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猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
幻影染める月と二つの戦の国<後編> リラリアハル王国編

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かつての約束です

 謎の空間の中央にそびえ立つ大樹。

 その大樹の周囲だけ、異様な雰囲気を醸し出していた。

 そんな空間へと、俺達は足を踏み入れる。


「景色はあの時と同じなようだが。」


にゃあ。


 なんだか、違和感を感じるね。

 まるで、ここだけ切り取られたみたいなさ。


 周囲の森とは繋がっている筈だ。

 だというのに、この空間だけが孤立しているように感じる。

 風、空気、そこにある物質、全てが異様に感じる。

 それらを感じながらも、大樹を目指して歩いていると。


ヒヒッ。


「っ! まただっ。」


 一体どこから?


 立ち止まった俺達は、周囲を見渡す。

 そうして、声の主を探す。

 しばらく辺りを見ていると、俺が大樹の後ろにそれを見つける。


にゃ!


 いた!


「どこだ?」


にゃっ!


 あそこ!


 フィーを誘導するように駆け出す俺。

 そうして、大樹の後ろに回り込む。

 そんな俺を追うように、フィーもまた回り込む。

 しかし、そこには何もいない。


「誰もいないが。」


にゃぁ。


 おかしいなぁ。


 間違いなく、そこにいた筈なのだ。

 それなのに、姿が見当たらない。

 それでもと、辺りを探していた時だった。


ヒヒッ。


「っ。まただ。」


 再び、どこからか声が聞こえてくる。

 その声を、俺達が再び探る。

 すると、今度はフィーが花壇でそれを見つける。


「いたっ。」


にゃ?


 どこ?


 フィーが花壇へと駆けていく。

 それを追って俺もまた駆ける。

 そうして、花壇奥へと回り込むのだが。


「いないか。」


にゃ。


 いないね。


 またしても、誰もいない。

 間違いなく、ここにいた筈なのにだ。

 その事実に、辺りを見渡すのだが。


「おかしいな。見間違いか? いや、にゃんすけも見た訳だからな。」


にゃあ。


 二人とも見たとなるとね。

 見間違いとは思えないよ。


 一人だけならまだしもだ。

 二人して見たのなら、否定する事は出来ない。

 その事実に、フィーがある事に気づく。


「まさかだが、私達をおちょくってるのか?」


にゃ。


 ありえるね。


「だろ? 初めて会った時もそうだったからな。なら、話は早い。探しだして見つけてやるぞ!」


にゃー!


 おー!


 あの時のように、姿を隠している。

 あの時のように、俺達をおちょくる為に。

 ならばと、俺達は左右に分かれて空間を調べる。


ヒヒッ。


「いたっ!」


 時には、庭に詰まれた鉢植えの向こうに。


ヒヒッ。


にゃ!


 いた!


 時には、遊具のようなものの中に。


ゴポポポ。


「そこか……それ、息が出来ているのか?」


 時には、小池の中に。

 時には、明らかにサイズが違う場所に。

 時には、既に探した場所に。


ヒヒヒヒッ。


 しかし、毎回寸前の所で姿を消す。

 ただただ、空間に笑い声が響くだけだ。

 そうして、探し疲れた俺達が大樹の前で一休みする。


「駄目だ。捕まらん。」


 駄目だ。捕まらない。


 どれだけ探しても意味がない。

 ただ、こちらの体力が疲れるだけだ。

 こうして座り込むのも無理はない。

 そうして、背中を合わせて休んでいると…。


「ヒヒッ。やっぱり、お前達は下手くそだな。」


 大樹の幹に、そいつが現れる。

 そいつは、笑いながら俺達を見下ろしている。

 その様子を、フィーが横目で見る。


「無茶を言うな。消えるなんて反則だ。」


にゃー。


 ルール違反だー。


「まぁそう言うな。結構楽しかったぞ?」

「そっちはな!」


にゃー。


 そっちはね!


 必死に探す姿を楽しんでいたのだろう。

 そいつは、満足そうに笑っている。

 そんな様子に、俺達が溜め息をつきながらも微笑む。

 しばらくすると…。


「……生きてたんだな。」

「まあな。約束したからな。」

「だな。」


にゃ。


 守らなきゃ駄目だもんね。


 かつて交わした約束。

 また、一緒に遊ぼう。

 その約束を果たしに来たのだ。

 ならば、仕方のない事なのだ。

 そんな魔族へと、フィーが質問する。


「なぁ。ここは一体どこなんだ?」

「ここは、お前の中さ。俺が作った。」

「作ったって、また勝手に……。」


 ほんとだよ。


 ここの空間は、魔族がフィーの中に作った場所のようだ。

 見覚えがあるのは、この場所しか知らないからだろう。

 ただ、そうなると一つ疑問が湧く。


「そもそも、なんでお前が私の中にいるんだ?」

「さぁ? 黒いモヤモヤに包まれてたら、いつの間にかお前の中にいたからな。」

「黒いモヤモヤ? まさか、瘴気の事か。」


にゃ。


 だろうね。


 当てはまるものと言えば、瘴気以外にありえない。

 確かに、フィーの中に瘴気が流れ込んでいた。

 その時に混じって、魔族も流れ込んで来たのだろうが。


「では、にゃんすけがいるのは?」

「たぶん、お前と一つになってたからじゃないか? ここは、お前の心の中に作った場所だからな。ヒヒッ。」


 確かに、心装って心同士が繋がって起きてるもんね。


 心装よって、フィーと俺との心が繋がっていた。

 そのせいで、フィーの心の中に作った空間に俺も来たのだろう。

 それを聞いたフィーが、一時納得するのだが…。


「ちょっと待てよ? では、現実の私はどうしてるんだ? 確か、帝と戦っていた筈だが。」

「現実のお前か? それなら、暴れてるぞ。」

「暴れてる!?」


 暴れてる!?


「そうさ。敵にやられて意識を失ったからな。」

「そ、そうか。覚えがないが…。」


 なんか、キラキラしてるのは見たけど。


 凍った瞬間の事を、覚えていないのだ。

 凍ったと同時に、意識を失ったからだ。

 その事実に、フィーがうつむく。


「そうか。皆を守れなかったのか。」

「守れてるぞ? 今もまだ戦ってる。」

「いや、そうじゃないんだ。そういう事ではな。」

「ん? そうなのか? 面倒な奴だなぁ。」

「面倒で結構だっ。」


 こればかりはね。


 守れているという問題ではないのだ。

 実際に、暴走しなければ負けている。

 それを、守れているとは言えないのだ。

 自分達で守ってこそなのだから。

 そうして落ち込む俺達だったのだが…。


「じゃあ、続きをするぞ。」

「いや、今じゃないと駄目なのか?」

「なんだ? やらないのか?」

「いや、遊んでやりたいのは山々だが、今は帝をどうにかしないといけないんだが。一度負けたとはいえ、仲間達を放っておく訳にもいかないからな。」


にゃー。


 今すぐに、助けに行かなきゃね。


 一度とはいえ、負けは負けだ。

 しかし、仲間達を見捨てるかどうかは別の話だ。

 ならば、すぐに戻らないといけないのだが。


「じゃあ尚更だな。お前達を戻せるのはおいらだけだぞ? ヒヒッ。」

「なっ!? おい! 脅す気かっ!」


にゃ!


 卑怯だぞ!


「脅す気じゃなくて、実際に脅してるんだけどなっ。」

「うるさいっ!」


 魔族でないと、元の体には戻れない。

 つまり、ほぼ強制という事になる。

 ならば、脅しそのものである事に間違いないだろう。

 これには、俺達は叫ばざるをえない。


「おい! すぐに戻せ!」


にゃー!


 戻せー!


「やだね。戻りたいなら、おいらを捕まえてごらん。じゃあねっ。」

「あっ!?」


 逃げた!


 俺達の叫びも無視して逃げ始める魔族。

 跳ねるように、空間を自由に逃げ回る。

 そんな魔族を、俺達は追いかける。 


「おいこら! 待て!」

「待たないよー!」


 ちょっ。

 こんな事、してる場合じゃないのにーっ!


 こうしている間にも、仲間達に危険が及んでいる。

 すぐに助けに行かないといけない

 だというのに、魔族を捕まえない事には何も出来ない。

 ならばと、魔族を追いかける俺達だったのだが。


「待てこら! 大人しく私達を返して…。」


 そう言いかけた時だった。

 どこからか、冷たく凍りつくような気配を察知する。


「っ!?」


 っ!?


 その気配に、感じた方を見る俺達。

 すると、そこに何かが立っているのが見える。

 その何かを、俺達は見つめる。


「なんだ? あれは。魔族、お前の仕業か?」

「違う。あれはもっと前からいた奴。」

「前からいた?」

「そう。おいらが来る前からな。」


 つまり、生きてる物って事?


 魔族が来る前から、フィーの中にいた存在。

 その何かは、何もせずにただ立ち尽くしている。

 と思われた、その時だった。


「…………。」


 何かを呟くと同時に、大量の瘴気が湧き上がる。

 それに混じって、大量の氷が吹き荒れる。

 それを見たフィーが目を見開く。


「氷の魔法? まさか、帝かっ! ……いや、帝と会ったのは先程だ。な。」

「おいらがお前の中に入ったのはもっと前だぞ?」

「では違うか。一体、こいつはなんなんだ?」


 帝じゃないとしたらなんなんだろう?

 他に氷の魔法を使うってなると…。


 氷を使うとなれば氷帝だ。

 しかし、氷帝だと時系列的にありえない。

 ならばと、様子を見ていた時だった。

 何かの姿が変わっていく。

 羽衣を纏った女性の姿へと。


「っ!? まさかっ!」


にゃ!?


 嘘でしょ!?


「ヒヒッ! お前だ! お前の姿に変わったぞ!」

「あぁ。しかも、あの姿はっ!」


 心装の…姿だよね……。


 まさに、心装に至ったフィーの姿へと変わったのだった。

 そのもう一人のフィーが手を前に突き出す。

 すると、その手の中にフィーの剣と同じ形の剣が現れる。


「剣だと? もしかして、やる気か?」


 じゃないと良いけどっ。


 剣を持ったという事は、そういう事だろう。

 そんなもう一人のフィーが見慣れた構えを取る。

 すると、フィーへと一気に踏み出した。


「……っ。」

「っ!?」


 やっぱ来るよねっ!?


 こちらへと迫るもう一人のフィー。

 それと同時に振られる剣を、俺達が左右に飛んで避ける。

 そうして、体勢を直してもう一人のフィーを見る。


「なんなんだ一体っ。何故狙われないといかんのだっ。」


にゃっ!


 理由を言ってよっ!


「さあね。ただ一つ分かる事は…。」

「分かる事は?」


 分かる事は?


「どうにかしないと斬られるって事だな。ヒヒッ!」

「そんなのっ、言われなくても分かっている!」


にゃっ!


 そんなのっ、言われなくても分かってるよっ!


 同時に叫ぶフィーと俺。

 このままだと、やられてしまうのは見れば分かる。

 そうしている間にも、再びもう一人のフィーが動く。


「うわっとぉっ!?」


 それでも、横へと跳んで避けるフィー。

 そうしながらも、先程分かれた俺と合流する。

 そうして、こちらへと振り向くもう一人のフィーを見る。


「やるしかないようだな。」


にゃ。


 みたいだね。


 向こうは、止まる気は無さそうだ。

 こうなったら、やり返さなければ斬られてしまうだろう。

 ならばと、もう一人のフィーへと対峙する俺達だった。


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