サング組
ツブキとナグモが戦っている頃、勇者パーティーの一人、戦士のライト・スクルドは、冒険者たちが利用する訓練場でひたすら剣を振っていた。
「ふん!ふん!」
ライトが一人で剣を振っていると、訓練場にいた冒険者の一人が恐る恐る近づいてきた。
「あ、あの……すいません」
「なんだ? 今、俺は忙しいんだ。話しかけるな」
ライトはそう言うと、話しかけてきた冒険者の顔をいきなり殴った。
「ぐっ!」
突然殴られた冒険者は、その場に倒れ込む。
「あんた、何してんだ!ただ話しかけただけで殴らなくてもいいだろ!」
倒れた冒険者を見た別の冒険者が、ライトに詰め寄る。
するとライトは、持っていた剣を反転させ、刃とは反対側の部分で男を殴りつけた。
「ぐっ!」
「俺は勇者パーティーの戦士、ライト様だぞ! その俺に気安く話しかけてくるなよ!底辺冒険者風情が!」
ライトはそう吐き捨てると、男を何度も殴りつける。
「ぐっ……!」
男はライトに殴られ続け、その場で気絶した。それを見た最初に殴られた冒険者は、恐怖に顔を引きつらせながら逃げようとしたがーー
「おい」
ライトは逃げようとする男の前に回り込んだ。
「君?分かっているよなぁ?」
「ひ、ひぃ!な、何がですか!」
「これは君がやったんだ。そうだよなぁ?」
「ぼ、ぼ、僕は……な、何も……」
「あ?なんだ?こいつみたいになりたいのか?」
ライトは、先ほど自分が殴り倒した男を剣の柄で指し示す。
「…………」
逃げようとしていた冒険者は、恐怖で震えながら首を縦に振った。
「そ、そうです……僕がやりました……」
「そうだ。それでいい」
ライトは満足そうに笑うと、そのまま訓練場を後にした。
戦士、ライト・スクルド。
彼は、自分より弱い者をいたぶることを何よりも楽しむ、最低な男だった。
自分は強いから勇者パーティーに入れた。逆に、他の冒険者たちは弱いから勇者パーティーに入れない。ライトは本気でそう考えていた。
だからこそ、冒険者ギルドにはほとんど顔を出さない。
だが、訓練場には頻繁に姿を現す。
自分より弱い冒険者が訓練場に現れると、理由もなく絡み、痛めつける。
それがライトにとって、この上ない快楽だった。
「さて、これからどうするかな……」
訓練場を出たライトは、歩きながら呟く。
「最近、ディアモは使い勝手のいい荷物持ちをパーティーに入れねぇからな。ツブキ以外は根性なしですぐに辞めるし……」
ライトは大きくため息を吐いた。
「最近マジで退屈だなー」
訓練場から出てすぐのところで、ライトに向かって拍手をする男がいた。
「パチ、パチ、パチ……」
「……誰だ?」
ライトが睨みつける。
男は緑色の長い髪に、赤いスーツ。そして、背中には一本の槍を背負っていた。
「お前は誰だ? 俺に何の用だ」
「僕かい?」
男はニヤリと笑う。
「僕はサング組のチェイサー。君は勇者パーティーのライトさんで合ってるかな?」
「そうだが。それで?」
ライトは警戒しながら、腰に装備していた剣の柄を握る。
それを見たチェイサーは、両手を前に出してライトを落ち着かせる。
「まぁまぁ。悪い話じゃないよ。君には、いい話を持ってきたんだ」
「それは俺が判断する。早く話せ」
ライトが苛立ったように言うと、チェイサーは、口元を吊り上げた。
「ツブキ君……気になってるだろ?」
「……!」
その名前を聞いた瞬間、ライトの表情が変わる。
「彼を潰したくないかい?」
チェイサーがそう言うと、ライトもまた、ニヤリと笑った。
「……面白そうじゃねぇか」
こうして、ライトとチェイサーの出会いが始まった。




