ツブキ。一人は、すぐに殺さないとダメな奴だ」
「そんなに危険なんですか?」
「ああ。名前は――爆破のアキザ」
その名前を口にした瞬間、サランドさんの表情が険しくなる。
「アキザは異能使いだ。触れたものを爆弾に変えたり、触れた瞬間に爆破させたりする。……いかれた野郎だ」
「触れたものを……爆弾に?」
「ああ。しかも、サング組の中でも扱いに困っているような男だと聞いている」
それだけ聞けば、どれほど危険な男なのかは僕にも想像できた。
もしそんな奴が王都で好き勝手に暴れれば、被害が出るのは間違いない。
「本来なら、こっちに来るときは組長も一緒だと思っていたんだが……」
サランドさんは一度言葉を切ると、僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「だから、頼む。私たちと一緒にアキザをやるのを手伝ってくれないか?」
「僕が?」
「ああ」
サランドさんは頷く。
「奴らの狙いは、おそらくアキザを殺されたことへの報復だ。もし私たちがアキザを殺せば、サング組はそれを理由にタケイサ組へ抗争を仕掛けてくるだろう」
なるほど、サング組としては、厄介者であるアキザを始末できる。
そのうえ、アキザが殺されれば、それを口実にしてタケイサ組へ抗争を仕掛けることもできる。
随分と都合のいい話だ。でもーー
僕は少し考える。タケイサ組の人間が直接アキザを殺せば、抗争の理由を与えてしまう。
だったら、タケイサ組とは関係のない冒険者を使うしかないんじゃないか?
僕が考えていると、サランドさんが口を開いた。
「ミサキの護衛は、しばらくナグモに任せる」
「ナグモに?」
「ああ。だから、お前にはその間に私が呼ぶ冒険者たちと合流して、アキザを始末してほしい」
サランドさんは真剣な顔で続ける。
「殺せなくても構わない。少なくとも、異能を使えない状態にはしてくれ。頼む」
そう言って、サランドさんは僕に頭を下げた。
「ちょっ……そんな、頭を下げなくてもいいですよ」
僕は慌てて手を振る。
「確かに、爆破の異能を持っているうえに、そんなに危険な奴となれば放っておくわけにはいきませんからね。わかりました。その依頼、引き受けます」
「……ありがとう」
サランドさんは頭を上げる。
「色々とうちの組のことで迷惑をかけて、本当にすまないな」
「気にしないでください」
爆破の異能を持つ奴が王都で暴れれば、困るのはタケイサ組だけじゃない。
僕だって、巻き込まれる可能性がある。
だから、さっさと片付けてしまったほうがいい。
「それで、アキザは今どこにいるんですか?」
「ああ。おそらく、ここだ」
サランドさんは机の上に地図を広げ、その中の一点を指差した。
「ここはうちの事務所からも近い。おそらく、奴はそこを爆破するつもりなんだろう」
「なるほど……」
もし本当に事務所を狙っているのなら、時間はあまりない。
「そこには私の仲のいい冒険者を二人ほど呼んでおく。お前はそいつらと合流してから、アキザを攻めてくれ」
「わかりました」
僕は頷いた。それからギルドマスターの部屋を出る。
まずは商店エリアに向かい、必要な道具を揃えなければならない。ナグモなら大丈夫だと思う。
だけど、ミサキと二人きりでいる以上、やっぱり少し心配だ。だからこそ――。
「できるだけ早く終わらせないとね」
僕は足を速め、急いで、商店エリアへ向かった。




