もう一人のフィーとの戦いです
もう一人のフィーが剣を構える。
それを見たフィーも剣を引き抜く。
それを見た魔族が笑う。
「ヒヒッ。そいつ、体を乗っ取ろうとしているな。気をつけた方が良いぞ。」
「気を付けろと言われてもなっ。」
やらなきゃ駄目なんだね。
もう一人のフィーの目的は、フィーの体を奪う事だ。
ならば、無視をする訳にはいかない。
すると、相手が足に力を入れる。
「どうやら、待ってはくれなさそうだな。」
にゃ。
だね。
「仕方ないが、行くぞ。」
そう言いながらも、俺達もまた構える。
戦いが避けられないのなら、迎え入れるしかない。
そんな俺達へと、もう一人のフィーが動く。
「………。」
「っ! いきなりかっ!」
相手が踏み込むと同時に剣を振るう。
それに対して、フィーが後ろへと踏み込む。
「はっ!」
「………。」
踏み込んだ反動で、相手の剣を自身の剣で受けるフィー。
それにより、激しい力が伝わるが受け止めきる。
「やはり私か。本気で受けて正解だっ…。」
そう言いかけた時だった。
フィーの横から下駄が迫る。
「くっ。」
それを見たフィーが、体を逸らして避ける。
しかし、今度はもう一人のフィーが下駄を振り下ろす。
「ちょっ。」
それに対して、フィーが剣で下駄を逸らす
すると、今度は剣が迫る。
「まっ。」
立て続けの攻撃だ。
それでも、フィーが剣で受ける。
「いい加減にしろっ。にゃんすけ! 払ってくれ!」
にゃ!
任せて!
このままでは、相手の攻撃が続くばかりだ。
ならばと、もう一人のフィーへと俺が蹴りかかる。
しかし、簡単に避けられてしまう。
とはいえ、距離を取る事は出来た。
「助かったっ。しかし、まんま私だな。お陰で、なんとなく動きが分かるがなっ。」
にゃ。
だね。
じゃなかったら、攻撃を受けてたよ。
相手の動きは、フィーの動きのままだ。
だからこそ、相手の攻撃を凌ぐ事が出来る。
その光景を見た魔族が笑う。
「ヒヒッ。楽しそうだな。」
「どこがだっ!」
どこがだよっ!
「というか、ここを作った主だろうっ。どうにか出来ないのか?」
「出来はする。代わりに、体を乗っ取られるけどな。ヒヒッ。」
「じゃあ、却下だっ…。」
そう言いかけた時だった。
相手がこちらへと剣を振るう。
「っとぉ!?」
それに対して、フィーが剣で逸らす。
それと同時に、距離をとって構え直す。
「とにかく、このまま戦うしかないか。私達も纏うぞ!」
にゃっ!
だねっ!
向こうが心装なら、こちらも心装だ。
その為にも、俺はお面になる。
筈だったのだが…。
あれ?
「どうした?」
お面になる…。
なる…。
お面になろうと試みる。
何度も試みる。
のだったが…。
「まさか、なれない……とか?」
にゃあ。
みたい。
「……まじでかっ!?」
まじです。
どうやら、そうみたいだ。
何度試みようがお面になれない。
つまり、心装に至る事が出来ないのだ。
それなのにも関わらず…。
「………。」
「うおっ!?」
もう一人のフィーが迫ってくる。
こちらの都合はお構いなしだ。
それでもと、フィーが剣で受けるのだが。
「まさか、生身で戦えというのかっ。」
にゃっ。
そうなるねっ。
「くうっ。冗談になってないぞっ。」
迫り来る攻撃を、なんとか凌いでいくフィー。
とはいえ、相手はこちらの上位互換だ。
そのような相手に、なんの強化もなく戦えと言うのだ。
そんな事も出来る筈もなく、遂にはお腹に下駄がめり込む。
「ぐうっ。」
フィー!
受けたフィーが後ろへと吹き飛ぶ。
しかし、そんなフィーへと容赦なく相手が迫る。
それに対して、倒れたままフィーが剣を構える。
「くっ。」
振り下ろされる相手の剣を、自身の剣で受ける。
そうしながらも、相手を蹴りあげ吹き飛ばす。
それでも、相手はふわりと体勢を変えて着地する。
ならばと、フィーも起き上がる。
すると、その光景に魔族が喜ぶ。
「ヒヒッ。良いぞ。どんどん盛り上がってくれ!」
「だから、遊んでるわけではないっ! ったく。とはいえ、このまま受けてばかりはいられん。にゃんすけ、こちらから攻めるぞ!」
にゃ!
攻撃は最大の防御ってね!
受けるだけでは、いつしか押し負ける。
ならば、攻撃が出来ないように迫れば良い。
そうして、今度はこちらから仕掛ける。
「行くぞ!」
にゃ!
うん!
相手が動く前に、一気に飛び込む。
まずは、先に出た俺が蹴りかかる。
にゃっ!
えいっ!
それでも、簡単に避けられてしまう。
しかし、それで良い。
そうして俺が作った隙へとフィーが斬りかかる。
「はあっ!」
それでも避けられてしまう。
ならばと、再び俺が蹴りかかる。
にゃっ!
ここっ!
それでも避けられてしまう。
やはり、こちらの攻撃は通じない。
それでも、交互に攻め続ける。
「これならっ。」
攻撃は出来ないでしょ?
こちらの攻撃は通じない。
それでも、相手は攻撃に転じられない。
それどころか、次第にこちらが押していく。
そうして、フィーが隙を見つけると…。
「今だっ! 合わせろ!」
にゃー!
おー!
同時に攻撃を仕掛ける俺達。
前後からの攻撃で、相手は両方の対処が出来ない。
それでもと、相手が下がりながら腕を振るう。
「………。」
次の瞬間、風の魔法が発生する。
それにより、俺達は同時に飛ばされてしまう。
「くうっ!」
うにゃっ!
突然の突風に、耐えられず飛ばされてしまったのだ。
それでもと、なんとか着地して見せるのだが。
「魔法かっ。確かに、使えるのは当たり前かっ。」
こっちが使えないからって!
心装の姿ならば、魔法が使えるのは当然だ。
しかし、そうなると理不尽さが上がってしまう。
こちらは使う事が出来ないのだから。
しかし、それだけでは終わらない。
「………。」
風がもう一人のフィーの周囲に渦巻く。
それだけではなく、風に吹雪が混ざる。
更には、頭上から雨や雷が落ちる。
「な、なんだっ!? 同時に複数の魔法をだと!?」
そんなのありなの!?
一度に発動出来るのは一つだけだ。
だというのに、一度の発動で複数の魔法が放たれている。
普通ならありえない事だ。
これには、魔族も楽しそうに盛り上がる。
「ヒヒャヒャ。まるでお祭りだなっ。知ってるぞ。皆で一つになって騒ぐんだよな?」
「まぁ、だいたい合ってはいるが……。ん? 一つだと?」
魔族の言葉に、改めてもう一人の自分を見るフィー。
同時に複数の魔法が出る事はありえない。
ならば、導き出される答えといえば……。
「もしかして、元々一つの魔法だった?」
そう考えるしかないだろう。
ならば、一度の発動で複数の魔法が出るのも頷ける。
そう考えをまとめていた時だった。
にゃ!
フィー!
「ん? んおっとっ!」
急に相手が飛び込んできた。
相手の剣を自身の剣で受けるも、激しい風に押され続ける。
「んぐぐっ!」
これには耐えられず、剣を逸らして横に飛び退く。
そうして、起き上がると同時に剣を構える。
「そういえば、戦闘中だったな。考えている時間はないかっ。」
今はまだ戦闘中なのだ。
なので、こちらの都合など考えずに相手は動く。
余計な事などしている場合ではない。
「とは言ったもののだっ。」
それが分かったところで、どうにかなるものではない。
再び相手が襲いかかってくる。
そうして、再び剣を打ち合おうとするのだが。
「ぐっ。」
剣が風で押されて、上手く構える事が出来ない。
一方、向こうは平気で剣を振るってくる。
それでも、なんとかして防ぐも剣を下駄で蹴られてしまう。
「っ。」
それにより、後ろへと大きく滑るフィー。
それでも耐えるのだが、相手は隙を見逃さない。
「………。」
もう一人のフィーが手を振るのに合わせて雷が走る。
そうして生まれた雷がフィーへと駆ける。
「っ!」
それでも、雷を剣で払う。
すると、そこへと相手が飛び込んでくる。
「くっ。」
これは受けられないと、横へと飛び退き避ける。
しかし、そんなフィーへと下駄が迫る。
「まずっ。」
体勢を立て直したばかりで受ける事が出来ない。
ならばと、そこに俺が飛び込む。
にゃっ!
させないよっ!
迫る下駄を、俺が足で蹴り受ける。
しかし、止めるには至らず逸らすだけにとどまる。
そうして、フィーの前に着地するのだが。
にゃ。
今のって。
「にゃんすけもか。風が邪魔で攻撃がままならん。」
にゃっ。
こう常に纏われてるとね。
もう一人のフィーの周りに渦巻く風が攻撃を止めるのだ。
正確には、インパクトをずらされるといったところだろうか。
これでは、こちらの攻撃は通じないだろう。
「このままだとじり貧だ。続ければ、こちらが押し負ける。負けたらどうなるか分からんがな。」
「安心しろ。お前は本体じゃない。だから、死ぬ事はないぞ。」
「なら安全だな。」
にゃ。
だね。
「代わりに、体を乗っ取られてしまうけどな。」
「じゃないっ!?」
じゃない!?
「結局、そうなってしまうのかっ。」
戦わなくても、負けてしまっても体を取られてしまう。
なので、何があっても勝たなくてはならないのだ。
しかし、その為の手段がない。
「考えろ。どうすれば、強い一撃が叩き込める?」
そう言いながら、相手を視界に収めながらも自身の剣を見るフィー。
そして、その剣に纏わせてるものを見つめる。
「やはり、これしかないよなっ。」
今放つ事の出来る強い力。
それは、剣に纏った闘気のみだ。
ならばと、剣先に闘気を溜める。
「行くぞっ!」
そうして、もう一人の自分へと踏み出すフィー。
そのまま、相手へと剣を叩き込むのだが。
「くうっ。駄目かっ。」
あっさりと防がれてしまう。
フィーだけの闘気では通じない。
代わりに、下駄を胴体へと叩き込まれてしまう。
「ぐうっ。」
フィー!
再び吹き飛ばされてしまうフィー。
それでもと、起き上がるのだが。
「私一人の闘気では駄目か。にゃんすけが纏えたらな。」
にゃあ。
面目ない。
「いや、気にするな。私が弱いのがいけないのだ。」
フィーの闘気では、相手の風を貫けるほどは溜まらない。
かといって、頼みのにゃんすけも纏えない。
これではやはり、こちらの攻撃は通じない。
「せめて、もう一振あれば。」
「あるぞ。」
「え?」
その時だった。
横に魔族が降り立つ。
「流石に、これ以上荒らされるのは嫌だからな。」
「お前…。」
「でも、今度はおいらが乗っ取るかもな。」
「っ!?」
魔族の力があれば、足りない分を補える。
しかし、それは魔族の瘴気を受ける事になる。
つまり、目の前の相手とする事は変わらない。
それでもと、フィーは迷わない。
「信じるさ。友だからな。」
にゃ。
友だもんね。
「……ヒヒッ。」
その言葉に、詰まりながらも笑う魔族。
友を疑う事など、フィーがする筈がない。
ならばと、魔族がもう一人のフィーを見る。
「そんじゃ、とっとと邪魔物を追っ払おうか。ここは、俺達だけの遊び場からな。」
「そうだな。思い出の場所だからな。」
にゃ。
だから、守らなきゃだね。
「ヒヒッ。そんじゃ、おいらの力、受け取りな。」
魔族がフィーの肩に飛び乗る。
その時だった。
フィーの剣に瘴気が纏わりつく。
「この力はっ。」
その力にフィーが気づく。
その力は、何度も感じてきた力。
「そういう事だったんだな。」
その力を、改めて闘気として纏い直す。
そして、そんな剣を構える。
「これならっ。」
「いけるかもな。ヒヒッ。」
剣を纏う瘴気は、気を狂わせるような邪悪な力だ。
だというのに、今はこの力が頼もしい。
すると、それを見た相手が動く。
「………。」
相手がこちらへと踏み出す。
それに対して、フィーもまた前へと踏み出す。
「負けん!」
負ける理由など、何処にもない。
そのまま、お互いの距離が縮まる。
直後、お互いの剣がぶつかり合う。
「ぐうっ。」
「………。」
激しく剣を押し合う両者。
実力は拮抗している。
そんな押し合いが続くのだが。
俺だってっ。
そう言いながら、飛び上がる俺。
そうして、もう一人のフィーの頭上へと飛びかかると。
にゃ!
友だもんね!
「にゃんすけ!?」
相手の顔面を蹴りあげる。
それにより、相手の力が緩む。
にゃっ!
今だよっ!
「っ! 任せろ!」
俺が作った隙を、フィーは逃さない。
緩んだ隙に、自身の力を流し込む。
そして…。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
雄叫びをあげながら、相手の胴体へと剣を叩き込む。
更には、胴体を裂いた衝撃が空間を駆ける。
それと同時に、相手の魔法も裂けて宙へと散る。
「やったか。」
「みたいだな。」
もう一人のフィーはもういない。
代わりに、瘴気が混ざった魔法の残骸が宙に舞うだけだ。
それによる結晶を、体勢を直したフィーが見上げる。
「お前……だったんだな。」
瘴気混じりの結晶を見上げながらも呟く。
肩にいる魔族へと語りかけるように。
「不死身の魔族を斬れる力をくれていたのは。」
その力は、不死身の力を斬ってきた力だ。
その力が、肩の魔族から流れてきた。
つまり、そういう事なのだ。
すると、魔族もまた見上げながら呟く。
「約束したからな。また一緒に遊ぶって。俺達は友だって。」
「そうか。ありがとな。」
にゃ。
ありがとね。
友だから力を与えてくれたのだ。
また一緒に遊べるようにと。
友を助ける為にと。
それを聞いた魔族が笑う。
「ヒヒッ。なんでお礼だ? 友なら助けるのは当然だろ。」
「そうだな。だが、私はお前を助けられなかった。それどころか……。」
フィーが言葉を詰まらせる。
俺達は、魔族を助ける事が出来なかった。
それどころか、剣で斬ってしまった。
しかし、魔族は否定する。
「そんな事ないぞ? おいら、今とっても幸せだからな。」
「……そうなのか?」
「あぁ、そうさ。友って良いものだよな。」
「……そうだろう? 良いものだろう?」
「あぁ。とってもとっても良いものだ。」
魔族の心は、既に救われていたのだろう。
一緒に遊んだあの時に。
友になったあの時に。
だからこそ、斬られた事は気にしない。
助けられなかった事は気にしない。
それ以上の気持ちをもらっていたからだ。
そんな魔族が楽しそうに笑う。
「じゃあ、邪魔者もいなくなった事だし。続きといこうか。まだ、捕まえないといけない相手がいるみたいだしな。」
「あぁ。今度は、私達と一緒に捕まえよう。」
にゃ。
一緒にだよ。
「そうだな。今度は、おいら達で鬼になる番だ。」
今度は、三人で追いかける。
追うのは、今なお戦い続ける氷帝達だ。
ならばと、三人で声を合わせる。
「「おにごっこの始まりだ。」」
おにごっこの始まりだね。
その直後だった。
フィーの本体が楽しそうに笑う。
「ヒヒッ。」
「ふん。いつまでも笑っていられぬ事だな。」
そうして、再びフィーと氷帝がぶつかり合うのだった。




