リリアを助けます
王が倒れたのを確認したフィーがリリアを見る。
そこでは、変わらずリリアが苦しんでいる。
「そっちはどうだ!」
「どうもこうもねぇよっ! 全然、リリアに流れる瘴気が治まんねぇ!」
「そうか! では、私も加勢しよう!」
「頼んだぜ!」
一応、これでも治まっている方なのだ。
ならば、フィーが加勢すればだいぶ楽にはなるだろう。
そうして、フィーもロープを掴むべく向かうのだが。
「させません。それだけは、させません。」
王の体が立ち上がる。
しかし、操られているように体だけが起き上がる。
そんな王に、シャルが気づく。
「フィーさん! 後ろ!」
「っ!?」
シャルの声に、後ろを振り向くフィー。
そこでは、体だけが動く王の体がこちらへと向かっていた。
「それだけは、させませんよぉ!」
迫る王の体が、力なく鎌を振り上げる。
そして、そのままフィーへと振り下ろす。
「何がなんでも、止めてみせましょう!」
「くっ。しつこいっ!」
迫る鎌は、大した事ではない。
軽く逸らしたフィーが、王の体を蹴り飛ばす。
それでも、王の体は起き上がる。
「まだです。意地でもすがりついてやりましょう。」
「よせ! 私はもう負けたのだ。約束通り、これ以上、計画を進めるつもりはない。」
「知った事ではありません! 計画は続けさせていただきます!」
俺達との約束は、王が勝手にした事だ。
魔族からすれば、たまったものではないだろう。
そんな魔族が、王が持つ鎌を天へと翳す。
「月よ! 我に力を!」
そう魔族が叫んだ時だった。
リリアの体から、再び大量の瘴気が溢れる。
「アアアアアアアアアアアアッ!」
「なっ。あいつっ。ぐぅぅぅっ。」
溢れた瘴気が、リーグル達を襲う。
それだけでなく、魔族の鎌へと注がれていく。
「良いですよ! これだけの力があればっ!」
鎌を通じて、魔族にも力が流れ込んでくる。
その直後、魔族が瘴気に包まれる。
そんな瘴気の中で、王の姿が変わっていく。
そうして、異質な姿へと変貌する。
「コレデス! コノチカラコソガ、ワレノノゾンテイタチカラデス! カラダノソコカラ、チカラガミナギッテクルゥゥゥゥゥゥゥ!」
そう叫びながら、両手を思い切り広げる魔族。
もはや、体の主導権は魔族にあるようだ。
そんな魔族は、フィーを睨む。
「サァ! ツヅキトイキマショウカ!」
そう言いながら、鎌を構える魔族。
それに対して、フィーが剣を構える。
「やるしかないかっ。」
こうなると、無視をする訳にはいかない。
止める為にも、魔族と向き合う。
そんなフィーへと、魔族が鎌を振るう。
「イキマスヨォ!」
まずは、フィーへと鎌が迫る。
それを見たフィーが剣で逸らす。
「遅いが強い。しかし、これぐらいならっ。」
「デハ、ホンキデイキマショウカ!」
そう言いながら、魔族が鎌を振るっていく。
それでもと、フィーが逸らしていく。
「どうしたっ。何も変わってないぞ!」
「ソレハドウデショウカネッ!」
そう言いながら、魔族が鎌を振りながら回転する。
そこから更に、回転する。
そうしながらも、フィーへと襲う。
「オララララララァッ!」
「ぐぅっ。」
何度も来る鎌を受け続ける。
そんなフィーへと、回転の勢いを乗せた大きな一振を振るう。
「オラァ!」
「っ!?」
咄嗟に、迫る鎌を逸らすフィー。
そうしながらも、魔族から距離を取る。
「引いてばかりではいられんな。」
受けてばかりではいられない。
ならばと、フィーが前に出る。
「一気に決める!」
「サセルカァ!」
フィーへと鎌を振るう魔族。
それに対して、フィーが剣を弾く。
そうしながらも、前へと踏み込むと。
「ここだっ!」
相手の胴体へと剣を叩き込む。
その一撃を受けた魔族が転がる。
「ヤハリ、タダデハイキマセンカ。シカシ、コノテイドノキズナラ…。」
そう言いかけた時だった。
先程の傷が治らない事に気づく。
「ナゼダッ! ナゼキズガッ!」
普通なら直せない傷だ。
ただし、それが普通ならばだ。
その様子をみたリーグルが気づく。
「そうかっ。フィーの剣かっ。フィーの剣は、月の力によるものを無効化出来るっ。」
「だったな。先程、月の力によって姿を変えていた。だから、こちらの攻撃が……。」
そう言いかけたところでフィーが固まる。
その様子に、リーグルが不信に思う。
「おいっ! どうしたフィーっ!」
「いや、月の力を切れるという事はだ。」
そう言いながら、リリアを見るフィー。
リリアを纏っているのは、月と一つになった魔族だ。
つまり、リリアが纏う力は月由来のものだ。
その事に、話を聞いたシャルが気づく。
「そうだっ。フィーなら、リリアを解放してあげる事が出来るんじゃ。」
「あぁ、やってみる価値はありそうだな。」
「そうだなっ。そんじゃ頼んだぜっ。」
「なるべく早くお願いねっ。そろそろ限界だからっ。」
仲間達は限界に来ている。
これ以上、瘴気を受けるのは耐えられないだろう。
ならばと、フィーが剣を構えるのだが。
「ダカラ、サセナイトォ!」
そんなフィーへと魔族が迫る。
そうしながらも鎌を振るう。
「イッテイルデショウ!」
みすみす攻撃を許す魔族ではない。
フィーを止める為にも、必死で攻撃を仕掛けるのだが。
「そうだな。まずは王からだっ!」
助けないといけないものはここにもいる。
ならばと、フィーが剣で鎌を逸らすと。
「先っぽだけなら問題ないよなっ!」
鎌を持つ魔族の腕を切り落とすフィー。
すると、魔族が激痛に雄叫びをあげる。
「ウオオオオオオオオオオッ!」
元より腕が伸びている。
ならば、先を斬っても王の手には届かぬだろう。
そうして、相手の隙を作り出すと…。
「ここっ!」
魔族の胴体の表面だけを斬り飛ばす。
すると、隙間から王の姿が見える。
「見つけたっ!」
王の体の場所が分かれば充分だ。
ならばと、王へと一気に踏み出す。
「はあっ!」
王の体を避けるように、フィーが魔族の体を叩き切る。
それにより、魔族が王から離れて吹き飛ぶ。
「ぐうっ。」
やはり、フィーの剣では月の力を斬れるようだ。
そうと分かればと、フィーが宙にいるリリアを見る。
「今度はリリアの番だ!」
この剣なら、リリアも解放してあげる事が出来る。
ならばと、再びリリアへと剣を構えると…。
「お願いフィーっ! 私達の分まで!」
「決めちまいなぁっ!」
「っ! 了解だっ!」
そう答えながら、リリアに向けて踏み出すフィー。
そのまま、宙のリリアへと迫ると…。
「「「「「「行けーーーーーーーーーっ!」」」」」」
「おおおおおおおおおおおおおおっ!」
そう叫びながら、リリアへと剣を叩き込む。
すると、その一撃でリリアを纏うものが消え去っていく。
そんな力を失ったリリアが下へと落ちる。
「ちょっ!? 落ちてくるぞ!」
「皆、受け止めるよ!」
落ちてくるリリアへと仲間達が飛び込むと…。
「「「間に合っ……たーーーーーーっ!」」」
仲間達がリリアを受け止めるのだった。
そうして、受け止めたリリアを覗き込む。
「おい! 無事か!」
「生きてるよね? リリア。リリアっ!」
リリアの無事を確かめるべく呼び掛けるシャル。
すると、呼ばれたリリアがうっすらと目を開ける。
「……うん………大丈夫……だよ。」
「っはぁ、良かったぁ!」
無事を確認した仲間達は安堵する。
そんな仲間達へとリリアが呼びかける。
「ねぇ…皆……。」
「どうした? 何でも言ってみ?」
「うん……その……ありがとう。」
そう仲間達へと微笑むリリア。
すると、そんなリリアへと仲間達も微笑み返す。
「どういたしまして。」
お互いに微笑み合う。
近くに降りたフィーも、その様子を見て微笑む。
それ以外の言葉は必要ない。
そんな俺達を祝福するかのように、国中の瘴気が消えていく。
穢れた大地が戻っていく。
その様子は、離れた場所にある水上にも届く。
そこでは、二体の魔族とホルバーが戦艦の甲板で戦い合っていた。
「随分と固い船ですねぇ!」
「トットトオチテシマエ!」
魔族達が、戦艦へと攻撃を放っていく。
それを受けた戦艦が激しく揺れるも沈む気配はない。
代わりに、甲板に置かれた箱が倒れて中の砲弾が散らばっていく。
その攻撃にホルバーが耐える。
そんな魔族達が攻撃を与え続けている時だった。
「とっとと落ちて…。」
そう魔族が言おうとした時だった。
穢れから解放されていく大地に魔族が気づく。
「っ!? まさかっ。」
広がる穢れの存在事態は察していた。
しかし、その穢れがなくなっていくと言う事はだ。
ホルバーもまた、その原因に気づく。
「どうやら、起こしてくれたみたいだな。待ち望んでいた、よほどの事態をな。」
リーグル達が原因を取り除いてくれた事に気づいたのだ。
これこそが、ホルバー達もまた望んでいた事だ。
「では、そろそろ我らも動こうか。かの者達の覚悟に応えるとしよう。」
そう言いながら、目の前の魔族達と向き合うホルバーだった。




