二つの国の関係です
ただひたすらに本を読み漁る者達。
俺達もまた、渡された本を読み終え積まれた本へと向かう。
そうして、長い間ただひたすら文字と睨み合う。
すると、リーグルが一冊の本を掲げる。
「ん? もしかしてこれか?」
「どうした? リーグル。」
「それがだ。霊脈? について書かれた本を見つけてな。」
そんなピンポイントに?
その本をこちらに見せてくるリーグル。
霊脈の事となると、まさに俺達と関わるものだ。
それを聞いたイルラートがこちらへと寄ってくる。
「見せてもらってもよろしいですか?」
「おう。これだ。」
リーグルから本を受け取るイルラート。
早速、その本を開いて中を見る。
そんなイルラートへと、フィーが質問する。
「何が書かれてるんだ?」
「霊脈による影響。が、記されています。引き出した霊脈の力によって環境がどう変わったのかをですね。」
おぉ。
まさに求めてた奴じゃない?
国を良くする為に、霊脈の力が引き出されている。
ならば、霊脈がどのように影響したのかを記録するのは当然だろう。
この本は、その記録が記されたもののようだ。
しかし、タリックが疑問を持つ。
「でもさー。影響なんて調べたところでじゃない? 霊脈の力で自然が豊かになりましたー。なんて、なんの関係があるのさ。」
「まぁ、確かにそうだよね。」
それはそうなんだけどね。
求めているのは、霊脈の事であっても二つの国に関する事だ。
なので、霊脈の事が単体で書かれてあっても意味がない。
しかし、それを聞いたリーグルが否定する。
「それはそうだが、実は気になる文があってな。」
「気になる文? なにそれ?」
「あぁ。本の最後の方に、霊脈によって国中に病がまんえいした。って、書かれててな。」
「国中? 王家の人達じゃなくて? 規模がおかしくない?」
「あぁ、そうだ。明らかにおかしい。」
影響が大きすぎるよね。
今調べているのは、霊脈を引き出す王家の者への問題だ。
しかし、書かれてているのは国中へと及んだ影響だ。
そうなると、不自然な程に影響の規模が広がりすぎている。
それを聞いたマークが疑問を持つ。
「しかし、おかしいですね。今も強い影響は出てますが、国全体に及ぶ程ではない。」
「そうだ。今この国は沢山の土地を取っているが影響は王家の中だけだ。そうなると、これ以上の……いや、隣の国を取ってでもないとありえねぇ。」
「じゃあもしかして。」
「そうだ。つまり、ここに書かれているのは二つの国にまつわる話って事になるな。」
そう考えるのが普通だよね。
一つの国の影響だけではありえない事だ。
そうなると、もう一つの国が関わっていると思うしかない。
すると、イルラートもまた問題の文を見つける。
「これですね。人は病に倒れ、作物もまた枯れ果てる。確かに、国中の影響が言及されています。一つの国だけの話とは思えません。皆さんの考えで間違いなさそうです。」
「それじゃあやっぱり、この国だけの問題じゃないって事?」
「えーと。今、探しますね。」
シャルの疑問に、本を読み進めるイルラート。
霊脈の強い影響による被害を重点に調べていく。
すると、とある文に目を止める。
「これはっ。」
「どうしたの?」
「えぇ。それが…。」
なぜ被害が王家以外にも及んでいるのか。
なぜ被害の規模が大きいのか。
その理由は…。
「この地に流れる力は強すぎる。これでは、我ら王家のものだけでは抑える事は出来ない。場合によっては、この土地の放棄も考えられる。だそうです。」
「地に流れる力って霊脈の事だよね? それが強すぎるって事は……。」
「それのせいで、この地が滅びかけたという事ですね。養分も過剰になれば毒になりますから。」
「この国の王女さんみたいにだな?」
「そういう事です。」
養分が無ければ、自然のものは育たない。
とはいえ、過剰になると逆に負担となってしまう。
そして、それは人も同じ事だ。
それを聞いたシェルート達が呟く。
「私達のように…ですか。この国でそんな事があったなんて。」
「うん。私も知らなかった。」
「無理もありません。昔の事ですから。」
かろうじて見つけた一冊のみに書かれたものだ。
つまり、記録に残らない程の昔の事の話だ。
そのようなものを知らないのは仕方のない事だ。
しかし、イルラートが気になるのはそこではない。
「ただ、それは良いんですよ。問題は最後の部分です。場合によっては、土地の放棄も考えられる。つまり、この土地を放棄するつもりでいた事になります。」
「でも、放棄されていないよね?」
「えぇ。つまり、解決策を見つけたという事になります。」
放棄しないといけない程に、この土地は駄目になってしまった。
だというのに、今なお土地に国がある。
つまり、解決する方法を見つけたと考えるのが普通だろう。
それを聞いたリーグルが質問する。
「それで、どうやって解決したんだ?」
「調べてみますね。えーと。」
リーグルの疑問に、更に読み進めるイルラート。
すると、ある文にて目を止める。
「あった。これは…。」
「どうしたんだ?」
その文を見たイルラートが言葉を詰まらせる。
それでも、説明を続ける。
「この土地は、放棄しなければならない程の危険な場所だ。しかし、ここは我らが生まれ育った場所。捨てるなんて出来る筈がない。」
「まぁ、それはそうだろうね。」
どんな土地だろうが生まれ育った場所なのだ。
そのような場所を捨てる事など受け入れられる筈がない。
すると、シェルートが質問する。
「それで、先祖はどのような決断を下したんでしょう。」
「それがですね。一つの国、一つの王家では耐える事が出来ない。だから、今の王家を二つに分けて、負担を分担する事にしたと…。」
「「「っ!?」」」
っ!?
その一文に、言葉を失う一同。
一つの国を二つにした。
まさに、俺達が求めた答えが書かれてあったのだ。
それを聞いたシェルートが驚きながらも呟く。
「そ、それってまさか、私達の国は争っていた訳ではなく。」
「強い霊脈の力を分散させる為に、二つに分かれただけだった。」
「つまり、私達の国は…。」
「やはり、一つの国だった。そうなりますね。」
シェルートとイルラートが見つめ合う。
二つの国は、霊脈を奪い合ってた訳ではない。
むしろ、分散させる為に分かれた一つの国だった。
すると、それを聞いたシャルが疑問を持つ。
「じゃあさ。そもそもどうして争い合う事になったの?」
「おそらくですが、時代が進むにつれて交流が途絶えた。それと同時に、分かれた原因も埃に紛れて分からなくなったのでしょう。」
「そのせいで、私達の国はお互いを霊脈の力を奪う相手だと誤認してしまった。」
時代が進めば交流も減る。
歴史もまた、埃と共に隅へと押しやられる。
そうして、二つの国はお互いを敵と思うようになった。
そんな二つの国の歴史は、その事によって起きた悲劇だったのだ。
ならばと、イルラートが本を閉じる。
「もしこの話が本当だったら。二つの国が争ってる場合ではありません。すぐに、私の国にも伝えないと。」
「はい。すぐに二つの国で会談をしないと。」
「えぇ。通信機をお借り出来ますか?」
「勿論。すぐに案内させます。」
シェルートが近くの従者を呼びつける。
そして、従者と共にイルラートが去っていく。
それを見送ったシェルートが俺達を見ると…。
「皆さん、ありがとうございます。私もすぐに両親へと知らせに向かいます。」
「えーと、つまり解決するって事?」
「分かりません。ですが、好転するのは間違いないでしょう。」
事実が分かったところで、原因の解決に至った訳ではない。
それでも、悪い結果にはならないだろう。
それを聞いたリーグルが微笑む。
「そうか。良かったな。」
「はい。本当にありがとうございます。本当に…。」
俺達へと深く頭を下げるシェルート。
その横で、リリアもまた頭を下げる。
「私からも。ありがとう。」
「構わねぇよ。仲間として当然の事をしたまでだぜ。」
だね。
仲間の為に動くのは当然の事だ。
それを聞いたシェルートがリリアを見る。
「素敵な仲間を見つけたのね。リフィール。」
「うん。皆、大事な私の仲間なんだよ。」
そう自信を持って答えるリリア。
それを聞いた俺達は、照れ臭そうに笑う。
それを誤魔化すように、リーグルが促す。
「さ、用事があんだろ? 行かなくて良いのか?」
「おっと、そうでした。お礼はまた後程。では…。」
「また後で。」
「おう。」
再びこちらへと頭を下げたシェルートが去っていく。
その後を、リリアが追いかける。
それからというもの、お城は更に騒がしくなる。
来たる二つの国による会談に向けて。
その準備が、城をあげて進んでいくのだった。




