表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫です。~猫になった男とぽんこつの元お嬢様の放浪旅~  作者: 鍋敷
幻影染める月と二つの戦の国<後編> リラリアハル王国編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

393/405

帝の実力です

 突然現れた魔族の名前は氷帝。

 つまり、氷の帝という事になる。

 その名前に、フィーが反応する。


「帝だと? 雷の帝の仲間か?」

「雷のを知っているか。しかし、残念だが仲間ではない。我らは、お互いを利用するだけの関係に過ぎん。」

「利用するだけだと?」


 かつては共に戦った相手の筈だ。

 しかし、実態は都合の良い相手でしかないようだ。

 とはいえ、知らない相手という訳では無さそうだ。


「仲間ではないか。しかし、目的は同じなのだろう?」

「そうなるな。だからこそ、共に戦ったのだからな。では、改めてお前達の土地を奪わせてもらおうか。」

「断ると言ったら?」

「無理矢理奪う。そもそも、お前達の許可など取る気などないがな。」


 帝とはいえ所詮は魔族なのだ。

 人間の事など気にしない。

 ただ欲しいと思ったら奪うだけ。

 ならばと、フィーが剣を構える。


「やはり、魔族か。話し合うだけ無駄のようだな。」

「話し合う? 傲慢だな。何の権利があって我と言葉を交わすと言うのか。」

「傲慢か。その言葉、そっくりそのまま変えさせてもらおうかっ!」


 そう言いながら、前へと踏み出すフィー。

 そのまま、氷帝へと目掛けて距離を詰める。

 それを見た氷帝は、表情を変えずに手を前に向けると…。


「我と戦うか。良いだろう。氷よ。」


 前へと向けた手から氷を放つ。

 その氷は、波のようにフィーへと襲う。

 先程、兄弟の魔族を消し飛ばした魔法だ。

 それに対して、フィーが踏み込むと…。


「それなら既に見ているっ!」


 勢いよく振るった剣で、迫る氷を叩き斬る。

 一度目なら受けていただろう。

 しかし、二度目はない。

 それでも、氷帝は表情を変えずにフィーを見る。


「そこそこやるようだな。だが…。」


 そう呟きながら、再び氷を放つ氷帝。

 すると、先程のように氷がフィーを襲う。

 ならばと、フィーもまた同じように氷を叩き斬るのだが。


「なんど放とうともっ…。」


 そうフィーが言いかけた時だった。

 氷の波から現れた氷柱が、フィーの首へと向かう。


「っ!?」


 咄嗟に気づいたフィーが拳で氷柱を逸らす。

 それにより、氷柱があらぬ方向へと飛んでいく。

 そんなフィーを見た氷帝が呟く。


「よく避けた。では、これならどうだ?」

「っ!?」


 気づけば、何十もの氷柱が宙に浮いていた。

 それらの氷柱が、フィーへと一斉に向くと…。


「貫け。」

「っ!?」


 全ての氷柱が、フィーへと一斉に向かう。

 それに対して、フィーが前へと飛び込むと…。


「くっ。」


 前へと一回転して氷柱を避ける。

 しかし、そんなフィーへと氷帝が手を向けると…。


「隙だらけだな。」

「っ!?」


 体勢を直したばかりのフィーへと氷の波を放つ。

 しかし、フィーには剣を振り直す余裕はない。

 それを見たリーグルが叫ぶ。


「フィー! 危ねぇ!」

「くうっ。」


 フィーへと氷波が迫ってくる。

 しかし、避ける手段はない。

 ならばと、フィーもまた手を前へと構えると…。


「氷よ!」


 フィーもまた、手から氷を放つ。

 そうして、迫る氷を自身の氷で受ける。

 その間に、フィーが後ろへと下がる。


「くっ、はあっ。」

「無事か? フィー。」

「なんとかな。」


 命拾いをしたフィーが冷や汗を流す。

 しかし、汗は凍りついて砕け散る。

 フィーとしても、一か八かの行動だったのだろう。

 そんなフィーを見て、氷帝が目を細める。


「そんな矮小な氷で、我の氷を受けただと?」


 フィーというより、フィーが放った氷を見据える。

 どうやら、結果に納得がいっていないようだ。

 そんな氷帝の顔を、横に立つ魔族が覗き込む。


「どうした?」

「いや。まさか、あの程度の氷で我の氷が砕けるとは思えなくてな。」

「そうだな。確かに、威力はこちらが勝っていたが。」


 威力の差を考えると、決して押し負けるものではない。

 それでも、結果は想像をひっくり返すものだった。


「ただの氷の魔法にしては性質が違いすぎる。そうなると、ただの氷の魔法ではないだろうか。どちらかといえば、原初のものに近い気がするが…。」


 そう呟きながらも、何かを考え出す氷帝。

 フィーの氷の魔法は、氷を司る帝にすら分からぬもののようだ。

 その正体を考えるも、しばらくする内に首を横に振る。

 そんな氷帝は、改めてフィーを見る。


「分からぬな。娘、その氷の力をどこで得た。」

「さてな。答える必要などないだろう。」

「そうか。では、生きたまま捕らえて調べるとしようか。これで、今回の失敗の代わりとするとしよう。」


 そう言いながら、何度目かの氷の魔法を放つ。

 しかし、今度のフィーは剣を振る余裕がある。

 ならばと、フィーが迫る氷を叩き斬る。


「悪いが、捕まる気など微塵もない!」

「ふん。くどいな。許可など求めておらぬよ。」


 先程の言葉は、フィーへと向けた言葉ではない。

 すると、今度はフィーへと複数の氷柱を放つ。

 それに対して、フィーが前へと踏み出す。


「全て、同じ方向から来るのならっ。」


 どうにか対処は出来るだろう。

 ならばと、迫る氷柱を叩き斬る。

 更に迫る氷柱もまた、横へと回りながらも叩き斬る。

 そこへと迫る氷柱もまた、横へと回りながらも叩き斬る。

 そのように、次から次へと迫る氷柱を叩き斬っていく。

 そうしながらも、手を前に突き出すと…。


「風よ!」


 突き出した手から放った風で、氷柱をまとめて逸らす。

 そうして生まれた道を、フィーが確認すると…。


「今度こそっ!」


 生まれた道へと、フィーが踏み出す。

 狙いは、その道の先にいる氷帝だ。

 そんな氷帝へと、一気に距離を詰める。

 それを見た仲間達もまた叫ぶ。


「行け! フィー!」

「そんな奴ら、やっつけちゃえ!」


 二度目の正直だ。

 仲間の声援を受けながらも氷帝へと迫る。


「うおおおおおおおおおおっ!」


 そう叫びながら、魔族へと剣を振るうフィー。

 しかし、そんなフィーへと氷帝が笑う。


「ふっ。かかったな。」

「っ!?」

「氷よ。」


 そう魔族が呟いた時だった。

 爆発のような吹雪がフィーを襲う。

 それを受けたフィーは、後方へと吹き飛んでしまう。


「ぐうっ!?」


 吹雪の勢いに、フィーが地面へと落ちる。

 それと同時に、フィーが地面を転がる。

 それを見た仲間達が叫ぶ。


「おい! フィー!」

「ちょっと! 無事なの!?」

「あぁ。なんとかなっ。」


 なんとか体を起こすフィー。

 幸いにも、ダメージはない。

 ならばと、再び剣を構える。


「くそっ。もう一度だ…。」

「否。もう一度はない。」


 そうフィーを遮るように氷帝が呟く。

 次の瞬間、フィーの周りに無数の氷の欠片が浮かぶ。


「思ったよりやるものだ。見える攻撃は通じない。なら、空間そのものに魔法をかければ良いだけだっ。」

「なっ。まさかっ。」

「気づいたか? しかし、もう遅い。」


 そう氷帝が呟いた時だった。

 フィーの周りの欠片が渦巻くように回りだす。

 それを見た氷帝が、突き出した手を握る。


「凍れ。絶対零度っ。」


 そう氷帝が呟くと同時に、フィーの周りを回る欠片が一斉に止まる。

 まるで時が止まったように空間を静寂が包む。

 次の瞬間、一瞬にして欠片がフィーへと集まる。

 直後、爆発したかのように氷の波動が広がる。

 それと同時に、空間そのものが凍結する。

 その中心にいるフィーごと凍結する。

 それを見た仲間達が叫ぶ。


「「「フィーーーーーっ!」」」


 フィーは氷に包まれて動けない。

 まるで、氷像のように固まったままだ。

 それを見た氷帝が動く。


「ようやくか。微塵も本気を出していないとはいえ、手間をかけさせてくれた。そのお礼に丁重に扱おう。」


 そう言いながら、凍ったフィーへと歩き出す氷帝。

 その間も、フィーは全く動かない。

 そこへと、ゆっくり歩く氷帝だったが。


「さ、させるかっ!」


 その声と共に、どこからか瓦礫が飛んでくる。

 その瓦礫は、氷帝の頭へと直撃する。

 それを受けた氷帝が、瓦礫が飛んできた方を見ると…。


「それ以上、フィーに近づくなよっ!」


 そこでは、リーグルが振りかぶった姿で氷帝を見ていた。

 先程の瓦礫は、リーグルが投げたもののようだ。

 そんなリーグルに習って、他の仲間達もまた投げ始める。


「フィーに近づくなら、私達を倒してからにしてよね!」

「ふん。この程度で我を止められるとでも?」

「思ってないわ! でも、時間を稼いだらフィーが復活するわ!」

「そしたら、お前なんかすぐに倒してくれるからねっ!」

「その間、全力で止めさせてもらおうっ!」


 次から次へと瓦礫を拾っては投げつける。

 仲間のフィーを助ける為に。

 フィーを信じて待つ為に。

 しかし、そんな仲間達をイルラートが止める。


「駄目です! 私達では勝てる相手ではありません!」


 今までの戦いを見れば、力の差など明らかだろう。

 それでも、マークもまた石を拾い上げる。


「そんなの承知の上ですよっ!」

「分かった上でやってんだ! ただ、フィーが連れ去られるところなんて黙って見てられるかよっ!」


 氷帝が動けば、リーグル達など一瞬だろう。

 だからといって、仲間が拐われようとしているのだ。

 ならば、動かざるを得ないのは当然だ。

 しかし、そんなリーグル達を氷帝が一瞥すると…。


「相手をするのも面倒だ。やってくれ。」

「分かった。殺してしまっても良いのだろう?」

「構わん。」


 氷帝の指示で、遂にもう一人の魔族が動く。

 そんな魔族は、剣を抜くなりリーグル達へと向かう。

 そうして、瞬間移動したかのように現れた魔族が剣を振るう。


「死ね。」

「っ!?」


 あまりの速さに、リーグル達の目では追いつけない。

 当然ながら、魔族が振るう剣など見えはしない。

 そんな剣が、リーグル達を襲おうとした時だった。


「させねぇ!」


 キィィィィィィィン!


 突然現れた影が、魔族の剣を受ける。

 そんな影を見たリーグルが叫ぶ。


「ディル!」


 その正体は、ディルだ。

 そんなディルは、魔族の剣を受けながらもリーグルを見る。


「どうやら、間に合ったようだな。」

「お前っ、どうしてっ。」

「そんなの、謝罪の為に決まってんだろっ!」


 そう叫びながら、剣を振って魔族を退けるディル。

 そうしながらも、魔族へと聖剣を構え直す。


「すまねぇな。命令とはいえ、あんたらに剣を振るっちまった。謝って許して貰えるとは思えないが。」

「いや、良いんだ。こうして来てくれたからな。」

「そうよ。私達の事、仲間だって思ってくれたからなのよね?」

「だったら、認めるしかないよねー。」

「おうよ! だから一緒に戦おうぜ。」

「それで、今度こそ一緒に演劇しよう!」


 ディルへと語りかけるように声をかける仲間達。

 皆がディルを温かく迎え入れる。

 ディルもまた仲間なのだから。

 それを見たディルもまた仲間達を見返す。


「おまえらっ……そうだな。とっとと終わらせようぜ! 一緒にな!」


 そう叫びながら、魔族を睨むディル。

 今度は、仲間の為に剣を握る。

 そんなディル達を、魔族が見返すのだが。


「終わりか? なら、もう動いても良いよな?」

「心配すんな! 既に動いてるぜ!」


 次の瞬間だった。

 魔族へと、うねるような斬撃が飛んでいく。

 しかし、それを魔族が斬り落とす。


「下らぬ小細工だ。」

「そんな事、知ってらぁ!」


 斬撃に混ざって剣を振るうディル。

 そうして、魔族へと剣が迫る。

 それでもと、魔族が剣を受ける。


「やはり小細工か。この武将。その程度で落とせると思わぬ事だ。」

「はん。残念だけど試しただけだぜ!」

「試す?」

「おうよ。どうやら、その剣は正しい位置にあるようだな。」

「ん? 訳の分からぬ事をっ。」


 そう言いながらも、今度は魔族がディルを払う。

 そして、すぐさまディルへと剣を振るう。

 それに対して、ディルもまた受けながらも剣を振るう。

 そうして、お互いに剣を振るい合う。

 実力は、互角のように見えるのだが。


「ぐっ。」


 打ち合いの中、時々ディルがよろめく。

 先程の戦いのダメージが残っているのだろう。

 その隙を見逃す相手ではない。


「どうやら手負いのようだな。ならっ…。」


 ディルがふらついた隙を狙って剣を振る魔族。

 それでもと、ディルが剣を受ける。

 のだったが、体勢を崩してしまう。


「ちぃっ。万全の状態なら良かったんだけどな。」

「そうだな。お前も便利に動いてくれたのだからな。お前にも、お礼として丁重に屠ってあげるとしようか。」

「はっ。お礼でも何でもねぇじゃねぇかっ!」


 そう叫びながらも、再び剣を打ち合う。

 それを見た氷帝は、改めて氷漬けのフィーを見る。


「向こうは任せて良さそうだな。では、今のうちに連れて帰ると…。」

「待ちなっ!」


 フィーを見る氷帝の前に仲間達が飛び込む。

 ここから先は通さぬとばかりに立ち塞がる。


「言っただろ? 俺達を倒してからにしろってな。」

「退け。」

「退かねぇ!」

「そうか。では、遠慮なく消し飛ばしてやろう。」


 そう言いながら、リーグル達へと手を向ける氷帝。

 こちらを凍らせて消し飛ばすつもりのようだ。

 それでも、仲間達は逃げる事なく氷帝へと駆け出す。


「やれるもんならっ……やってみろーーーーーっ!」


 氷帝へと飛びかかる仲間達。

 その前に、氷帝が氷の魔法を放つ。

 その直前だった。


「オ、オオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

「「「っ!?」」」


 どこからか、悲鳴のような雄叫びがあがった。

 その雄叫びの中、氷漬けのフィーの目が光るのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ