調べ物です
月だったものの中が消滅する。
それと同時に、俺達は同時に目を覚ます。
「ここは?」
「ん? 天井がある。って事はだ。」
「どこかに運ばれたのかな。」
にゃ。
みたいだね。
辺りを見渡す仲間達。
そこは、吹き抜けた場所ではなく天井や部屋がある。
どこかのきちんとした部屋だろう。
更に、下からは柔らかな布の感触が伝わる。
「ベッドですか。また船の中ですか?」
「にしては、装飾が違いすぎるけどね。」
「というか、揺れてもないしねー。」
「なら、違うという事だ。」
部屋に飾られた装飾は、以前に見たものではない。
そして、海の上ならではの揺れがない。
その事実が、今いる場所が船ではない事を教えてくれる。
ならばと、リーグルが考察する。
「大方、城のどっかにだろうな。俺達が寝ている間にな。」
「寝ている間……そうだね。」
その言葉に、俺達が寝ていた事実を思い出す。
そして、そこで何が起きたのかもだ。
「覚えてる? 皆。」
「当たり前だ。忘れる筈もねぇ。」
大事な人達との再会と別れ。
そして、交わした約束を。
「歌ったらまた会えるんだよね?」
「そうね。早く歌ってあげないとね。」
「皆、待ってるだろうからねー。」
こうしている間にも、シャル達が歌うのを待っているのだろう。
もしそうなら、早く届けてあげないといけないだろう。
ならばと、フィーが仲間達へと尋ねる。
「そんでは、このまま皆は劇団で続けるって事で良いんだよな?」
「「「勿論っ。」」」
だよねっ。
否定する者などいる筈がない。
誰もが届けたい相手がいるのだから。
そうして、仲間達は演劇への覚悟を高める。
「そういう事なんで、更にしゃんとしないとな。」
「えぇ。あまりにもだらしないと、笑われてしまいますからね。」
「なら、劇団と合流したら早速練習だねっ。」
「うん。この際レパートリーを増やそうっかなー。」
「そりゃ良いな。」
早速、次の演劇に向けての意気込みを見せる仲間達。
これからについて、楽しそうに話し合う。
その様子を、フィーと俺が温かく見守るのだが。
「ねぇ。勿論、二人も協力してくれるよね?」
「あぁ。少しの間になるが付き合おうとしようか。」
にゃ。
俺達も仲間だもんね。
「そうか。にゃんすけもだそうだ。」
「やった。やっぱり、もう一度ぐらい皆とやらないとだね。」
フィーと俺もまた仲間の一人なのだ。
だから、再開する時は俺達も一緒が良い。
そして、仲間と言えばだ。
「そうなると、あと二人だな。」
「リリアとディルだね?」
「あぁ。でも、あいつらはこの国のお偉いさんだからな。」
「演劇どころではないでしょうね。」
仲間といえば、リリアとディルもだ。
しかし、国の事で演劇どころではないだろう。
ならば、こちらに付き合うのは難しいだろう。
「とにかくだ。早いとこ、劇団の皆と合流しなきゃなんねぇんだが。」
「今頃、何してるんだろうね。」
どうなんだろうね。
演劇をするにも、劇団と合流しないと何も出来ない。
その為にも、仲間達は劇団員の身を案じる。
そんな風に、これからの事を話し合っていた時だった。
ガヤガヤガヤ。
「ん? なんだ?」
何か起きてるのかな?
いきなり、部屋の外が騒がしくなる。
それを確かめる為にも、リーグルが部屋の扉を開けて覗き込む。
すると、廊下の先からイルラートが駆けて来るのが見える。
「イルラートか。」
「あ、リーグルさん。起きられたのですね。」
「あぁ。そんで、あんたは何してんだ?」
「えーと。すみません、急いでるので後でっ。」
そう言い残し、何処かへと駆けていく。
そのイルラートの後ろ姿を、リーグルが呆然と見送る。
そんなリーグルへと、タールが質問する。
「どうしたのよ? イルラートがいたみたいだけど。」
「いや、なんか急いでいるみたいで何も教えてくれなくてな。」
「そうなの? 何かあったのかしら。」
「気になるね。」
どうしたんだろ。
リーグル達を気にしている暇すらないようだ。
あきらかに、尋常ではない事が起きているのは確かだ。
そうなると、気になるのは当然だろう。
すると、リーグルが提案する。
「とりあえず追いかけてみようぜ。」
「大丈夫なの? そんな事して。というか、出歩いて良いの? 私達って一応敵な筈だけど。」
「駄目だったら大人しく戻って来たら良い。それに、いつまでもこうしている訳にもいかねぇだろ。」
「それはまぁそうだけど。」
する事もないしね。
侵入者である俺達が城を出歩いて良いものか。
とはいえ、このまま何もせずという訳にもいかない。
駄目なら駄目で、大人しく引き返せば良いだけだ。
ならばと、俺達は部屋から外へと出る。
「それで、何処に行ったの?」
「さぁ?」
「さぁって…。」
何処へ行ったかまでは分からない。
そのせいで、これから何処へ行けば良いのかも分からない。
それでも、リーグルは気にしない。
「まぁ、場所ならその辺の騎士が知ってんだろ。そこらのを捕まえて聞けば良い。知らないなら、調べてもらえば良いだろ。」
「なんか、適当ねぇ。」
「分かればそれで良しだ。とりあえず、行ってみようぜ。」
リーグルを先頭に歩き出す俺達。
イルラートを追って、城の廊下を進んでいく。
途中にいた騎士を捕まえて聞き出すと。
「それなら書物庫ですね。」
「書物庫?」
「はい。よろしければ、案内しますが。」
「おう。よろしく頼むな。」
リーグルの言葉通り、やはり知っていたようだ。
今度は、騎士を先頭に歩いていく。
その際、リーグルがタールへと耳打ちする。
「ほらな?」
「はいはい。ほら、急がないと置いてかれるわよ。」
「おう!」
なんだか上機嫌だね。
予想通りだからか、上機嫌なリーグル。
とにかく、案内されるがままに書物庫へと向かう。
そうして、とある二枚扉の前に到着すると…。
「着きました。ここです。」
「おう。ありがとな。」
「いえ。ではこれで。」
ありがとねー。
案内を済ますなり、騎士が仕事へと戻っていく。
それを見送ったリーグルは扉へと向き直す。
「じゃあ、開けるぜ。」
「うん。」
早速、案内された扉を開く。
すると、奥へと伸びる広い部屋が待ち受ける。
その奥には、書物庫らしく本が並んだ棚が複数見える。
更には、部屋の中央に大きな机が見える。
その机に、何やら積まれた本を漁っている者達が見える。
この城の騎士や従者達だろう。
イルラートの姿も見える。
その光景を、シャルが恐る恐る覗き込む。
「何か、忙しそうだね。」
「みたいだな。」
誰もが忙しそうに、机に積まれた本を漁っている。
そんな状況に、踏み込むのも躊躇われる。
そうして、部屋の中をただ見ていた時だった。
「皆さんっ。」
何処からか声が聞こえる。
その方を見ると、椅子に座っていたリリアがこちらを見ていた。
その横で、姉のシェルートが立ち上がってお辞儀する。
そこへと、リーグルを先頭に向かうと。
「元気そうだな。体調はどうだ?」
「お陰さまで。皆はどうなんです?」
「なんとかな。」
「さっき起き上がったばかりなんだ。」
「そうなんだ。良かった。」
それを聞いて安堵するリリア。
心配をしてくれていたのだろう。
とりあえず、お互い戦いの疲れはなさそうだ。
ならばと、リーグルが質問する。
「それで、これは何の騒ぎなんだ?」
「えーと。霊脈の件に関して、イルラートさんが気づいた事があるって。それの為に調べものをしてるんだ。」
「霊脈? そうか、結局解決してないもんね。」
一連の事件については解決した。
しかし、原因となった霊脈については何も解決していない。
実際に、それによる影響でシェルートは辛そうにしている。
「大丈夫なの? シェルートさん。」
「えぇ。だいぶ楽にはなりましたが、まだ少し。本当なら、私も皆さんと共に調べたいのですが。」
「流石に無茶だって、止められてるんですよ。それで、同じく病み上がりの私が見張っているんです。でも、私達に関係する事だから。」
「そんで、ここで大人しく見てんだな。」
二人の話を聞いて納得するリーグル。
ここの者達は、この姉妹の為に動いている。
それなのに、当の自分達が動かなくて良いのか。
とはいえ、二人とも作業が出来る状況にはない。
その為、ここで大人しく見学しているという事だ。
そんな二人へと、改めてシャルが質問する。
「それで、結局何を調べてるの? 調べたところで解決するような話じゃないと思うけど。」
「この国の伝承らしいですよ。」
「伝承? この国の昔の話って事?」
「はい。そこに解決のヒントがあるそうなのですが。」
伝承という事は、この国の歴史について調べているのだろう。
そして、そこに解決のヒントがあるとの事なのだが。
「それで、どうように解決が…。」
そう言いかけた時だった。
「それなら、私が説明しましょう。」
「え?」
後ろから、また新たな声がかかる。
その方を見ると、イルラートがこちらへと向いて立っていた。
その胸に、大事そうに本を抱えながら。
「先の戦いでの事です。月と一つになったリリアさんの声が私へと流れ込んできた。」
「確かにあったな。」
「えぇ。ですが、それはおかしな事。なにせ、血の繋がった者にしか聞こえない筈なのですから。」
本来なら、血の繋がりがある者にしか聞こえない声だった。
それなのに、関係のないイルラートに聞こえてきた。
それを聞いたマークがある事に気づく。
「つまり、イルラートさんは、ここの王家と近縁の者だった?」
「そうなります。しかし、間違いなく私は隣国に生まれ隣国で育った。つまり、それが意味する事とは…。」
「元々、二つは一つの国だった?」
「はい。そう考えています。」
二つの国の姫の血が繋がっていた。
それはつまり、二つの国が元は同じだった事を示す。
そう考えるしかないだろう。
しかし、それを聞いたタリックが疑問を持つ。
「でもさー。だったら何で二つの国は争ってる訳?」
「そうよね。元々一つなら争う必要なんてない筈よ。」
「というより、そもそも分断した理由も分からん。」
元々、一つの国だった場所が二つに分かれて争っている。
これほど、疑問を持つものはないだろう。
そうなると、イルラートもまた同じで…。
「ですから、それを調べているのです。分断となると、霊脈の力もまた取り合いになるのは分かっていた筈。しかし、そこに何かの糸口があるのではないかと思ったのです。」
「なるほどね。」
霊脈の取り合いになるのを承知で分断した。
しかし、そこにこそ解決の糸口があるのではと察したのだろう。
なにせ、霊脈を失うのはリスクが大き過ぎるのだから。
ならばと、話を聞いていたフィーが提案する。
「そういう事なら、私も協力させてもらおうか。」
「フィーさん?」
「いや、なに。解決する可能性があるのなら放ってはおけまい。それに、王とも約束したからな。」
にゃ。
じゃあ、協力してあげないとだね。
王との戦いでの事だ。
解決するまで付き合うと約束したのだ。
ならば、ここで無視をする訳にはいかない。
「そういう事でだ。私はここで一緒に調べるとする。皆は先に戻って…。」
「いや。俺達も協力するぜ。」
「え?」
「俺達だって当事者だぜ? 仲間外れは困るな。」
「そうだよ。私達は仲間なんだしね。ね? リリア。」
「皆さん…。」
シャルの言葉に胸を押さえるリリア。
仲間だからこそ、シャル達もまた動くのだ。
大事な仲間を守る為に。
すると、フィーが頷く。
「では、皆で調べよう。」
「おうよ。いくらでも付き合ってやるぜ。イルラート、早速指示を頼む。」
「そうですか。では、こちらを。」
「え?」
え?
胸に抱えていた本をフィー達へと押し付けるイルラート。
初めから、そのつもりで抱えていたかのように。
それを見たリーグルがイルラートを睨む。
「初めから、付き合わせるつもりだったな? こんにゃろう。」
「なにぶん、昔の事過ぎて探すのに苦労しているもので。では、よろしくお願いしますね。」
元から付き合わせるつもりで接触してきたようだ。
ならば、断られても押し付けるつもりだったのだろう。
そんな用事だけ済ませると、自分の役目へと戻っていく。
そんなイルラートを、俺達が見送ると…。
「相変わらず、マイペースな奴だな。」
「まぁ、どっちにしろ目的は同じなのだ。早速取りかかるとしよう。」
「そうだな。とっとと済まして王女さんを楽にしてやろうぜ。」
目的が同じなら、無駄に考える必要もないだろう。
早く取りかかるのが得策だ。
そんな俺達へと、当の姉妹が頭を下げる。
「ありがとうございます皆様。」
「ありがとう。」
「気にするな。待ってろ。すぐに見つけてやるからな。」
もう少しだからね。
そう言いながら、早速と本を開く俺達。
そうして、姉妹と国を助ける為に動くのだった。




