ライト・スクルド
僕はライトとフルイヤの洞窟へ向かい、数時間かけて目的地へ到着した。
洞窟の中へ入ると、僕たちは奥へと進んでいく。道中に現れた魔物は、ほとんどライトが倒してくれた。
そして、しばらく進んだところで、魔物も人もほとんどいない場所へたどり着く。
その瞬間だった。ライトさんが突然、僕に剣を向けてきた。
「なんだ? 驚かないのか?」
「嫌だっていう殺気が漏れてましたから。それに、勇者パーティーにいた頃から思ってましたけど……ライトさんって、人を殺す時は殺すって感じで、殺意を出しまくってましたよね」
「……チッ」
ライトさんは舌打ちすると、いきなり僕へ向かって剣を振り下ろした。僕は一歩横へ移動し、その攻撃を避ける。
「殺意が漏れまくりだぁ? 適当なこと言ってんじゃねぇよ!」
ライトさんは怒鳴りながら、さらに剣を振る。
「お前は戦闘にも出てねぇ、ただの荷物持ちだろうが!」
「僕が戦おうとしたら、『荷物持ちは荷物を守れ』って言ったのはライトさんじゃないですか」
「当たり前だろうが!」
ライトさんはニタニタと笑う。
「荷物持ちが目立とうとすんじゃねぇよ。荷物持ちの仕事は、パーティーの荷物をしっかり守ることだ。命懸けで荷物を守る。それがお前の仕事だろうが。違うか?」
「……」
僕はライトさんを見つめる。
この人は、僕に「成長する気がない」と言っていた。けど、本当に成長する気がないのは、この人の方なんじゃないだろうか。
噂では、弱い者いじめが趣味だと聞いていた。
勇者パーティーにいた頃は、まさかそんなことをする人だとは思っていなかった。
でも、僕がパーティーを抜けてから、ライト・スクルドが弱い冒険者をボコボコにしているという噂は、どんどん広まっていた。
「ライトさん」
「あ?」
「噂を信じるのは、あまりよくないことだから聞きますね」
僕はライトさんを見ながら尋ねる。
「噂は……本当なんですか?」
「噂だぁ?心当たりがねぇな!」
ライトさんはそう言うと、再び僕へ向かって剣を振り下ろす。
僕は体を横にずらして、その攻撃を避けた。
「弱い者いじめですよ」
「あ?」
「まだ冒険者になったばかりの人たちが訓練所を使っている時に、ボコボコにしているとか」
僕は淡々と話す。
「しかも、だいたい二人組を狙って、一人をボコボコにしたあと、その原因をもう一人のせいにしているんですよね」
「何のことだぁ?」
ライトさんはニタニタと笑う。
「俺は優しいから、身の程を教えてやっているだけだ。弱い者いじめ? 嫌だなぁ。勇者パーティーの俺が、そんなことをするわけないだろ?」
そして、剣を構える。
「教育だよ。教育」
「……そうですか」
僕は小さく息を吐いた。やっぱり、この人はどうしようもない。
「だったら、僕も教育してあげますよ」
「は?」
僕は自分の足元にある影へ意識を集中させる。
「――異能」
僕の影が大きく広がり、ライトさんの足元へ伸びていく。
「なっ……!?」
黒い影がライトさんの身体へ絡みつき、そのまま手足を拘束した。
「な、なんだ!? 動けない! なんで……!」
ライトは必死にもがく。だが、影の拘束はびくともしない。
「僕ね。荷物持ちだから戦うなって、ディアモさんとライトさんに言われたから……戦わないでいたんです」
僕はライトを見つめる。
「でも、僕――異能持ちなんですよ」
「お前が……異能持ち?」
ライトの顔から、初めて余裕が消えた。
「おいおい……嘘をつくのはやめろよ」
それでも、ライトさんは強がるように笑う。
「荷物持ちの使えないお前が、異能を持っているなんて……そんな嘘、誰が信じるんだよ!」
ライトは影の拘束を解こうと、必死にもがく。でも、いくら力を込めても抜け出すことはできないよ。
「ライトさん」
「……なんだよ」
「どうして急に僕を襲おうとしたんですか?」
「……」
「誰かに頼まれたんですか?」
ライトの表情が、一瞬だけ変わった。
「何のことだ?」
だが、すぐにいつものニタニタとした笑みに戻る。
「俺は、お前が最近調子に乗っているから、ちょっとこづいてやろうと思っただけだ」
「……」
僕はライトさんを見つめる。
この人は、何かを隠している。僕には、そんな気がしてならなかった。




