動く悪意
僕は王都に着くと、急いでミサキとナグモの二人を探した。まず冒険者ギルドへ向かうと、そこには二人の姿があった。
「二人とも! 大丈夫?」
「ん? 大丈夫だが……どうした?」
僕がかなり息を荒げていたことに、ナグモは驚いたような顔をする。
すると、ミサキも心配そうに僕を見る。
「ツブキさん。何かあったんですか?」
「いや……二人のほうこそ、何かなかったの?」
僕が二人に尋ねると、ナグモは少し考えた後、ミサキに声をかける。
「お嬢。少しここで待っていてください」
「え? 分かりました」
ナグモはそう言うと、僕と一緒にミサキから少し離れた場所へ移動する。ミサキの目が届く範囲で。
「お嬢に聞かれたくない話なんだろ? お前がそこまで息を荒げているってことはな」
「は、話が早くて助かるよ。実は僕のところに、サング組から入れ知恵された奴が来たんだ。だから、二人のところにも同じような奴が来ているんじゃないかと思ってね」
僕がそう言うと、ナグモは驚いたように目を見開いた。
「サング組の奴ら、もう接触してきたのか……」
「うん」
「俺たちにも因縁をつけてくる奴らはいたが、多分サング組の奴じゃないと思う。冒険者だったからな」
「冒険者だから……か」
確かに、サング組が直接動いているのなら、わざわざ冒険者を使う必要はないのかもしれない。
でも、それだけで安心していいのだろうか。ライトさんも冒険者だ。
ナグモはサング組の奴ではないと言っているが、サング組に雇われた手先という可能性もある。
「サング組が雇った冒険者って可能性はないのか?」
「その線もないと思う。弱すぎたからな」
「弱すぎたからって……」
僕は少し呆れる。それはナグモが強いだけだと思うんだが。
でも、ナグモがそう言うのなら、今のところは大丈夫なのだろう。
「僕はとりあえず、サランドさんに報告してくるよ。ミサキのこと、頼むね」
「無論だ。任せておけ」
僕はナグモにそう告げると、再び彼と別れ、二階にあるギルドマスターの部屋へ向かった。
ギルドマスター室へ向かう途中、受付嬢のアマイさんとすれ違う。
「あ、ツブキさん。ギルドマスターにご用ですか?」
「うん。そうだよ。ギルドマスターは部屋にいる?」
「はい。ただいま情報が書かれた紙を渡してきたところですので、それを読んでいると思います」
「分かった。ありがとう」
アマイさんは僕に頭を下げると、受付の仕事へ戻っていった。
僕はギルドマスター室の前まで来ると、扉をノックする。
「入れ」
中からサランドさんの声が聞こえた。
「失礼します」
僕は扉を開け、部屋の中へ入る。
「何の用だ?ツブキ」
「忙しいところすいません。でも、サランドさんに話しておきたいことがあって」
「もしかして、サング組のことか?」
サランドさんにそう聞かれ、僕は黙って頷く。
「やっぱりか」
サランドさんは机の上に置かれた紙を手に取る。
「こっちも、さっきアマイから情報が書かれた紙をもらったところだ。やっぱりあいつは優秀だな」
サランドさんは感心したように言う。
「組の者でも受付嬢として働ける。ギルドのその利点を利用しない手はないからな」
「そうだね」
「それで、お前は誰に襲われた?」
サランドさんが真剣な表情で僕を見る。
「僕は、勇者パーティーのライトに襲われたんだ」
「ライト……あのバカな戦士か」
「うん。ライトはバカだから、自分に利点がない限り、わざわざ僕を襲うようなことはしない」
僕は一度言葉を切り、ライトから聞き出した言葉をサランドさんに伝える。
「だから、誰に僕を襲えって言われたのか聞いたんだ。そしたら……」
「そしたら?」
「サング組だと答えたよ」




