月を落とします
雨のような魔法の爆撃が船を襲う。
そんな爆撃の中で、攻撃に耐えながらもホルバーが動く。
「それは無理な話だな。この船には、我の闘気がしっかりと張り巡らされているっ。」
そう言いながら、ホルバーが地面を叩く。
その衝撃で、甲板に散らばる複数の砲弾が宙に浮く。
その砲弾へと手に持つ棍棒を構えると…。
「そう易々と落ちると思うなかれ!」
砲弾へと棍棒を振るうホルバー。
それにより、直撃した砲弾が魔族へと向かう。
のだが、簡単に避けられてしまう。
「ふん。ならばっ。」
「アンタヲ、チョクセツネラエバイイダケダ!」
今度は、ホルバーへと直接攻撃を放つ魔族達。
しかし、ホルバーが簡単に攻撃を棍棒で振り落とす。
「舐められたものだ。」
「ハン! コウゲキモ、ロクニアテラレモシナイクセニナ!」
「えぇえぇ。舐めるもなにもありませんよ。」
魔族の攻撃は防がれる。
しかし、ホルバーの攻撃は当たらない。
それでも、ホルバーがニヤリと笑う。
「ほう。攻撃が当たらないか。それはどうかな?」
「ハ? ナニヲイッテ…。」
そう言いかけた時だった。
チュドーーーーーーーン!
魔族の後ろから飛んできた砲弾が魔族へと直撃。
それを受けた魔族は、甲板へと落ちる。
突然の事で後ろを振り向くと、翼が生えた複数の弾丸が宙を飛び交っていた。
そして、いずれの砲弾も口のようなものがニヤリと歪む。
これには、魔族も驚いて叫ぶ。
「な、何が起きたっ!」
「何がも何も、先程放った砲弾だよ。我が装身の力は、魂無きものに、人工知能を与え生き物に変える力。そうして、生き物に変えた先程の砲弾に君達を襲わせたのだよ。」
「ナ、ナンダッ。ソノフザケタチカラハッ!」
ホルバーに知能を与えられたものは、自在に宙を移動が出来る。
そうして、砲弾自身に魔族を狙わせたのだ。
それでも、ホルバーの攻撃は止まらない。
「おっと、驚くのは早いぞ? 弾なら幾らでもあるのだからなぁ!」
そう言いながら、駆けたホルバーが棍棒を振るう。
その度に、砲弾から翼が生えて魔族を襲う。
「さぁさぁさぁ! 一体どうしのぐ!」
「ぐうっ。」
「メンドウナッ。」
次から次へと砲弾から翼を生やさせ魔族を襲わせるホルバー。
そうして、魔族へと何度も何度もぶつかっていく。
しかし、魔族が砲弾へと与えた傷が治っていく。
「えぇえぇ。しかし、残念でしたねぇ。我らには、あの樹があります。」
「ソ、ソウダ、コノキガアルカギリ、キズナド、イミガナインダヨネェ!」
翼の魔族が掴んでいる大樹がある限り、魔族達は不死身なのだ。
これでは、幾ら不意をついて攻撃しても意味がないのだ。
「さぁ、とっとと降参して引き返すなら今の内ですよぉ!」
「ソノトオリ! イマナラ、カンベンシテヤロウ!」
そう言いながら、飛び上がった魔族達が魔力を周囲へと放つ。
そうして、迫る砲弾をまとめて吹き飛ばす。
その光景を、ホルバーが顔色一つ変えずに見つめる。
「ふっ。勘弁して欲しいの間違いでは?」
「ぐっ。」「グウッ。」
「しかし、このままでは埒が明かないか。どれ、ここらで本気を見せようではないか。」
こちらの攻撃は効いていない。
このままだと、何も変わらない現状が続くだろう。
ならばと、ホルバーが棍棒を地面へと叩く。
「さぁ、集結せよ! 我が半身どもよ!」
ホルバーの指示で、翼の生えた砲弾達が集まっていく。
そして、翼の下に足を生やして戦艦の至る所に止まっていく。
それを見た魔族が身構える。
「何をする気なんです?」
「なに、時期に分かる。」
わざわざ答えるまでもない。
なにせ、すぐに分かるのだから。
そうして、ホルバーがニヤリと笑うと…。
「魔装、ティアリィ・テイスグローリー。」
その直後だった。
砲弾に着いている口が開き、中から砲身のような物が生えてくる。
更には、砲弾だとは思えない程にいかつく変形する。
「これが、我が本気の力。とくと見よ!」
「トクトミヨダト? ヘンナツツガ、ハエタダケデハ…。」
「撃て。」
魔族の言葉を遮るように呟くホルバー。
すると、砲弾だった物から生えた筒の一つから赤い線が伸びる。
直後、赤い線に沿うように光線が飛び出す。
その光線が、海を貫きながらも水面を駆けると…。
ズドドドドーーーーーーン!
激しい音と共に、光線が駆けた箇所の海が激しく舞い上がる。
それと共に、激しい閃光と爆風が戦艦を襲う。
「ふはははっ! 光線一本でこの威力! 果たして、汝らに耐えられるかな?」
「えぇえぇ。言ってくれますねぇ! しかし!」
「ドンナニイリョクガアロウトモッ!」
その時だった。
魔族達のおでこに赤い点が浮かび上がる。
「キガブジナカギリ!」
今度は、体に五つの赤い点が浮かぶ。
「マケルコトナドッ!」
更に、赤い点が増えていく。
「アリハ…。」
それでも、赤い点が増えていく。
止まる事なく増えていく。
その足が掴む大樹にさえも浮かんでいく。
そうして、点かどうかも分からぬ程に増えていく。
次第に、赤い点によって魔族が真っ赤に染まる。
これには、流石の魔族も言葉を詰まらせると…。
「っ!? これは不味いですねぇ!」
「グウッ。オウヨ! イマスグオニゲニ!」
「もう遅い。」
そうホルバーが呟いた直後だった。
魔族の視界の中に、百数もの光が煌めく。
その光が重なり合い、視界が真っ白に埋め尽くされると。
「オーーーーーーーーーウ!」
煌めいた光から伸びた、百数もの光線が魔族へと直撃する。
それにより、貫かれた箇所が焼失していく。
それから、段々と削れる面積が増えていくと…
ズドーーーーーーーーーーーーン!
魔族を中心に、激しい爆発が起こる。
そんな爆発の奥で、光線が強大な水の壁を作り上げる。
そうして、再び波動のような衝撃と水しぶきが戦艦を襲う。
その衝撃にホルバーが耐えながらも海上を見渡す。
「ふぅ。どうやら、消滅したようだな。」
先程の光線で、魔族も大樹も消し飛んだ。
跡形すら残っていないだろう。
と、思われていたのだが。
「えぇえぇ。まさか、これ程の力を持っていたとは。彼が庇ってくれなければ、私も消し飛んでいたでしょう。体の一部は持っていかれましたがねぇ。」
先程の光線が当たる直前、魔族を翼の魔族が庇ったのだ。
そのお陰で光線がわずかに逸れて、体の横半分の消滅で済んだのだ。
それでも、間一髪のところで事なきを得たのだが。
「とはいえ、次はないでしょう。今のうちに、弟に合流しなくては。」
このまま一人で戦い続けるのは得策ではない。
ならばと、煙に紛れてこの場から逃げるのだが。
「おっと、どうやらまだたったみたいだな。すまないが、後は頼んだぞ。」
そう言いながら、ホルバーが戦艦本来の砲身を見上げる。
すると、その上で天空人の女性が一丈程のライフルのスコープを覗き込む。
「えぇ。任せて下さい。」
ずっと潜んでいたのだろう。
そんな天空人の女性が、スコープ越しに魔族の背中を捉えると…。
「ここっ。」
そのまま、ライフルの引き金を引く。
すると、ライフルの先から光の弾が射出される。
そうして放たれた光の弾は、一瞬の内に宙を駆けると…。
「っ!?」
気づいた魔族が振り向く。
しかし、気づいた頃には既に遅く。
ズドーーーーーーン!
「かはっ。」
光の弾が直撃すると共に、激しい爆発を起こす。
これには、魔族も耐える事が出来ず海へと落下する。
それを見届けたホルバーが天空人の女性へと親指を立てる。
「うむ、直撃だ。ナイスだぞ。」
「えぇ。身を潜めておいて良かったです。後は…。」
「あの月を落とすだけだな。」
そう言いながら、空に浮かぶ月を見上げる二人。
黒幕の二体の王は、どちらも落ちた。
後は、残された月を落とせば終わりなのだが。
「それで、どうやって落とすんですか?」
「決まっている。我が戦艦と共に近づき撃ち落とす。」
「出来るんですか?」
「やるしかないだろう。さぁ、相棒よ! 戦艦へと乗り移るのだ!」
そう言いながら、棍棒で甲板の床を叩くホルバー。
すると、船の前が大きく左右に割れて口が生まれる。
「では行くぞ! 相棒よ! 陸へ向かって全速力へと近づけ!」
ブモーーーーーーーーーーーーーッ!
轟くような雄叫びが辺りに響く。
すると、戦艦が陸へと向かって突き進む。
「よし、では始めようか! 我が半身どもよ! 戦艦へと装着するのだ!」
ホルバーの指示で、砲弾だった兵器が戦艦へと固定されていくと…。
「さぁ、これが我が真の力っ! 真魔装! シィ・アー・スゥ・ルグル・テイ・ストゥ・フェル・ワードゥ・タオラ・エルアイム・ゴーア!」
そう叫んだ直後、百数の光線が同時に飛び出る。
更に、戦艦の口から離れた波動が遥か先までの水を吹き飛ばす。
そうしながらも、降り注ぐ水に押された反動で宙へと跳ねる。
そうして跳ねた戦艦は、そのまま陸地へと落ちると…。
「上陸完了! 我が戦艦は地上さえも問題なし! そのまま突き進むのだ!」
陸に落ちようがお構い無しだ。
生き物のようにうねりながら、戦艦が陸地の上を突き進む。
その際に森へと突っ込むが、戦艦の大きな口に樹が飲まれていく。
その度に、樹の性質を持った砲身へと代わり戦艦から生えていく。
「さぁ! 増やせや生めや! あればあるだけ良いのだからな!」
どうやら、取り込んだものすらも兵器に変えて取り込めるようだ。
そのまま、樹や岩を取り込み兵器に変えながらも進んでいく。
そうして、しばらく突き進んだ時だった。
砲身の上の天空人の女性が叫ぶ。
「月接近! もうすぐよ!」
「うむ! では、そろそろ行くぞ!」
そう言いながら、手を前に突き出すホルバー。
すると、戦艦にある全ての砲身が前方の地面へと向く。
次の瞬間だった。
「撃て!」
全ての砲身から光線が放たれる。
その光線によって、前方に巨大な力が渦巻く。
そんな巨大な力の上を戦艦が通過した時だった。
ズガーーーーーーーーーーン!
渦巻く力が、激しい爆発を起こす。
その威力により、下から押された戦艦が宙へと跳ね上がる。
そんな戦艦の前に、何万倍にも及ぶ巨大な月が映ると…。
「ターゲット確認! 全ての砲身を月へ! 更に、主砲の準備を!」
ホルバーの指示で、全ての砲身が月へと向かう。
更に、戦艦の口からも巨大な砲身が現れる。
「準備完了! 狙いは前方の月! いざ一斉に砲撃せよ! ファイアーーーー!」
そう叫んだ直後だった。
月を目掛けて、数百から千をも越える砲身から一斉に光線が放たれる。
その上、口の砲身から轟音と共に放たれた光線が月へと向かう。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
雄叫びと共に、光線が月へと直撃していく。
その度に、月の表面が削れていくと。
「今だ!」
「えぇ!」
天空人の女性もまた月へとライフルを向ける。
狙うは、月の中心部。
そこへ向けて、ライフルの引き金を引く。
すると、ライフルから飛び出た光弾が月へと直撃。
そのまま、貫くように月の中を突き進むのだが。
「き、消えたっ。」
月の途中で霧散してしまったのだった。
「やっぱり、無理なの?」
「ぐう。ダメージは間違いなくある筈なのだが。」
今までの攻撃で、月の一部が大きく抉れ中央までひびが入ったのだ。
なので、無意味な攻撃とは言えないのだ。
しかし、壊すには後一歩が足りないのだ。
「せめて、後一人。彼がいてくれたら良かったのだけど。」
そう言いかけた時だった。
いきなり、衝撃で戦艦が揺れるのだった。
それと同時に、甲板に一つの影が現れる。
「呼びましたか?」
「アマガセ殿!」「アマガセさん!」
「ども。」
いきなり現れた影の正体はアマガセだ。
そんなアマガセは、こちらを見るなりお辞儀する。
「遅れてすみません。ですが、丁度良いタイミングでしたようですね。」
「うむ。最後の一撃、頼めるかな?」
「えぇ。ここまでして貰っておいて落とせませんじゃ、お頭さんに合わせる顔がありませんから。」
そう言いながら、月を見据えて剣を構えるアマガセ。
そうして、月へと目掛けて甲板を蹴る。
すると、一気に月へと飛び込むと…。
「さあて。これで決めてしまいましょう!」
月へと剣を振るうアマガセ。
そのまま、アマガセの剣が月へと叩き込まれる。
すると、その箇所から衝撃が月を駆け抜ける。
そうして、駆けた衝撃は光弾が作ったひびを押し広げていく。
それもあって、月が大きく砕けるのだった。
「よし。」
あれだけの月が、今の一撃で複数の瓦礫へと砕けてしまった。
そうなると、当然ながらそんな月の瓦礫が下へと落ちるのだが。
「む? いかん! 一斉砲撃!」
戦艦の砲撃が、月の瓦礫を消していく。
それにより、月の残骸が粉微塵と消えていく。
これで、下の影響はないだろう。
そんな砂粒に混じって、アマガセが戦艦へと着地する。
「よっと。ただいま戻りました。」
「うむ、お見事なり。お陰で月を破壊する事が出来たよ。」
「えぇ。これで、一件落着ですね。」
そう笑いながら、剣を鞘に収めるアマガセだった。
ホルバー
装身
心無きものに人口知能を与えて疑似の生き物へと変える
魔装 ティアリィ・テイスグローリー
装身で作り上げた疑似の生き物をレーザーを放つ兵器へと変える
真魔装 シィ・アー・スゥ・ルグル・テイ・ストゥ・フェル・ワードゥ・タオラ・エルアイム・ゴーア
戦艦そのものを兵器へと変え、既に兵器と化したものを装着させた姿
その上、戦艦の口で食べたものを兵器に変えて戦艦に生やしていく事も出来る
この姿だと、陸海空を問わず何処でも突き進む事が出来る




