ナグモ・タキナワ
僕はギルドマスター室を出た後、ナグモを探した。ナグモは冒険者ギルドの入り口で僕を待っていた。
「待ってたぜ、ツブキ。ちょっと付き合えや」
ナグモに言われ、僕はその後についていく。
連れてこられたのは、王都の路地裏。人通りも少なく、建物に囲まれた狭い場所。
そこでナグモは背中に手を回すと、自分の武器を取り出した。
鎌だ。ナグモの武器は鎌なのか。
「お前の実力を見てみたいんだよ。ちょっと付き合ってくんねぇか?」
「こんな狭いところでですか?」
「そりゃあ、ミサキさんを護衛するなら、どこででも戦えるようにしておかないとな」
ナグモはそう言うと、突然、僕に向かって鎌を振り下ろしてきた。
「っ!」
僕はとっさに身体を横へ動かし、鎌を避ける。そして、そのまま影の異能を使ってナグモの背後へ回り込んだ。
「これが異能か。すごいな」
ナグモは振り返りながら笑う。
「でも、それに頼りきりじゃ俺には勝てないぜ!」
僕が剣を振るうと、ナグモは鎌で受け止めた。
セオリー通りなら、背後を取ってそのまま剣で深く斬り込めばいい。
ナグモは、僕の動きについてきている。なかなかやるな。
「どうした? なんでそんなにニヤけてるんだ?」
「……ニヤけてる?」
僕が、にやけてる?
勇者パーティーにいた頃は、こんなに気持ちが高揚したことなんて、ほとんどなかった。
だから、自分が笑っていることにも気づかなかった。
「ごめんね。ナグモとの戦いが楽しくてさ。ニヤけてるなら、多分それだと思うよ」
「戦いが楽しい?」
ナグモは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに口元を吊り上げる。
「ずいぶん余裕だね。なら、俺も全力でやらせてもらうよ!」
ナグモは鎌を振り回し、次々と僕へ攻撃を仕掛けてくる。
僕はその攻撃を避けながら、影の異能を使う。
「シャドウ・トルーパー」
僕の足元から伸びた影が、一体の兵士へと変わっていく。
「これを使うのは久々かな」
僕は影の兵士をナグモへ向かわせる。影の兵士はナグモの攻撃を受け止め、その動きを止めた。
「っ! なかなかやるじゃないか!」
ナグモは鎌を振るい、影の兵士と激しくぶつかり合う。
「異能使いってのは、こうでないとな!」
ナグモが影の兵士と戦っている隙に、僕は再び影の異能を使う。
そして、一瞬でナグモとの距離を詰めた。
「後ろだろ! わかってんぜ!」
ナグモは僕の接近に気づいていた。そして懐から取り出したのは――銃。
「――っ!」
ナグモは僕に向かって銃を撃ち、僕はとっさに影を操り、飛んできた銃弾を止める。
卑怯なことは嫌いだと言っていたくせに、銃を使うのか?
「悪りぃな!」
ナグモは笑いながら言う。
「俺ん中では、銃は卑怯には入らねぇんだよ!」
「なるほどね」
僕は止めた銃弾を影の中へ落とす。
「もちろんだよ。ナグモが満足するまでやろう!」
「いいねぇ、ツブキ!」
ナグモは楽しそうに笑った。
「お前みたいなやつなら、楽しくパーティーを組めそうだ!」
それから僕たちは、互いに全力を出して戦い続けた。
鎌と剣がぶつかり、影と銃弾が飛び交う。何度も攻撃を仕掛け、何度も攻撃を防ぐ。
そんな戦いをしばらく続けた後、ナグモはようやく鎌と銃を懐へ収めた。
「お前の実力はよくわかった。もう、やめておこう」
「そうだね」
「それじゃあ、これからは協力してお嬢を守ろうじゃないか」
ナグモはミサキのことを「お嬢」と呼ぶらしい。
「俺はミサキのことをお嬢って呼ぶからよ」
「わかった。ミサキのことは、なんとしても守ろうか」
僕は笑いながら答える。
「勇者パーティーにいた頃よりは、楽しく過ごせそうだしね」
「ははっ! 違いねぇ!」
ナグモは笑いながら、僕の背中を強く叩いた。
こうして僕は、ナグモと共にミサキを守ることになった。




