接触
僕とナグモは路地裏で戦ったあと、一旦冒険者ギルドで落ち合った。
ギルドの中に入ると、ミサキが僕たちを待っていた。
「遅いですよ、ツブキ。何してたんですか?」
「いやー。色々とね。あ、そうだ。今日からもう一人、パーティーに仲間を入れたいんだけどいいかな?」
僕はミサキにナグモを紹介する。するとミサキは、ナグモの方を見ながら尋ねた。
「ナグモさんは冒険者として長いんですか?」
「いや、俺は冒険者じゃない。でも、ツブキとは友人でね。彼と一緒に依頼をこなしたくて、このパーティーに入りたいんだ。だから、依頼の報酬は俺に分けなくていいよ」
「か、変わってますね。報酬がいらないなんて……。別のお仕事をしてるんですか?」
「ま、まぁね。別の仕事はしてるよ」
ナグモが答えると、ミサキは少しだけ彼のことを見つめた。そして何も言わず、ギルドの外へ出ていった。
「……あれ?」
もしかして、ナグモをパーティーに入れるのが嫌だったのかな?
僕がナグモの肩に手を置こうとした、その時、ミサキがすぐに戻ってきた。
「何してるんですか? 早く行きましょう。ツブキにナグモさんも」
「ナグモでいいよ。俺はミサキを『お嬢』と呼ぶね」
「え? 何で?」
ミサキは首をかしげる。
しかし、ナグモはなぜかそこだけは譲らなかった。
理由を知っている僕には分かるけど、何も聞かされていないミサキからすれば、突然『お嬢』なんて呼ばれるのは嫌だろうな。
「まぁ、いいですよ。それくらいなら。それじゃ、行きましょう」
こうしてミサキは、ナグモの『お嬢』呼びを許した。その後、僕たちは一緒に依頼へ向かった。
それから僕たち三人は、基本的に三人で依頼をこなすようになった。
僕が休みたい時は、ナグモがミサキの護衛を兼ねて依頼に同行する。
逆にナグモの都合が悪い日は、僕がミサキの護衛を兼ねて依頼に同行した。
そんな日々を過ごし、数週間が経ったある日のこと。
僕が一人で王都を歩いていると、見知った男が、僕の前に現れた。
「よう。ツブキ」
「……僕に何の用ですか。ライトさん」
僕の前に現れたのは、かつて僕が所属していた勇者パーティーの一人、戦士のライト・スクルドだった。
「お前に用があってな。ここで話すのもアレだし、あそこに行こうぜ」
「……あそこ?」
「フルイヤの洞窟に」
ライトが口にした『フルイヤの洞窟』は、中級程度の冒険者がよく訪れる場所だ。
そこにはゴブリンやコボルトなどの魔物が生息している。さらに、Fランク冒険者だと倒すのが難しい、石でできたストーンマンという魔物も出現する。
「構いませんけど、依頼なら皆さんで行けばいいじゃないですか」
「まぁまぁ、そんなこと言うなよ。俺もあの時は言いすぎたんだ。仲直りがしたいんだよ」
「…………」
仲直り、か。それ自体は構わない。
でも、わざわざ洞窟まで行く必要があるのだろうか?
僕はライトを見つめると、微かだが、殺気が漏れている。
わかりやすい男だな。狙いは多分僕を殺すことだね。
それなら、王都にいるよりも洞窟に行った方がいい。
周囲に人がいない場所なら、僕も遠慮なく戦える。
「分かりました。それじゃ行きましょう」
僕はライトを見ながら、静かに答えた。
「フルイヤの洞窟に」




