D級パーティー カマクラン
「お嬢。ここは俺が、あの二人の相手をします」
ナグモがミサキに絡んでいたガラの悪い冒険者たちの前に立つと、先ほどミサキに話しかけていた男が、ナグモを睨みつけながら口を開いた。
「俺たちはD級ランクパーティー『カマクラン』だぞ? 俺はザランク・ドン。そして、こいつはミルト・ルトだ!」
ザランクと名乗った男は、大柄な体にハンマーを背負っている。
その隣にいるのは、黒髪でどこかおとなしそうな男――ミルト。彼の武器は双剣だ。
二人とも銅製の鎧を身につけている。
「ナグモ。私も――」
「大丈夫です」
ミサキが加勢しようとするが、ナグモはそれを制する。
「こんなアホども、俺一人で十分です」
「……なんだと?」
ナグモの言葉を聞いたザランクの顔が怒りで歪む。
「上等だゴラ! 表に出ろや!」
「はいはい。分かりましたよ」
ナグモはため息をつくと、ザランクとミルトの後に続いてギルドの外へ出た。
ギルドの前まで出ると、ザランクはハンマーを手に取る。
「お前、俺とミルトのことをアホって言ったよな? お前の方がアホなんじゃねぇのか?」
ザランクがハンマーを構える。
「二人がかりで戦う俺たちが、負けるわけねぇだろ!」
ミルトも無言で双剣を抜いた。そんな二人を見て、ナグモは呆れたように肩をすくめる。
「やれやれ。身の程をわきまえていないと思えば、今度は二対一で挑むのか」
ナグモは二人を見据える。
「お前らは本当に愚かだな。あいつらの手先かと思ったが……どうやら、お前ら二人は違うらしい」
「うるせぇ! とっとと死ねやぁ!」
ザランクが叫びながら突っ込む。その瞬間、ナグモは腰に差していた鎌を抜いた。
「――遅い」
次の瞬間、ザランクとミルトの身体に斬撃が走った。
「痛っ!」
「ぐっ……!」
二人が同時に後退する。ナグモは鎌を構えたまま、冷たい目で二人を見る。
「お前ら如きなら、武器を抜く必要すらない」
そして、ミサキの方へ一瞬だけ視線を向ける。
「だが……お嬢に絡んできたことは許さねぇ」
ナグモは再び二人に視線を戻す。
「だから、もう少しだけ死なない程度に刻んでやる。――来いよ」
「い、一回当たったくらいで調子に乗るな!」
ザランクとミルトは再びナグモへと接近する。ザランクがハンマーを振り下ろし、ミルトが左右から双剣を振るう。
「遅ぇよ」
ナグモは二人の攻撃を紙一重でかわす。
次の瞬間、ザランクとミルトの身体に、再び斬撃が走った。
「うぐっ!」
「ぐあっ!」
二人が地面へ倒れそうになる。ナグモは鎌を肩に担ぎながら、冷静に言い放った。
「弱い。弱すぎる」
ナグモは二人を見下ろす。
「お前たち二人より、お嬢の方が強いぞ」
「こ、この……調子に乗りやがって……!」
ザランクがナグモを睨みつける。そのときだった。
「…………」
ミルトがザランクの肩に手を置き、首を横に振る。
「……ちっ」
ザランクは舌打ちすると、ナグモから視線を逸らした。
「今日はこれくらいにしといてやる。じゃあな!」
ザランクはハンマーをしまい、ミルトも双剣を収める。
「まだ仕置きとしては足りねぇが……まぁいい」
ナグモも鎌をしまう。
「俺は弱いものいじめをする気はねぇからな。とっととどこかへ行きやがれ」
「覚えてろよ!」
ザランクは捨て台詞を吐くと、ミルトとともにその場を去っていった。
二人の姿が見えなくなったのを確認すると、ナグモはミサキのもとへ戻る。
「お嬢。戻りましょう」
「うん」
二人はそのままギルドの中へと戻っていった。今日受ける依頼について話し合っていた。
「今日はどの依頼にする?」
「そうですね。俺としては――」
そのときだった。
「ミ、ミサキ……!」
「え?」
「……ツブキ?」
二人が振り返ると、そこには、汗だくになりながら、息を切らしているツブキの姿があった。
「はぁ……はぁ……!」
「ツブキ!?どうしたの!?」
ミサキとナグモは、突然現れたツブキに驚く。
ツブキはなぜ、ここまで汗だくになって慌ててやって来たのか。
「二人に……伝えなきゃ……!」
ツブキは必死に息を整えながら、二人に何かを伝えようとしていた。




